年末の第9

A組の皆さん、先日はどうも有り難うございました.参加者が多かったこともあり、あまりいろんな方とお話ができなかったのが残念です.また機会があれば呼んでください.

さて、冬休みに入りレポートのテーマ探しを始めている頃かと思いますが、年末の風物詩といえばなんと言っても『第9』です.

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 作品125 『合唱付き』
Ludwig van Beethoven : Symfonie Nr.9 d-moll Op.125

名フィルの演奏会はもう終わってしまいましたが、東京や大阪では今日、明日というところもあるようです.テレビではNHK交響楽団の演奏会の模様が先日ハイヴィジョンでありました.ほぼ毎年聴いていますが、今年の演奏はなかなかすばらしかったと思います.大晦日に教育テレビとBS2でやりますので、ぜひ聴いてみてください.(
予定はここ

なんと言っても指揮者に驚きました(!_+)

クルト・マズア(Kurt Masur)は82歳、まさに現代の巨匠です.旧東ドイツの出身で、長くライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者を務めていた人.(10月にきたオケです.
ここ
1989年にライプチッヒで民衆の大規模なデモがあったときに、マズアは、デモ隊と軍隊との衝突を避けるためにメッセージを発し、平和的な解決に重要な役割を果たしました.ヨーロッパでは街のオーケストラあるいは指揮者はものすごく発言力があります.

このドレスデンでの民衆デモとその解決がその後のベルリンの壁崩壊につながったといわれています.さらに東西冷戦の解消があったからこそEU結成があり、そしてEUの国歌が第9です.

マズアが振る『第9』、あまりテンポを動かすことなく、全体にやや速めのテンポで淡々している中に、細部をしっかりと聴かせる演奏.マズアの演奏は他の曲でも私のイメージによく合うのですが、今回もすっーと耳に入ってきました.

また、4楽章の合唱には児童合唱まで入り(楽譜にはありません)、歌詞にある「諸人よ」を見せてくれているかのようでした.作曲者であるベートーヴェンが込めた思いがそのまま伝わってくるかのような、芯の強い音楽で、終わった後の聴衆の拍手もいつものN響定期よりも大きく、長い気がしました.

エフゲニー・オネーギン

先週金曜日、出張の合間を縫って(というより一番の目的だったかも^_^;)渋谷にあるBunkamuraという、東急がやっているイベント施設にあるオーチャードホールという、国内では割と有名なホールでオペラを観てきました.
ロシア・サンクトペテルブルクの国立劇場(正確にはムソルグスキー記念サンクトペテルブルク国立アカデミー劇場と言うそうです)の来日公演で、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」というオペラでした.
(別の劇場の宣伝ですが、
ここ:http://www.youtube.com/watch?v=6uPMutuMbokにちょっとした映像があります.)

その前の週には名古屋にも来ていて、栄の芸分センターの大ホールでやっています.個人的にはこのホールは大きすぎて(特に舞台の幅)オペラには向いているとは思えず、何度か聴きに行って失望させたれたことがあり、テレビで何度か観て気になっていたオーチャードホールを選びました.
舞台幅も欧米の一般的なオペラハウスと同じくらいだし、客席の奥行きもそれほどなく、ちょうどいいくらいでした.やや前の方の席だったということもありますが、歌もオケもよくきこえました.(オケの腕はイマイチでしたが(-.-#))

さて、このオペラはチャイコフスキーの最も有名なオペラ作品で、同じロシアの文豪・プーシキンの同名の小説(韻文小説とよく言われます.残念ながらまだ読んでいません)をもとに、ほぼ原作通りの登場人物、ストーリーでつくられています.
筋は単純で、
主人公である
オネーギンは都会から田舎に引っ越し、そこで隣人であるレンスキーやラーリン一家と出会う.ラーリン家の娘タチヤーナ(このオペラの事実上の主人公・ヒロインです)はオネーギンを見て一目惚れ、その気持ちを手紙で伝えますが、オネーギンは田舎のおぼことみて相手にしません.暫くして、つまらぬ嫉妬からレンスキーがオネーギンに決闘を申し込み、レンスキーは負けて命を落とします.その後、オネーギンは数年間放浪生活を送った後、帰国.都会(モスクワかペテルブルク?)でオネーギンとタチヤーナは再会.しかし、タチヤーナはすでに貴族と結婚し、都会の水に洗われて魅力的な人妻となっていました.よりを戻そうとオネーギンは何度もタチヤーナに手紙を送りますが、返事はなく、彼は直接会って気持を伝えますが、結局彼女に降られて、幕.

全編約2時間半ですが、チャイコフスキーの優雅な音楽と、おそらく原文の韻文が生かされているだろう歌詞が相まって、よく耳にするロシア語の語感とは違った非常に耳に優しいアリアを堪能できました.
タチヤーナがオネーギンへの手紙を書くシーンが、ソプラノの名アリアで、延々15分くらいをほぼ一人で歌います.この作品の中で最も有名なシーンですが、感情移入して、こちらまでその気にさせられてしまいました.タチヤーナの夫役であるバスのアリア、ほとんどおのろけを聴かせるような歌詞ですが、メロディーがいいので、しみじみとしていて『ああ、本当に幸せなんだな』と感じさせてくれます.

途中で舞踏会のシーンがあり、ロシアお得意のバレエが演じられました.このときの音楽・舞曲(ポロネーズ)が非常に有名.いろんなところで使われているので、皆さんも耳にしたことがあるかもしれません.(別の劇場の映像ですが、
ここ:http://www.youtube.com/watch?v=WLfMsFHJd9o&NR=1をみてください、ただしバレエはありません)

これまでに何度かMETのオペラ映画を紹介しました.音楽的なレベルはMETのほうが上だと思いますが、やっぱり生に勝るものはありません.今回は歌手のほとんどがロシア出身者ということもあり、歌詞とこめられた情感がうまく一致し、ロシア語のわからないものにも作品で描こうとした心のひだがよく理解できた気がします.

名フィル定期(第364回)

先週の土曜日は名フィルの12月定期、指揮者は常任指揮者のディエリー・フィッシャーで、ソリストがフルートのエマニュエル・パユという信じられないような組み合わせでした.

曲目は
ボルン:カルメン幻想曲
ドビュッシー(カプレ編曲):組曲『子どもの領分』から「雪は踊っている」
ドビュッシー/ホリガー:アルデュル・ノワール
ジャルレ:フルート協奏曲『・・・静寂の時・・・』
ストラヴィンスキー:バレエ『ペトルーシュカ』(1911年版全曲)

私も事前に聴いたことがあったのはストラヴィンスキーとドビュッシーの『子どもの領分』の原曲(ピアノ曲としてはかなり有名)だけ.後はマイナーどころか、日本初演の曲が2曲も入っているという、(@_@; )なプログラムです.

とは言っても、今回の呼びはなんと言ってもソリストのパユ.1曲目と4曲目がフルートソロの入る曲で、最初の登場から拍手の大きさが違いました.
パユはおそらく現代最高のフルーティスト、20歳でパリの国立高等音楽・舞踊学校(通称コンセルヴァトワール、「のだめ」がパリで通っている学校です(^^))を首席卒業し、弱冠23歳でベルリン・フィルの主席に抜擢されたという天才.現在40歳ですが、オケだけではなく、ソロや室内楽でも大活躍.
決して明るく輝くような音色ではないのですが、芯が太く、高音から低音までまんべんなくよく鳴っていました.以前に紹介したヴァイオリニストのデュメイの音もそうでしたが、ピアニッシモで吹いているはずなのに会場全体が鳴っているようによく響きました.

実は指揮者のフィッシャーももとはフルート奏者.しかも同じジュネーブ生まれということで、もともとつながりはあったのかもしれませんが、本当によく名フィルに出てくれました.(._.)オジギ

演奏された曲ですが、1曲目はビゼーのオペラ「カルメン」の有名なメロディーを、主旋律をフルートが奏でながらメドレーにしたようなわかりやすい小品.作曲者のボルンも本来フルート奏者.
4曲目の作曲者:Micharl Jarrellは1958年・ジュネーブ生まれで、これまた指揮者、ソリストと同じ.しかもこの曲を2年前に初演したのがパユ.彼のための曲みたいなもの.相当な難曲らしいのですが、あまりにも普通に吹いていたので、実際にどれくらい難しいのかはわかりませんでした.たぶんフルートという楽器の可能性をとことん追求した上でつくられたのでしょう、現代音楽を聞き慣れない方には雑音か?、フルートからちゃんとした音が出てないぞ?と思う様なところもたくさんあります.(日本初演でした)

実は、1週間前に伏見のしらかわホールで、パユの他同じフランス系の管楽器奏者たちによる『レ・ヴァン・フランセ』というアンサンブルの演奏会がありました.歴史的にフランスには有名な管楽器奏者が多く、このグループもクラリネットやホルン、オーボエ、バッソンの現代を代表するソリストたちの集まり.弦楽器の4重奏などは有名な曲がたくさんありますが、管楽器の合奏にもいい曲がたくさんあります.
CDなども含めて、ドイツ・オーストリア系のグループの演奏を聴くことが多いので、かなり新鮮でした.

この演奏会に行った理由は、パユではなく、「バッソン」の生を聴きたかったから.『のだめカンタービレ』を読んでいる方はわかると思いますが、現在一般に使われているファゴット:fagott(英語ではバスーン:bassoon)はドイツ式と言われます.オーボエと同じく2枚リード式の低音楽器で、オケでは普通オーボエの後、クラリネットの隣に座り、木管楽器の最低音を受け持ちます.フランス式のbassonとは楽器の形や音色、運指が異なります.フランスでもこのバッソンを使う人が少なくなっているそうで、日本では生で聴く機会がほとんどなく、この機会を逃してはと楽しみにしていました.

確かにちょっと違いました.意外かもしれませんが、ドイツ式がやや甘く、しっとりした音がするのに対して、フレンチは少しくすんだような、渋い音がします.ドイツ式が音の立ち上がりがまろやかであるのに対して、フランス式は指の動きが聞き取れるような、音の出方を感じました.

先週は学会出張だったのですが、その前後で非常に充実したコンサートを堪能できました.(実は出張先でも夜にオペラを聴きに行ったのですが、それは後日)