名フィル定期(第474回)《畢生の傑作》

 名フィル1月定期は17、18日に《畢生の傑作》と題して
   シューマン:チェロ協奏曲イ短調
   ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指輪》より[沼尻版]
   チェロ独奏:パブロ・フェランデス
   指揮:沼尻竜典
で行われました。
 また、今回は日本音楽財団が貸与しているストラディバリウス作の楽器を用いた演奏会として、1696年製の「ロード・アイレスフォード」と名付けられたチェロが用いられました。

 タイトルの「畢生」にふさわしいのは後半のワーグナーの作品でしょう。四つのオペラの連作で、実際に上演される場合にはもちろん4日間かかります。実際には同一歌手が複数の作品に出演しなければならないため、せいぜい一日置きに上演されるので一週間かかります。作曲者が35歳(1848年)の時に構想を練り始め、全曲が初演されたのが1876年という、まさに人生を賭けた大作です。のべ上演時間は15時間以上でしょうか。

 ワーグナーの主な作品は全てオペラであるため、オーケストラのコンサートでは一部の前奏曲などが取り上げられるだけです。以前に、この『ニーベルングの指輪』の一部を名フィル定期で演奏されたことがありますが、今回は歌手を入れず、その代わり4つのオペラを圧縮してまとめて聴くことができました。指揮者自らの編曲です。

 全体を50分ほどに縮小した演奏ですが、オケだけで聴いてみるとワーグナーの音楽の表現力のすばらしさを改めて実感します。長く複雑なストーリーのため、音楽を聴いて全ての場面がおもいうかぶわけでありませんが、十分に想像させてくれます。

 指揮者の沼尻は以前に名フィルの常任指揮者を務めており、13年ぶりの定期登場。大編成のオーケストラが迫力十分だっただけでなく、角笛を表すホルンのソロやをはじめ、管楽器のソロや弦楽器のアンサンブルもいつもとは違う緊張感がありました。

 前半に演奏されたシューマンのチェロ協奏曲は、チェロの協奏曲としては非常に有名な曲で、よく演奏されます。第396回でも取り上げられました。

 今回の独奏者のフェランデスは1991年、マドリード生まれ。テクニックはもちろんですが、まだ20代にもかかわらず、一音一おんがしっかりとした主張を持って居るような素晴らしい演奏でした。まだCDは出していないのか、サイン会はありませんでした。

 ソリストアンコールはなんと2曲。バッハの無伴奏チェロ組曲から1曲と、カタルーニャ民謡「鳥の歌」でした。「鳥の歌」は、スペインが産んだ名チェリスト、パブロ・カザルスが好んだ演奏した曲です。ソリストの名前も、カザルスからとられているそうです。