METライブビューイング《魔笛》

 先週末から今シーズンの2作目、
モーツァルト《魔笛》
が始まっています。今週金曜日まで。

 現代の言葉を使えば「ファンタジー」というところでしょうか。演出によって様々な国、時代を連想させますが、今回の舞台装置は氷の国のようなやや冷たいイメージですが、衣装は歌舞伎役者のようなところもあります。私たちには親しみやすい演出です。

 この作品はストーリーもすっきりしているわけではなく、また、登場人物が多く、場面転換も頻繁です。しかし、一般的なオペラ=歌劇とは異なり、台詞(全てドイツ語です)がかなりあるため、ストーリーを追いかけるのは楽かもしれません。他のオペラにあるように、結末で誰かがしんでしまうこともなく、悪役が追い出されたで、ハッピーエンドです。

 歌手達も、若手からベテランまでそろい、音域もソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトン、バスと全ての歌手が歌います。また、同じソプラノでも、軽い歌声の歌手もいれば、超絶技巧を要求される役柄まで、オペラの様々な側面を楽しめる作品です。

 モーツァルトの時代、18世紀に「音楽家」といえばイタリア人、”Opera”といえばイタリア語で歌うものでした。モーツァルトも「魔笛」までに、1作をのぞいて全てイタリア語の歌詞に曲をつけています。そして、「歌劇」には地の台詞はなく、全てに曲がついています。現在でいう“ラップ”のような部分もありますが、全てに音程が指定されている、つまり音符に随っています。モーツァルトが生活していたウィーンでも事情は同じ。ただし、庶民に外国語が分かるはずはなく、オペラは王侯貴族ものでした。

 今回の《魔笛》は、ドイツ語圏で庶民が楽しんでいた「歌芝居(Singspiel;ジングシュピール)」で、歌手は歌唱だけでなく台詞も発します。現在のミュージカルとよく似ています。

 ヨーロッパでは子どもが最初に見るオペラだそうで、時に笑いを誘うような場面もあり、気楽に楽しめるオペラです。機会があれば、どこかで是非ご覧下さい。