名フィル しらかわコンサート 「シェレンベルガーのモーツァルト」

 名フィルは年間120回ほどのコンサートがあるそうですが、名フィルが主催しているコンサートは定期演奏会など限られています。その中で、名古屋・伏見のしらかわホールでも《しらかわシリーズ》と題するコンサートが年に数回あります。舞台も小さく、客席もそれほど多くないため、小規模の編成の曲を集めたプログラムが中心です。

 1月12日には、現代を代表するオーボエ奏者であるハンスイェルク・シェレンベルガーを招いてオール・モーツァルトプログラムのコンサートがありました。今回はオーボエ協奏曲や滅多に演奏されない隠れた名曲が取り上げられました。

モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調
モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調
モーツァルト:セレナード第10番 変ロ長調『グラン・パルティータ』
指揮・オーボエ独奏:ハンスイェルク・シェレンベルガー

 オーボエという楽器は2枚リードの木管楽器です。中学校や高等学校の吹奏楽部で必ずあるわけではないですから、ご存じない方も多いでしょう。Wikipediaではこんな風に紹介しています(https://ja.wikipedia.org/wiki/オーボエ)。オーケストラでは木管楽器の前列で、客席から見て右側にいることが多く、フルートと並んで高音の連立を受け持つことの多い楽器です。独特の音色ですが、奏者による音色の差もかなりあり、今回聴いたシェレンベルガーの音色も

 今回演奏されたのは、モーツァルトが20代の前半だった頃に作曲した曲です。幼い頃に神童といわれたモーツァルトも、この頃にはただの人といわれたとか。

 それはさておき、聴き応えのあるいい曲ばかりです。
モーツァルトは41曲の交響曲を作曲していますが、10代に作曲した若い番号の曲をのぞくと、今回演奏された第33番は演奏頻度の低い曲です。普段もあまり聴く機会がなく、今回予習をかねて何度か聴いてみました。編成も小さいため、派手さやそれほど印象的なメロディーもありませんが、かなり密度の濃い。

 協奏曲はオーケストラをバックに1つの楽器が独奏をするスタイルです。今回はシェレンベルガーがオーケストラの指揮とオーボエ独奏を兼ねての演奏でした。オケの前奏に続いて響いたオーボエの音には鳥肌が立ちました。甘く、艶やかでありながら、芯のある音で、言葉で語りかけてくるような演奏でした。小さな音でも、目の前で鳴っているかのようなしっかりした音です。

 独奏パートはオーボエの特性を十分に発揮できるようなメロディーですが、オケと対話しているようで、オペラのアリアを聴いているような感じです。3楽章構成ですが、緩徐楽章である第2楽章でのオーボエ独奏には聴き惚れます。

 覚えている方がいらっしゃるでしょうか?少し前に「のだめカンタービレ」というドラマ&アニメがありました。その中でも黒木君が「ライジングスターオーケストラ」のコンサートでソロを吹いた曲です。

 客席もほぼ満席でしたが、いつも聴きに行く定期演奏家に比べるとやや雰囲気が違い、やや玄人気味の様な気がしました。木管楽器に特に興味がないとシェレンベルガーの名前もご存じないでしょう。コンサートの後半のセレナードは特に玄人好みといえるでしょうか。

 後半に演奏された「セレナード」は貴族などの食事の場などでBGMとして演奏されていたようなスタイルの音楽です。「機会音楽」ともいい、耳触りもよく、どんな人にも聴きやすい音楽で、モーツァルトも何曲かつくっています。今回演奏された第10番は7楽章構成で、内容的には非常に充実していた、何度聴いても飽きないすばらしい曲です。

 ただ、オーボエ2、クラリネット2、バセットホルン2、ファゴット2,ホルン4、コントラバス1という、珍しい楽器編成です。特殊な編成だけにオーケストラのコンサートで取り上げられることはきわめてまれ。。それだけに、是非一度生演奏を聴いてみたいと思っていた曲です。 当時はこのような管楽器を中心としたアンサンブルが流行していたそうです。バセットホルンはクラリネットとよく似た楽器で、少し低い音域でより幅広い音色を持った楽器です。19世紀以降ほとんど用いられることはなくなりました。金管楽器のホルンとは全く関係がありません。この曲では、コントラバスの代わりにコントラファゴットが用いられることもあり、『13管楽器のためのセレナード』と呼ばれることもあります。

 プロのプレーヤーにとっても気持ちは同じでしょう。今回はステージ脇の2階席ということもあり、奏者や指揮者の表情も見て取れました。演奏の水準の高さももちろんですが、音に華やぎがあり、全ての演奏者が楽しそうに演奏していることがよく分かりました。もちろん、聴いている方にも至福の時間です。

 今後もこのような演奏会に出会えることを願います。