世界一の歌声:アンナ・ネトレプコ

 先週火曜日(3月15日)にソプラノ歌手のコンサートを聴きに行ってきました。私にとっては今年前半のハイライトです。これまでにもMETライブビューイングで何度か紹介していますが、現代最高のソプラノ歌手と言っていいでしょう、アンナ・ネトレプコと彼女の夫君でテノール歌手であるユーシフ・エイヴァゾフの2人のコンサートです。

 スピーカーを通してしか聴いたことのない世界一の歌声を生で聴けました。第一声を聴いたときには鳥肌が立ち、彼女独特のクリーミーな歌声にうっとりし、声量と迫力に圧倒されました。

プログラムは
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より
私は神の卑しい僕です”(ネトレプコ)
チレア:歌劇「アルルの女」より
ありふれた話(フェデリコの嘆き)”(エイヴァゾフ)
ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より
穏やかな夜~この恋を語るすべもなく”(ネトレプコ)
ああ、あなたこそ私の恋人~見よ、恐ろしい炎を”(エイヴァゾフ)
ヴェルディ:歌劇「アッティラ」序曲
ヴェルディ:歌劇「オテロ」より
二重唱”すでに夜も更けた”(ネトレプコ、エイヴァゾフ)
(休憩)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より
ある晴れた日に”(ネトレプコ)
マスネ:歌劇「ウェルテル」より
オシアンの詩”春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか”(エイヴァゾフ)
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より
亡くなった母を”(ネトレプコ)
5月のある晴れた日のように”(エイヴァゾフ)
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」間奏曲
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より
貴方のそばでは、僕の悩める魂も”(ネトレプコ、エイヴァゾフ)
指揮:ヤデル・ビニャミーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 オペラのアリアばかりのプログラムで、ちょうど演奏会形式での上演を模したもの。通常のオケのコンサートで歌手が歌う場合には指揮者の横にじっと立って歌うのですが、今回は舞台上を動き回り、オペラでの演技さながらに、役になりきって持ち前の表現力を十分に見せてくれました。

 舞台上での存在感やふるまい、ピアニッシモであっても、後ろを向いていても十分にホール全体に響く声、曲によって声質や表情を使い分け、何をとってもすばらしい。人気、実力ともに世界一であることを見せつけられました。

 バックにオケが鳴っているので、音量だけで勝負すれば人の声の方が必ず負けてしまいます。しかし、聞こえるかどうかは音量だけの問題ではなく、倍音をどれだけ鳴らすかによって決まります(詳細はまた別の機会に)。したがって、ピアニッシモの声であってもオケの音に打ち勝って十分に聴かせることができます。

 今回の公演は、3月いっぱいかけてのアジア・ツアーの一環。日本では名古屋で1回やったあと東京で2回やるだけ。プログラムはほぼ同様のようですが、最近の彼女のオペラでの役と同様に、ヴェルディなどなめらかで重たい声を要求する曲ばかりです。ネトレプコは、若い頃は軽やかに高音を操るような曲を歌っていましたが、年齢とともに少しずつレパートリーを変えてきていています。同じ音域、彼女は「ソプラノ」ですが、歌い方や声質は作曲家や役柄によってかなり違いがあり、歌手ごとに得意不得意があります。ネトレプコは自分の声質の変化と役柄をうまくあわせて、常に自分に合ったレパートリーを採り上げてキャリアを築いているような気がします。40代半ばですが、ちょうど円熟期に入ったところかな? 

終 演後にはサイン会も。非常に陽気でとても楽しそうなご夫婦です。中央の赤いドレスで手を振りかけてくれているのがアンナ・ネトレプコ、右側のすごいジャケットがユーシフ・エイヴァゾフです。

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