名フィル定期(第409回)

今月の名フィル定期は先週の金曜日、土曜日。
『土ーー東欧の自然/北欧の田園』
と題して、名フィル正指揮者円光寺雅彦の指揮で
ドヴォルザーク:序曲『自然の中で』
リヒャルト・シュトラウス:ホルン協奏曲第2番 変ホ長調
ニールセン:交響曲第3番 ニ短調 作品27 『広がりの交響曲』
ホルン独奏:ラデク・バボラーク
3曲目でソプラノ独唱:金原聡子、バリトン:能勢健司

円光寺さんの指揮はいつも音が暖かくて優しい。この日のコンサートでもホッとした気分にさせてくれる名演でした。棒の振りは決してかっこ良くはなく、誰でもマネできそうで、やや朴訥とした感じです。しかし、紡ぎ出される音はキメが細かく、しかも目がしっかりと詰まっています。そして、そっと包み込んでくれるような、いつまでも浸っていたいと感じさせてくれる響きです。

円光寺は名フィルのポストについて3年、だいぶなじんできた感じがします。音色は一朝一夕で作れるものではありません。できるだけ長く関係を保っていけると、いい『オケの音』ができると思います。


さて、ドヴォルザークは交響曲第9番『新世界から』、あの『家路』の曲です。音楽史上屈指のメロディーメーカーだと思っています。今回の序曲『自然の中で』はタイトルのように静かな森の中にいるような気分を味わせてくれる様々なメロディーにあふれています。特に冒頭は森の夜明け、窓を開けると鳥の声がいろいろ聞こえてくるようで、みごとです。

この「序曲」というのは、オペラの冒頭に演奏される序曲ではなく、演奏会用序曲といわれるジャンルの曲。あるテーマを立てて、その印象やストーリーを音楽で表現しようとした曲です。チャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」などが有名です。

3曲目のニールセンはデンマークの作曲家。同じ北欧、フィンランドのシベリウスと同い年で、1865年生まれ。交響曲が有名な作曲家ですが、日本はもちろんヨーロッパでもまだそれほど評価は高くないようです。確かにCDで聴いても、今ひとつ入っていけないというか、前後の時代のドイツやフランスの作曲家の曲と比べると、やや漠然とした雰囲気があって、私にとっては好きになるとしてももう少し時間がかかるかなと思っていました。

ところが、生で聴いてみると素晴らしい曲でした。特に歌、と言っても母音唱法
=ヴォッカリースが入る第2楽章は秀逸。おそらく管弦楽法としてはそれほど複雑ではないと思いますが、詩、それも人生の悲しさや厳しさを語るかのような朗読、あるいは群読を聞いているような前半から、後半は転調して雰囲気は一変。伸びやかなハーモニーに載せて遠くから響くヴォッカリースはまるで傷ついた心をいたわってくれているかのようでした。2人の歌手はホールのステージ後方(芸文のコンサートホールをご存じの方はわかると思いますが、オルガンの椅子の横)で歌われ、演出効果も満点。円光寺・名フィルの演奏もさることながら、これは、今後も聴きこんでみるか、と思っております(*^^)v また、第1、第4楽章も交響曲らしく、金管が鳴り、木管が奏で、弦が響き、「オケ」が伸びやかに歌い上げ、別名「ニールセンの田園交響曲」と呼ばれる所以です。

来シーズンではニールセンの交響曲第1番が取り上げられます。『ちょっとマイナーな」ではなく、本格的な交響曲作曲家の作品としてしっかりと予習しておきたいと思います。


さて、この日の主役はホルンです。ラデク・バボラークは元ベルリン・フィル首席奏者。おそらく現役では世界一のホルン奏者です。昨年、NHKの「らららクラシック」にも出演されていました。名フィルもこんな人が来るんです!

私の席からはホルンのベルが反対を向いていたためか、決して大きな音は聴こえませんでしたが、柔らかくてビロードのようなツヤのある音色。息の長い、まるでブレスをせずに歌っているかと思わせる流れるようなメロディー。細かい動きのところは、ボールが弾けながら転がっているかのようでした。あんなのを生で聴けるとは
😃  わずか20分足らずの曲、短すぎました(; ;)

リヒャルト・シュトラウスは今年が生誕150年、昨年が余りにビック・イヤーだったため目立たないのですが、個人的には好きな作曲家で、楽しみです。

アンコールの曲は聴いたことのない曲でしたが、倍音だけで演奏、超絶技巧に圧倒されました。拍手が鳴り止まず、急遽追加、指揮者も一緒に出てきてホルン協奏曲の最後の部分を聴かせてくれました。いつになく高校生など若いお客さんが多かったのですが、お目当ての音色とテクニックを堪能できたのではないでしょうか。

来月は常任指揮者M・ブラビンスがブルックナーを振ります。