名フィル定期 第439回(つづき)

 前回に続いて今月の名フィル定期です。

 第1曲目の作曲者である藤倉は名フィルの「コンポーザー・イン・レジデンス」にはよい日本語訳がないようですが、作曲家を招聘し、運営方針などの意見をもらったり、定期的に新曲も提供してもらう契約をしている場合に、その作曲家に対して用いられるようです。国内の他のオケでもいくつかは同様の作曲家を抱えているようですが、名フィルでは藤倉が第1代目で、今シーズンが3年目(?)で、来年度からは新しい作曲家を招聘する予定が決まっています。

 藤倉はこれまでに何曲か名フィル定期で取り上げられてきました。個人的な体験などを基に得たインプレッションを曲につなげていることが多いような気がします。今回の「レア・グラヴィティ」、日本語訳の題名はないようですが、強いて訳せば「低重力」でしょうか。数年前に生まれた子どもさんが、お母さんのおなかの中にいたときに、おなかの中=羊水の中に浮かんでどんどん大きくなっていく様子をイメージして作曲したそうです。理解しがたいところもありますが、20分弱ほどの曲の中で、一つ一つ独立しているかのように感じたパーツがだんだんと1つにまとまっていくような印象を持ちました。これが「成長」をイメージしているとすれば、何となく分かったような気がします。ただ、当日のパンフレットに掲載された作曲者自身の解説では、浮遊感も表現したとのことですが、残念ながら私にはそれほど感じられませんでした。

 音楽自体は、口ずさめるようなメロディーがあるわけではなく、映画のBGM、場合によっては効果音のような響きが連続しています。オケの編成は標準的なもので、特別に使われているのはオーボエ・ダモーレ(オーボエの類縁楽器で、オーボエよりもやや大型、楽器名はイタリア語で「愛のオーボエ」の意)とコンガ(キューバの民族楽器で、縦長の打楽器)とゴング(インドネシアの民族楽器で、銅鑼を小さくしたような形で音階があります)。

 現代音楽は敬遠されがちです。私も「分かった」といえることはほとんどないし、例えば、車を運転しながらきけるような曲でもないため、なかなか自分から聴こうという気持ちには慣れません。ただ、ベートーヴェンにしても、モーツァルトにしても、そして、ラフマニノフにしても、彼らは彼らが生きた時代の現代音楽の作曲家であり、その時代に受け入れられていたのです。時代が違うとはいえ、やはり同時代を共有するという意味ではできるだけ触れる機会をつくりたいものです。この点で、地域のオーケストラが積極的に取り上げているのは非常にすばらしいことだと思います。