名フィル定期第438回定期 『山猫』とギター協奏曲

 9月の名フィル定期は月初めの3日、
ニーノ・ロータ:交響組曲『山猫』
カステルヌオーヴォ=テデスコ:ギター協奏曲第1番 ニ長調
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調
指揮:ガエタノ・デスピノーザ(Gaetano D’ESPINOSA)
ギター独奏:朴葵姫(Kyuhee PARK) 

 今回はあまり有名ではない曲ばかりだったせいか、お客さんの入りは今ひとつでしたが、珍しいギター協奏曲や有名なイタリア映画のいわばサウンドトラックを前半においたプルグラムは、イタリア人指揮者らしい。2度と生ではきけないような曲が並ぶ魅力的なプログラムでした。

 映画「ゴッド・ファーザー」の音楽(『愛のテーマ』など)はご存じの方も多いでしょう。20世紀イタリアを代表する作曲家で、とりわけ映画音楽の分野でよく知られたニーノ・ロータ。元々は本格的なクラシック音楽の作曲家で、協奏曲などもつくっています(かつて名フィル定期第347回(2008年5月)でも『トロンボーン協奏曲』が取り上げられました)。映画音楽では、今回の『山猫』の他、フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』や『道』などが有名です。

 『山猫』はルキノ・ヴィスコンティ監督(『郵便配達は2度ベルを鳴らす』や『ベニスに死す』などが有名)の映画(1963年公開)で、19世紀半ばのシチリアでの貴族社会の繁栄と没落を描いた作品です。原作となる小説があり、時代背景などがよく分かります。映画では、青年貴族を演じるアラン・ドロンのはつらつとした演技が印象的ですが、ニーノ・ロータの音楽は映画の主題に沿ったのか、豪華絢爛な雰囲気の中にも何となく陰りが感じられます。特に映画のオープニングに使われ、今回演奏された組曲の冒頭を飾る音楽が分かりやすいと思います。

 2曲目は珍しいギター協奏曲です。ギターという楽器(もちろん、アコースティックギターです)は皆さんご存じの通り、それほど大きな音量が出せる楽器ではありません。したがってオーケストラに埋没してしまうため、そもそもオケとの協奏曲はそれほどつくられておらず、ロドリーゴの『アランフェス協奏曲』(名フィルでは第370回定期で取り上げられています)が有名な以外は、演奏機会もほとんどないと思います。

 今回取り上げられた曲はギター協奏曲の中では比較的よく知られているようで、手持ちのCDでは「3大ギター協奏曲」と題して、アランフェス協奏曲とともにカップリングされています。作曲者のカステルヌオーヴォ=テデスコはニーノ・ロータの一世代前の作曲家、といっても活躍したのは20世紀の半ば。イタリア生まれですが、ユダヤ系ということで、第二次大戦をはさむ難しい時期に生き、ファシズムの台頭を逃れてアメリカに渡っています。(余談ですが、”テデスコ;tedesco”はイタリア語で”ドイツ人”という意味です)

 ギター協奏曲第1番は当時の有名なギター奏者のために作曲されたもの。メロディーもわかりやすく、非常に聴きやすい曲です。

 今回のソリストである朴は1985年韓国生まれ。数々の国際コンクールで優勝した後、日本を中心に活動しているようです。一音一音がはっきりとしていてテクニックの高さを感じました。また、ギターの音量を考慮してか、オケは小編成で、まるで室内楽のような演奏スタイル。どちらかというとオケがギターを支えていると感じるでしたが、ギターとオケとのかみ合いもよく、1曲目が大編成であっただけに、さわやかな時間でした。

 ソリストアンコールは
ローラン・ディアンス: タンゴ・アン・スカイ
という曲でした。高度な技巧を要求する曲のように聴きましたが、決して技術を見せつけるのではなく、じっくり聴かせてくれたような気がします。(前日の演奏会ではタレガ作曲『アルハンブラの思い出』を演奏したようです。聴きたかった(; ;)) 演奏会終了後にはCDの購入とあわせてサイン会があり、写真撮影にもにこやかに応えてくれました。
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 後半はメインであるドヴォルザーク。交響曲ではなんといっても第9番《新世界から》が圧倒的に有名。今回演奏された第7番は、作曲者40代の頃の作品で、前後には愛国的な作品も手がけていただけに、チェコ(あるいはボヘミア)の雰囲気を感じさせる隠れた名曲。前半の2曲とは切り離して楽しむつもりでしたが、さすがはイタリア人指揮者というべきか。「チェコ臭さ」を排除して、あっさりと、どちらかといえば楽天的な純音楽としての交響曲に仕上げてくれました。手持ちのCDがチェコの有名な指揮者によるチェコのオーケストラの演奏で、「チェコ臭さ」にどっぷりとつかっていただけに、新鮮な驚きでした。オケも指揮者の要求に応えていたのでしょう、弦楽器がよく響き、管楽器も充実したハーモニーを聴かせてくれました。一方で、第3,第4楽章が気に入っているのですが、全奏での迫力も堪能できました。

 来月は10月21,22日、フィギュアスケートでもよく取り上げられるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が演奏されます(詳細はここ)。ソリストは世界的な名ピアニスト(誇張ではありません)であるミハイル・プレトニョフ。正直言ってよく名フィルに来てくれたなと思うような大物、”必聴”です。彼のリサイタルだとチケット代は3倍以上すると思います。

 また、9月22日から名古屋港でアッセンブリッジ・ナゴヤというイベントがあり、24日・土曜日の夕方に名フィルのコンサートがあります。ジャン=マルク・ルイサダという、こちらもフランスの名ピアニストとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を共演します(詳細はここ)。このコンサートは無料です。時間のある方は是非。