名フィル定期 第443回:ロシアの音楽

 名フィルの2月定期は先週末(2月24,25日)に行われ
ショスタコーヴィチ:交響詩『十月革命』
ハチャトゥリアン:フルート協奏曲(ヴァイオリン協奏曲の編曲)
プロコフィエフ:カンタータ『アレクサンドル・ネフスキー』
フルート独奏:上野星矢
メゾ・ソプラノ:福原寿美枝
指揮:川瀬賢太郎
でした。

 指揮者の川瀬はこれまでにも何度か紹介しましたが、1984年生まれ、新進気鋭と言っていい年齢ですが、音楽作りは丹念で若さを感じません。一方で指揮台の上で飛び上がってフル姿は若々しさを感じます。名フィルでは定期演奏会の他、各地での特別演奏会でも指揮をしています。今回は、名フィル事務局の方がツイッターで「今シーズンで最もカロリーが高い演奏会」とたとえたとおり、こってりとしたヘビー級のプログラミング。確かにずっしりときました。

 今回はいずれも20世紀ロシアまたはソ連の時代に活躍した作曲家で、それほど有名な曲はありません。それだけに、生で聴くのは最初で最後かもしれない曲ばかり。貴重な機会でした。

 『十月革命』とはつまり、ロシア革命のこと。1967年の50周年記念に作曲されたそうで、祝祭的な部分もありますが、作曲者はかなりニヒルな意味合いも込めて作曲したのだとか。今の日本人が演奏したり聴いたりするときに、あまり深い意味を詮索してもしょうがないかもしれません。むしろ、現実の社会を思い浮かべると、引用されているロシア民謡に哀愁を感じ、打楽器などの大音量にむなしさを感じます。管楽器が大いに活躍する曲ですが、全体がよくまとまっていて、安心して聴ける演奏でした。

 2曲目の協奏曲は、元来はヴァイオリン協奏曲ですが、20世紀を代表するフルーティストであるフランスのピエール・ランパルがフルート用に編曲した曲です。オケの部分は同じだそうで、ソロの音域を少し変えたり、カデンツァをいれたりしています。ソリストにとんでもない超絶技巧を要求する曲で、予めCDで聴いてみて、本当にできるのだろうかと不安にもなりました。叙情的に聴かせると言うよりは、ややアラっぽく感じるような音の動きや、激しい動きが随所にある曲です。上野は名フィルで川瀬と2度目の協演で、息もよく合い、落ち着いてしっかりと演奏していたように思います。フルートの音色は奏者によってかなり差があり、彼の音はややかすれたような音で、曲の雰囲気によく合っていたように思います。願わくば、もう少し大きな音が出ると、より迫力が増したかもしれません。

 ハチャトゥリアンという作曲家は初めて耳にした方も多いかもしれません。1903年生まれで1978年になくなっています。カスピ海の西、アルメニアの出身です。曲の中にはアルメニアの民謡なども多く引用されているとのこと。吹奏楽をやっていた方なら、アルフレッド・リードの『アルメニア・ダンス』をご存じでしょう。何となくにた雰囲気を感じる曲です。

 3曲目は、エイゼンシュタインというソ連が誇る名監督の同名映画のために作曲された曲をアレンジしたもの。映画は見たことがありませんが、13世紀の実在のロシアの豪族が他民族の侵略を打ち破ったという故事を描いていて、アレキサンドル・ネフスキーはロシアでは歴史上の英雄に数えられる人物だそうです。

 カンタータとは合唱や独唱を伴う管弦楽曲全般を指していいますが、この曲は混声合唱にメゾ・ソプラノの独唱が加わっています。全部で7曲からなる組曲形式で、侵略者に対する怒りや戦いに立ち上がる仲間を鼓舞する激しい部分は、金管楽器や打楽器をふんだんに使って非常に迫力があります。また、100名を超える大合唱もホールを揺るがすようなすばらしい声量で圧倒されました。そして、戦いにつきものの多くの死と悲しみを歌うメゾ・ソプラノの福原が秀逸。淡々と歌っているようでも、聴いているものの腹の底に響いていくるような声。悲しみが深いときと言うのは、決して大げさにはならないとのでしょうね。世界中で多くの方が同じような悲しみに暮れているのだと、改めて感じさせてくれる演奏でした。

 今年は世界史上の有名な2つの来事に関するメモリアルイヤーです。1つは1917年のロシア革命100周年、もう一つは1517年の宗教改革500周年。誰もが知る有名な出来事ですから、これらに纏わる音楽もたくさんあります。4月から始まる新シーズンでは、
ショスタコーヴィチの交響曲第12番『1917年』
メンデルスゾーンの交響曲第5番『宗教改革』
が取り上げられます。