名フィル定期(第401回)

昨日、名フィルの新シーズン第1回の定期演奏会でした。今シーズン(2013.4~2014.3)は、「ガイア」シリーズと題して、大きな意味での自然や地球を毎回のテーマとして選曲されたプログラムが用意されています。

第401定期演奏会にあたる今回は『空気・土ー鳥と人の営み』と題して
ヴィラ=ロボス:交響詩『ウイラプルー』
ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり
ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 作品68『田園』
指揮・ヴァイオリン独奏(2曲目):クラウディオ・クルス
でした。

今回は正味の演奏時間が1時間半に満たないこともあってか、あっという間に終わってしまった気がしますが、それだけ充実した演奏で、私の集中力がきれなかったということでもあります。

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曲目の作曲者、ヴィラ=ロボスはブラジルの作曲家。クラシック音楽に馴染みのない方は始めて聞く名前だと思います。演奏会でもそれほど取り上げられることはなく、少なくとも今回の曲は名フィルでは多分初演、CDもほとんど出ていません。私も今回の予習のために始めて手にいれました。

曲はもともとバレエ用につくられたようですが、今回は、バレエ曲はをもとにした交響詩。情景や感情を音楽で描くことを目指して確立された形式です。今回のタイトルのように、森に住む「ウイラプルー」という魔法の鳥が主役のブラジルの昔話が題材。鳥だけではなく、森(ブラジルですから多分ジャングル?)のいろんな情景が浮かんでくる楽しい曲です。打楽器がたくさん用いられている他、ハープが2台も使われ、オケには珍しいソプラノ・さっくすのそろもたのしめます。

2曲目はヴァイオリンのソロとオーケストラのためにつくられた小品です。「揚げひばり」は決して雲雀の揚げ物ではなく、原題" The Lark Ascending"の邦訳。同名の詩があるようで、『舞い上がるひばり』とも訳されていますが、「揚げひばり」は俳句の春の季語だそうです。

今回の指揮者クルスはもともとヴァイオリニストとして有名だそうで、弾き振り(ヴァイオリンのソロと指揮を兼ねる)でした。曲のせいもありますが、決してきらびやかな音ではなく、おおらかな世界に引き込んでくれる演奏でした。野原で、暖かい日差しを受けて寝転んでそらをとぶとりをみていると、いつの間にかウトウトしいて、気がつくと鳥たちはいなくなっていた、そんな情景でしょうか?

副題は「ヴァイオリンとオーケストラのためのロマンス」、自然に対する作曲者の愛情があふれた一品です。メインの作曲者、ベートーヴェンにもヴァイオリン・ソロを伴う『ロマンス』と名付けられた曲が2曲あります。よく知られたベートーヴェンの肖像画からは想像もできない愛らしい曲です。今回の選曲は、これも意識してのことかもしれません。

ついでですが、ベートーヴェンつながりの話題を一つ。最近テレビでやっているNTTドコモのCM、キノコの帽子をかぶって団子を食べているところで使われている音楽は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番、通称『春』の第一楽章です。以前はやった『のだめカンタービレ』(ドラマではたぶん第2回目?)で、ヴァイオリン科の峰が試験で弾いた課題曲もこの曲。のだめが伴奏をするはずだったのに熱を出してやれなくなったので、千秋が代わりにをつとめて何とか合格した時の曲といえば思い出す方もいるのでは?

『田園』についてはまた次回.では(^0^;)

ヘンデル:セルセ

今週末は2つのコンサートを聴きに行きました。

名古屋・栄にある宗次ホール:『イタリアに魅せられて~ソリストとコレペティトゥーアによる饗宴』

名古屋・千種文化小劇場:ヘンデル作曲 歌劇《セルセ》

前者は、若手の歌手、ソプラノ、メゾソプラノ、バリトン一人ずつとピアノという組み合わせで、ヴェルディのオペラアリアを中心にしたプログラムでした。

バリトンはパク・ドンヨルという韓国人。現在ミラノ在住で、歌手だけではなく、オペラ演出かとしても活躍しているとのこと。いい声でした。特に、先月METライブビューイングで聴いた『リゴレット』のアリアはなかなのもの。なぜか?日本語もペラペラで、合間のトークも楽しめました。

ピアニストは、柳橋幸子というイタリアで活躍中のコレペティトゥーア。コレペティトゥーアは、オペラの歌手の練習相手を務めるピアニストで、伴奏だけでなく、歌手に対して発声や歌唱、暗譜に関するアドバイスもする役割を担う人のことを言います。表には出ませんが、歌劇場では非常に重要な役職で、ここから有名な指揮者になって行った人もいます。この方は、もともと歌手だったようですが、現在はコレペティトゥーアに徹しているようです。イタリアで仕事をしているということは、もちろんイタリア語はペラペラなのでしょう。

ヘンデルのオペラは、私の自宅の近く、覚王山などを中心に毎年この時期に開かれる『やまのて音楽祭』といイベントの一環で、名古屋バロックオーケストラという、プロとアマチュア混在の古楽オーケストラの公園でした。歌手もセミ・プロのような立場の人ばかりでしたが、熱演でした。会場は、舞台を中心にして、300席ほどが円形に取り囲んでいて、非常にアットホームな感じです。本来は演劇用なのでしょうが、ちょうどヘンデルの時代にはこのような形式の上演もあったのではないかと思います。

古楽というのは、今回のヘンデル(1685年生まれ)くらいの時代に実際に使われていた楽器や奏法で演奏するスタイルを言います。ノン・プロでは非常に珍しいのですが、はまるとやめられないでしょうね。

オペラのストーリーはここを見ていただくとして、演奏の水準はともかく、今回のように比較的安価(¥2,000)で、間近でオペラを楽しめる機会がもっと増えるといいですね。

名フィル定期(第400回)

先週末は名フィルの今シーズン(2012ー2013)最後の定期演奏会でした。名フィルの定期演奏会は毎月1回、金曜日と土曜日に連続して2回の公演(もちろん同じメンバーで同じプログラムです)。 いつもは土曜日に聴きにいくにですが、今回は予定があり、金曜日に振り替えてもらいました。

今回は名フィルの第400回目の記念演奏会、題して『名フィル定期400回の物語』
プログラムは
マーラー:交響曲第3番
指揮:モーシュ・アツモン(名フィル名誉指揮者)
メゾソプラノ:福原寿美枝
女性合唱:愛知県立芸術大学女性合唱団
児童合唱:名古屋少年少女合唱団

全6楽章、100分におよぶ大曲です。一般的なオーケストラのコンサートで取り上げられる曲目としては最も長い曲だとか。もちろん途中休憩はありません。

各楽章ごとに作曲者自身が表題をつけていて、全体として自然や動物が人に語りかけてくる何かをイメージしていて、自然礼賛と言ってもいいような曲です。私はもっと抽象的に感じる部分もあるのですが、これは人それぞれでしょう。

聴き応えがあったのは、ホルン8本のファンファーレで始まり力強さにあふれる第1楽章と美しいハーモニーが響く第6楽章です。また、第4、第5楽章にメゾソプラノのソロと合唱がはいります。しっとりとして下から響いてくるような福原の歌声、甘美と言ってもいい女性合唱は圧巻。そして、第1楽章にある長大なトロンボーンのソロは見事でした。手持ちの3種のディスクのソロと比べて、音色は私もイメージに最もあっていて鳥肌が立つようでした。

今回は400回記念ということで、4人いるコンサートマスターは総出演。営業にもいつも以上に力が入っていたようで、前売り券は2日とも完売。客席も圧巻でした。

4月からは新常任指揮者を迎えての新シーズンです。テーマは「ガイア」、これまでの数シーズンに比べるとメジャーな曲が多いように感じます。また、毎回のように超一流のソリストを迎えて、大いに期待が持てます。(HPはここ)みなさんも一度いかがでしょうか?私に言って頂ければちょっと安くなります。

リゴレット

3月のMETライブビューイングは上旬の
ヴェルディ:リゴレット
だけでした。

ヴェルディ中期三大傑作のひとつに数えられる名作です。主な登場人物はソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトン、バスと、各音域から一人ずつで、ほぼ全員に有名なアリアや重唱があります。また、合唱(男性が主です)にも聴きどころがあり、音楽を十分に楽しめるオペラです。

この時期のヴェルディに特徴的な、社会的な弱者を主人公に据えた悲劇、さらにこの時期のヴェルディに共通するのが、必ず女性が死んでしまうこと。
《リゴレット》は、ビクトル・ユゴーの「王は楽しむ」という戯曲(残念ながら原作の翻訳本は手に入りません)をもとに台本が作られていて、本来は16世紀のイタリア ・マントヴァの宮廷が舞台です。ところが、今回のMETの舞台は1960年代のアメリカ・ラスベガスのカジノ。このように舞台となる時期や場を変更して演出するのを「読み替え」といいます。時として全く理解できない舞台になってしまうのですが、今回はこれまでに観たいくつかのオーソドックスな演出よりもわかりやすく、作品の持つ普遍性を十二分に表現していたと思います。

主人公のリゴレットは宮廷に使えるせむしで片脚が不自由な道化。せむし=脊椎後弯症で、宮廷の主である公爵には気に入られていても、道化として辛辣な皮肉ばかり言っているので、他の家来からは嫌われている。一方で、公爵は奥さんがいるのですが、とにかく好色で、リゴレットの一人娘に手を出します。今回の演出では、この公爵がカジノの経営者としていて、字幕も「公爵」ではなく「デューク」、duke=公爵をカタカナで書いて名前あるいはニックネームのように解釈していました。

読み替えだと、間にはいる字幕付けも大変ですね。

演奏は、ヒロインであるリゴレットの娘、ジルダを演じたディアナ・ダムラウが声質もテクニックもすばらしく、聴き惚れてしまいました。高音域が多く、また、細かい音の動きを要求されるコロラトゥーラという歌い方ですが、有名な第1幕の独唱や、このオペラ一番の聴きどころである第3幕での三重唱と四重唱など、見事でした。