名フィル定期 第444回:ブルックナー交響曲第8番

 今月の名フィル定期は先週末(3月17,18日)で、
ブルックナー:交響曲第8番ハ短調
指揮:小泉和裕
でした。

 シーズンの締めくくりは大曲、1曲ですが、4楽章構成で演奏時間は約1時間半。交響曲の中でも傑作中の傑作。宇宙を表現しているかのような雄大な曲です。学生時代にオケでやったことがあり、それなりに思い入れもあるのものの、かつてはどこがいいのかよく分かりませんでした。これは8番に限らず、ブルックナーの全ての交響曲に対して同様に感じていました。年齢を経たからか、この10年くらいはややのめり込み気味です。特に、名フィルの定期では毎年必ずと言っていいほどブルックナーの交響曲が取り上げられ、その都度予習をかねていろんな演奏を聴き、また、名フィルの演奏も毎回すばらしいからかもしれません。

 作曲者のブルックナーは1824年、オーストリアのリンツ近郊の生まれ。同じくオーストリア生まれではヨハン・シュトラウス2世が1歳下、チェコのスメタナとは同い年です。また、少し年上にワグナーやヴェルディ、少し年下にブラームスやサン=サーンスがいます。ブルックナーは若くしてリンツの聖フローリアン修道院(付属図書館が有名です。宿泊もできます)のオルガニストになり、その後ウィーンに出て大学で作曲の先生をしながら、自らも交響曲や宗教音楽を作曲しました。オーケストラの曲としては10曲の交響曲のみと言ってよく、一般にはあまり有名とはいえませんね。

 どの交響曲も長く、やや重たいですが、教会でオルガンが鳴っているかのような壮大な響きが特徴です。そして、じっくり聴いていると内省的になり、人生や社会を始めいろんなことを考えさせてくれます。ベートーヴェンのように直接に訴えるものは感じませんが、音楽に大きな力があることを実感させてくれます。

「作曲」と書くと「メロディーをつくる」ことのように受け取ってしまいますが、英語では”compose”で、「構築する」という意味。作曲家も同様 に”composer”です。つまり、「作曲する」ということは、メロディーやリズム、和音を組み合わせて「音楽にする」行為ということです。ベートーヴェンの曲、特に交響曲第5番などをきくとよく実感できます。ブルックナーの音楽も全く同様で、短いメロディーの断片やフレーズを次々と積み重ねて大きなまとまりができあがっていく様子が非常によくわかります。

 交響曲第8番を生で聴くのは今回で2回目。今回の名フィルも大いに期待していました。期待に違わぬと言いたいところですが、今回はやや緊張感に欠けていたような気がします。シーズン最後、音楽監督の指揮にやや気負いすぎていたのでしょうか。この雰囲気は客席にも届いていたのでしょうか、前半、1,2楽章でやや雑音も耳に付きました。

 一番好きなのは第3楽章(アダージョ:荘重にゆっくりと、しかし引きずらないように)で、ここでこそじっくりと哲学的になるべきなのですが、やや深みに欠けたような気がします。むしろ、第4楽章の構築美が見事に表現された演奏でした。

 来月から新シーズンです。初めての指揮者や若いソリストが次々と登場し、世界各地の音楽を取り上げてくれます。4月はシドニー出身の指揮者が同郷の作曲家の作品を日本初演します。そのほかに、有名なシューベルトの「未完成交響曲」が演奏されます。