クラシック新定番100人100曲

先日書店で『クラシック新定番100人100曲』という新書を見つけました.アスキー新書という聴いたことのないシリーズでしたが、ルネッサンスから始まって現代に至るまで、とにかく作曲か一人につき1曲だけを取り上げて2〜3ページで解説、著者のお気に入りの1枚(CD or DVD)を紹介するという本です.
林田直樹という年は私とほぼ同じ、初めてきく名前ですが、音楽評論では割と活躍しているみたいです.

作曲家を100人あげるのもけっこう大変でしょうが、それぞれ1曲選べといわれても、これまた大変だったでしょう.発想が面白いですね.
ベートーヴェンでは交響曲第9番を取り上げているのですが、自由や平和を求めた作曲家の思想に言及し、同じ『9』つながりで日本国憲法第9条に相通じるものがあるとはっきり主張する当たり、上滑りの楽曲解説ではなく、短い文章の中でもまじめに1曲1曲を取り上げているような気がします.

もう一つこの本のいいところは、取り上げた曲を視聴できる無料のWebサイトを立ち上げていることです.
アスキー新書『クラシック新定番100人100曲』刊行記念・試聴サイトから入れます.
いくら「この曲がお薦め!」といわれても、結局CDを買わないと聴けないのでは文字通り『絵に描いた餅』.NAXOSというややマイナーなレーベルとのタイアップなので、超有名どころの演奏とはいかないですが、それでもとにかく聴けるというのはこれまでの出版常識にはない画期的な試みだと思います.ぜひ訪れてみてください.
そして気に入ったらぜひ自分でCDを買って聴いてみてください.もちろんiTuneで買うという手もあります.

フィガロの結婚

今日は平日なのですが、休みをとって(といっても夕方から行きましたが)、オペラの映画を観に行きました.
これまでに、ミッドランドでやっているMETライブビューイングは何度か紹介しましたが、ささじまライブにあるシネコンでも先週からイギリスの歌劇場のオペラ映画をやっています.(
ここです

先週は有名なビゼーの『カルメン』、これはいけなかったのですが、今週はモーツァルトの『フィガロの結婚』をやっています.
どこかの新聞社の調査では日本人の好きなオペラの2番目だそうです(トップは同じモーツァルトの『魔笛』).中世スペインを舞台に、結婚を控えた召使いの女性にちょっかいを出す貴族を、同じ召使いたちがやり込めるという、なんとも皮肉の利いたどたばた喜劇なのですが、聴き惚れるようなアリアあり、笑いありのおはなし.

ライブビューではなく、2006年の上演の録画.ただ、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウス、通称コベント・ガーデン歌劇場の上演.
かすがに一流の歌手をそろえています.以前に紹介したMETの『ドクター・アトミック』で主役のオッペンハイマー博士を歌ったジェラルド・フィンリーをいうバリトンが、ここではアマルヴィーバ伯爵とう脇役をやっています.
タイトルロール(主役)のフィガロはアーウィン・シュロットという歌手は今のりのりの歌手だそうです.(ちなみに、以前に紹介したアンナ・ネトレプコというソプラノ歌手、来週METライブビューイングでまた歌いますが、彼女の旦那さんです)

全体として、演出・演技、演奏ともに、登場人物の心情を分かりやすく表現しようとしているのでしょう、輪郭のはっきりした分かりやすい舞台でした.

この話は、18世紀後半のフランスのボー・マルシェという作家の3部作の第2話.第1話がロッシーニの『セビリアの理髪師』になりました.登場人物が共通しているので第1話を知っているとより楽しめます.特に、フィガロ同様に貴族の使用人であるマルチェリーナとバルトリの悪巧みや、伯爵夫人が夫の不実を嘆くところなど.

また、このオペラには通称『ズボン役』という、女性(普通はメゾ・ソプラノ)が男性を演じる役があります.ここでも伯爵夫人に恋をするケルビーノという、ちょっとおませな少年で出てきます.彼が舞台では女装するというシーンもあるのですが、その着替えのシーンがカーテンに隠れらがらで、歌詞とうまくあっていて、けっこう笑えます.

原作は完全に『反貴族』、フランス革命につながる内容です.今回の上演は、作品の狙いを「アンチ貴族」と考えながらみてもいいし、難しいことを考えずに現代の感覚で、男女の心変わりの機微を楽しむこともできるものだったと思います.

ちなみに、歌詞はすべてイタリア語、ですからオペラ上演には字幕がつきます.日本の場合には舞台の両側に縦長のディスプレイ、ヨーロッパだとけっこう真四角だったかな? 今回は他の演奏・映像と比べて、観客の笑いが多かったので、実際の字幕がどのようにでてるのか興味がわきます.

今週の土曜日からミッドランドシネマでMETライブビューイングとして、ドニゼッティというイタリアの作曲家の『ランメルモールのルチア』という作品が上演されます
(ここ).主役のルチアは、上で名前を出したアンナ・ネトレプコ.ロメオとジュリエットのような悲劇です.終盤にあるルチアの延々15分以上に及ぶアリアが聴きもの.ソプラノ歌手にとって難曲中の難曲だそうです.映画としてはちょっと高いですが、ぜひ視に行ってみてください.

名フィル定期(第355回)

今日は名フィルの常任指揮者であるティエリー・フィッシャーの指揮するコンサート『未完成+巨人』
フィッシャーが指揮するからか、メジャーなプログラムだったからか、割とたくさんお客さんが入っていました.

プログラムは
シューベルト作曲:交響曲第7番ロ短調『未完成』
藤倉大:『アンペール』〜ピアノと管弦楽のための協奏曲
マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』

『未完成』は非常に完成度の高い、しっとりとした名演でした.
これまで『第8番』とされてきましたが、最近は『第7番』と整理し直されました.ご存知の方も多いと思いますが、本来4楽章構成のはずの交響曲が2楽章分しか楽譜が見つかっておらず、シューベルトの生前には演奏されることもありませんでした.ということで『未完成』と称されていて、その題名は耳にしたことがあると思います.

あまり大きな編成の曲ではないので、弦楽器のウェートが大きいのですが、よく鳴っていて、広いダイナミックスレンジにも関わらず、非常にきれいなハーモニーを響かせていました.管楽器はクラリネットとオーボエのソロが際立つ一方で、全体としてはあまり主張しすぎることもなく、見事なアンサンブルでした.
第2楽章は、やや早めのテンポで緊張感を保ちながら、静かに消えるようにおわりました.
こういう曲を『聴かせる』のは難しいと思うのですが、オケの充実度と指揮者の力量が発揮されていると思います.

マーラーは、まさにフィッシャーの熱演.もちろんオケも十分に応えていました.
「巨人」というタイトルにはいきさつがあるようですが、特にこの表題にこだわって聴く必要はありません.
メリハリのはっきりしない茫洋としたところのあるマーラーの音楽を、四角は四角、丸は丸と輪郭をはっきりさせ、小気味いい作りでした.今まで持っていたマーラー観がちょっと変わりました.終楽章など、決して負けることなく力強くと訴えているような.『生と死を見つめた』と言われるマーラーの音楽ですが、今日の演奏は、暗く沈んだような現実であって、それをしっかりと見据えて展望を失わないようにというメッセージを発していたのかもしれません.

マーラーのような大編成のオーケストラの迫力はさすがです.特に終楽章の最後の部分、まさにフィナーレはこの曲が『巨人』と称されていることを、「いかにも」とおもわせてくれます.

さて、この日の注目はなんといっても藤倉大というイギリス在住の日本人作曲家の新作です.名フィルとイギリスの名門オーケストラ(フィルハーモニー管弦楽団)の共同委嘱によるピアノ協奏曲.すでにイギリスで初演は済ませているそうですが、もちろん日本初演.ベートーベンやモーツァルトの時代は、すべてが新作の初演だったわけで、こういう場面で出会えるのは音楽ファンとして本当に幸せなことかもしれません.
とは言っても、典型的(?)な現代音楽、正直言ってどれだけ楽しめたのか、自信がありません.ピアノ協奏曲ですからピアノ(グランドピアノ)を使うのは当然ですが、何と「トイピアノ」、つまりおもちゃのピアノまで登場する曲でしたから.

ヨーロッパでは秋から春(あるいは夏)がシーズンですが、日本のオケはいろいろ.名フィルは年度の刻みと同じ、4月から3月です.というわけで今シーズンも来月で終わり.
4月からは新しいシーズンで、年間タイトルは『四季』.それぞれの季節にちなんだ選曲で、いずれも非常にユニークな
プログラム(ここです)です.ぜひ一度足を運んでみてください.

木管アンサンブル

皆さん後期試験はいかがでしたか? うまくいった人もそうでなかった人も、この週末はひとまずゆっくりしたのではないでしょうか?

わたしは土曜日に碧南のホールであったコンサートに出かけました.けっこういいホールで、内装はすべて木で柔らかい響き、木管アンサンブルにはぴったりでした.
木管アンサンブルは吹奏楽などでもおなじみの木管楽器だけの合奏です.アンサンブルは"ensemble"、「合わせる」とか「組み合わせ」というような意味でよく使いますね.
今回のコンサートは東京芸大の先生(一人だけ)と学生による編成でした.さすがに先生(クラリネット)だけず抜けてましたが*^_^*

木管アンサンブルの魅力はなんといっても音色.それぞれ全く違う音色を持つ楽器が合わさることで何とも言えない響きになります.1+1が2ではなく3にも4にもなるという言い方をいろんな場面で使いますが、木管アンサンブルの場合には一気に次元が上がってしまうような感じです.今回のプログラムはこの木管アンサンブル独特の響きを堪能できるように考えられていると思います.

前半はモーツァルトのオーボエ、クラリネット、ファゴットとホルンが各2本ずつという編成のセレナーデ(セレナードとも言います).モーツァルトには珍しい短調の曲で、第1楽章のオーボエの哀愁を帯びたメロディーとこれを支えるように響くファゴットとホルンなど、それぞれの楽器の特徴を活かして、新しいメロディーが次々とつながっていきます.

セレナーデは日本語では「小夜曲」といい、ドイツ語では「ナハトムジーク(Nachtmusik)」ともいいます.4つの楽章から成っているので、交響曲の全身のような形式と考えることもできますが、弦楽器だけと管楽器だけとかの小編成で、BGMのような気軽に聴ける雰囲気の曲、多分当時は本当に上流階級の食事の時のBGMとしてつくられてた曲も多かったことでしょう.

モーツァルトの場合は最初から演奏会用として書いていると思いますが、全部で12曲あります.一番有名なのが誰もが知っている通称「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク(Eine kleine Nachtmusik)」.

コンサートでは楽器紹介やサウンド・オブ・ミュージックのメドレーなど、クラシック音楽になじみのない人にも楽しめるように工夫されていました.

メインはグノーという19世紀半ばから後半に活躍したフランスの作曲家の「管楽器のための小交響曲」、その名の通り、上の8本+フルートという編成で4楽章仕立て.フランス風の洒脱さはありませんが、けっして重くはなく、耳にもなじみやすいいい曲です.ほとんど同じ編成なのですが、モーツァルトとは全く違う響き.

今回のコンサートは入場料500円(全席自由)、交通費の方がはるかにかかりました.ただ、紹介した2曲は、木管楽器をやっているもの以外には超マイナーで、演奏会で取り上げられることはあまりなく、一度聴いてみたいと思っていた曲です.念願がかなったという感じです.(●^_^●)