METライブビューイング《椿姫》

 先週末から名駅・ミッドランドスクエアシネマでMETライブビューイング
ヴェルディ作曲の歌劇《椿姫(La Traviata)》
が上映されています。

 「もっとも有名なオペラ」といってもいいでしょう。今回は朝と夕方の2回上映。土曜日(9日)の朝は、特別にストーリー解説付きでの上映で、満席でした。

 オペラは音楽だけでなく文学性や衣装や舞台装置などの美術や演劇の要素を含んだ総合芸術です。したがって、演出によっては全く異なる作品のように感じます。メトロポリタン歌劇場はこれまでにも《椿姫》でいろんな演出を行ってきているようですが、今回から新たな演出で上演されています。

 台本上は19世紀半ばのパリが舞台ですが、今回は18世紀半ばに変更していて、それに合わせて衣装や室内の装飾を工夫しています。ロココ調というのでしょうか、豪華で見応えがありました。

 ストーリーはここで紹介していますので、ご覧ください。ここにもいろいろ書きましたので参考にしてください。優れた上演に出会えば、泣けること間違いなしです。

 ストーリはわかってもらったことにして、今回の主な出演者は
   ヴィオレッタ・ヴァレリー:ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)
   アルフレード・ジェルモン:ファン・ディアゴ・フローレス(テノール)
   ジョルジョ・ジェルモン:クイン・ケルシー(バリトン)
です。

 市販されているDVD/Bluerayなどは、全ての出演者が超一流で素晴らしいのですが、今回も期待通り、歌唱も演技も、そしてオーケストラも非の打ち所がない上演でした。やや録音には難があったような気がしますが。

 ダムラウは、現地では「歌うメリル・ストリープ」と評されているそうですが、隅々まで考え抜かれた歌唱のみならず、演技も実に素晴らしい。主人公は結核に侵されているという設定になっています。自分の人生が長くないことを悟って、「裏社交界の華」から本当の愛を求めていった心情の変化を歌唱と演技で見事に表現していたと思います。

 ダムラウの声質は特別に華やかというわけではありませんが、ソプラノとしての低音域から高音域まで同じような質で歌えるため、叙情性と華麗さをともに求められるヴィオレッタ役にはあっているようです。オペラの登場人物としてはもちろん、ソロでアリアを集めたCDも何枚も出していますので、興味のある方は是非。

 一方のアルフレードは田舎から出てきなお坊ちゃん。今回の演出でも、何のためにパリに出てきたのかわかりませんでした。頼りのない若造ぶりをフローレスがうまく演じていたと思います。整った顔立ちのフローレスが演じているだけに、ヴィオレッタの悲劇の原因はお前だろうと、スクリーンに向かって言いたくなりました。

 今回歌ったフローレスは、この役は今回が初めてとのこと。ヴェルディよりも少し前の時代のオペラ、少しタイプの違っていて「ベルカント・オペラ」と言いますが、この分野では第一人者です。METライブビューイングでも何度も歌っていたのですが、この数年見る機会がありませんでした。久しぶりに聴いてみると、声がやや太くなり、以前のような軽やかに歌い上げるというよりは、じっくりと聴かせるというタイプに変わりつつあるような感じです。

 《椿姫》というオペラは主役二人、ヴィオレッタとアルフレードが大切なのはいうまでもありませんが、もう一人、アルフレードの父親・ジョルジョで、全体の出来不出来が決まります。これまでも何にものジョルジョを見てきてきましたが、今回のジョルジョ、ケルシーも素晴らしい。第2幕から登場しますが、アルフレードのような子を持つ父親の心情を実感させてくれます。泣けました。また、これまで見てきた映像ではどうも腑に落ちなかったアルフレードやヴィオレッタとの感情のすれ違いも、納得できました。もちろん、バリトンとしての声もいい。

 連休中も上映されていましたが、どなたか観に行かれましたでしょうか。感想を聞かせてください。

 次回は2月22日から。チレーアの《アドリアーノ・ルクヴルール》です。正直言ってマイナーで、実は観たことがありません。18世紀初頭のパリを舞台にした、実在の人物をモデルにした三角関係の物語だそうです。今シーズンの1作目《アイーダ》でアイーダを歌った、アンナ・ネトレプコが主役を歌います。そのほかに出演する歌手たちも、超一流です。ネトレプコ以外ではバリトンのアンブロージョ・マエストリがオススメ。
興味のある方は、是非。