METライブビューイング《西部の娘》

 METライブビューイングの今シーズンの第3作目
  プッチーニ:歌劇《西部の娘》
が上映されています。

 これまでにも紹介したことのある《ラ・ボエーム》や《トスカ》、《蝶々夫人》、《トゥーランドット》で有名なイタリアの作曲家、ジャコモ・プッチーニの作品です。作曲したのは50歳ごろで、《蝶々夫人》の後にあたります。《蝶々夫人》(長崎が舞台)や《トゥーランドット》(中国が舞台)同様に、プッチーニの異国趣味が現れた作品ですが、当時のニューヨークのメトロポリタン歌劇場に招待されたプッチーニが依頼を受けて作曲した作品です。題名の通り、アメリカの西部を舞台にして、盗賊と保安官がヒロインをめぐって争うまさに西部劇です。

 数年前にもライブビューイングで上映されていますが、今回はキャストも全く異なり、こちらもいろいろ見慣れてきたこともあり、ゆっくりと鑑賞できました。

 カルフォルニアの金鉱労働者の集まる町が舞台。ヒロインのミニーをソプラノのエヴァ=マリア・ヴェストブルックが歌いましたが、なかなか繊細ながらも迫力のある歌声で大喝采を浴びていました。相手役の盗賊団のボス、ジャック・ジョンソンは正体を隠して現れますが、すぐにばれてしまい、保安官と町の人たちに捕まってしまいます。目立ったアリアは2曲しかなく、アンサンブルが多い役をテノールのヨナス・カウフマンが渋く演じていました。おそらく現在、人気、実力ともに最高のテノール歌手でしょう。柔らかい声質でありながらも力強く響く声質は他の歌手達を圧倒しています。最近は貫禄も出てきて、いよいよ巨匠の域に近づいています。ヒロインを争う保安官役はバリトンのジェリコ・ルチッチ。これまでにも2014年のマクベス役など、悪役が多い印象ですが、演技は見事としかいえません。

 プッチーニは全部でオペラの10作品しかつくっていませんが、《西部の娘》は他と比べると上演頻度も低く、決して有名ではありません。男性にソロのある役が多く、合唱(全員男性)のウエイトも高いため、歌手をそろえられる劇場が少ないことが原因のようです。アメリカの歌劇場も事情は同様ですが、お国ものと言うことで人気もあり上演頻度はヨーロッパに比べると高いようです。

 心理描写がやや多く、昨シーズンに上映された《トスカ》や《ラ・ボエーム》に比べると、音楽も劇的ではありません。しっかりと聴いていないとついて行けないところもありますが、その分、歌手達の表現力を楽しむこともできました。

 オペラの演出は様々な読み替えや抽象化が多いのですが、今回の上演は非常にリアリティのある舞台でした。西部劇の映画を見ているかのような臨場感があり、さらにはアメリカと日本では劇場や舞台に関する法律の適用もだいぶん異なっているのでしょうか、本物の馬にまたがり、また火も焚いています。

 年内の上映はもうありませんが、年明けには有名なヴェルディの《椿姫》やビゼーの《カルメン》もあります。ぜひどうぞ。