テレビでのオペラ放送

再試験を受験される皆さんには大変申し訳ないですが、来週NHKがBSハイビジョンで放送するオペラを紹介します.

オペラをテレビで放送しても高い視聴率は見込めないでしょうが、公共放送であるNHKはさすがに、価値のあるソフトをしっかりと取り上げてくれています.BS2の「クラシックロイヤルシート」(月曜日の早朝というか、日曜の深夜)やBS high visionの「ハイビジョンウィークエンドシアター」(毎週土曜日の深夜)などで、1か月あたりで2〜3本のオペラが上映されていると思います.今月分はほぼ終わってしまいましたが、3月も「クラシックロイヤルシート」でマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」(間奏曲が有名です!)、「ハイビジョンウィークエンドシアター」でワーグナーが取り上げられます.(番組紹介は
ここ

その中でも注目なのが、3月1日〜5日の5日間(深夜)、特集番組「華麗なるメトロポリタン・オペラ」として、ここでも何度か取り上げたニューヨークのメトロポリタン歌劇場の「ライブ・ビューイング」企画で制作されたソフトの放送(
ここに詳細が載っています).いずれも昨シーズン(2008〜2009年)の上演分で
グルック:歌劇「オルフェウス」(「オルフェオとエウリディーチェ」)
ドニゼッティ:歌劇「ルチア」(「ランメルモールのルチア」)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」
ベルリーニ:歌劇「夢遊病の女」
ロッシーニ:歌劇「シンデレラ」(「チェネレントラ」)
です.

この企画では幕間に出演者の生の声が聴けたり、舞台裏の紹介があったり、あまり構えなくても聴けるところが魅力です.映画館でみる場合は、「ライブ」ですから休憩時間は休憩です.

「オルフェウス」と「シンデレラ」は観に行けなかったので非常に楽しみにしています.しかし、これら以外の3上演はいずれも必見です.昨年、上映を観て感想を書きましたので参考にしてください.
「ルチア」(
ここ
「蝶々夫人」(
ここ
「夢遊病の女」(
ここ
「夢遊病の女」に主演するナタリー・デセイは私が一番好きな歌手.4月上映のMETライブ・ビューイング、トマ:歌劇「ハムレット」で歌いますし、7月に日本にも来ます.

実は2月1日〜5日にも昨シーズンの上映分のうち、前半の5作品を放送しました.残りは?と思っていたのですが、結局全部やることになるわけですね(*^^)v

古楽器

題名だけでは何のことかわからない方も多いでしょう.

先週の土曜日に、名古屋・栄にある宗次ホールでのコンサートです.
プログラムは、
ベートーヴェン:七重奏曲(編成は、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルン)
シューベルト:八重奏曲(編成は、上記+第2ヴァイオリン)
たぶん、ヴァイオリンを習っているというだけでは知る機会はないでしょう.かなりマイナーな曲ですが、とてもいい曲です.

いずれも以前から大好きで、よくCDは聴いていて、一度生で聴いてみたいと思っていました.やっと念願が叶ったわけですが、今回のような古楽器の演奏で実現することになるとは思っても見ませんでした.

古楽器(=オリジナル楽器)とは、文字通り、昔使われていた楽器という意味ですが、この20年くらい、結構ブームです.ベートーヴェンやシューベルトが生きていた18世紀から19世紀にかけて実際に使われていた楽器は今とはだいぶ違っていました.特に管楽器は、構造も簡単で、その分今から見れば演奏が難しいということになります.弦楽器も本体は同じですが、弦はガット弦(動物の腸=gutを使います)、弓や奏法も今とは違います.
したがって、今の楽器のように大きく、響きの豊かな音を出すことができません.一般にヴィブラートもかけないので、音程を合わせたりすることが難しいのですが、非常に透明感のある音がします.

作曲された当時の音色や響きを再現していると考えられ、現代奏法では得られない素朴な味わいがあります.

演奏者は、昨年4月に名フィルの定期を指揮した鈴木秀美が本職のチェロを弾き、彼が主宰する古楽器ばかりのオーケストラ(オーケストラ・リベラ・クラシカ)のメンバーたちでした.
古楽器の生演奏は初めてだったので、はじめはやや耳がついていきませんでしたが、後半のシューベルトでは、演奏もよかったのですが、古楽器の魅力にはまってしまった気がします.ホール自体が小規模のアンサンブルを想定してつくられているからか、適度な残響.一つ一つの楽器の音はもちろん、細かな息づかいまで聴き取れ、かつてのサロンの雰囲気も味わうことができました.演奏者たちがいかにも楽しそうに、時にアイコンタクトをとり、笑顔を見せていたのが印象的でした.

演奏会終了後、サイン会をやっていたので、CD/色紙を買って、鈴木秀美さん他、メンバーの皆さんのサインをもらってきました.

METライブビューイング《カルメン》

先週末にMETライブビューイングで、ビゼーの『カルメン』を観に行きました.

この数回、週末は常に満席みたいです.いったい何が起こったのでしょう?? そんなにあちこちで宣伝しているのでしょうか?


さて、「カルメン」は世界で最も人気のあるオペラだそうですが、他にはないくらい激しい舞台で、ちょっと驚きました.

すでに婚約者のいるドン・ホセという下士官(伍長という設定です)をカルメンが誘惑します.ホセをおとなしい一途な青年と描く演出が多いのですが、今回はやや激情型.カルメン自体が「激しい女性」というイメージがあって、実際にそのように演じられることが多いので、対比がおもしろかったのですが、今回は正面からのぶつかり合いという感じでしたので、シックリこないところもないではありません.

主人公のカルメンはメゾ・ソプラノ.ヒロインとしてはやや珍しいのですが、あの激しさはソプラノの軽やかさ、華やかさはちょっと合わず、やっぱりちょっとドスのきいた低音の方がそれらしくきこえます.

「カルメン」が人気のある理由はいろいろあるのでしょうが、やっぱり「ハバネラ」や「闘牛士の歌」、前奏曲など、誰しもが一度は耳にしたことのある名曲目白押しだからでしょう.全体も、エキゾチックという雰囲気の音楽で彩られています.
また、「ばらの騎士」のような上流階級の話ではなく、また「トゥーランドット」のようなおとぎ話でもなく、密輸団の一員であるジプシー(ロマ)の女性と田舎者の兵士という、ややアウトロー的で、サスペンスっぽいところが親しみを感じさせるのかもしれません.

4幕構成で、最後の第4幕では、ホセを袖にしたカルメンが闘牛士であるエスカミーリョと仲良くなります.復縁を迫るホセとカルメンが口論になり、ホセがカルメンを刺し殺してしまうところで幕.演出にもよりますが、殺人の場面で終わるにもかかわらず、決して後味が悪くないのも人気の秘密かもしれません.

今回は闘牛士エスカミーリョ役を歌うはずだった有名な歌手が当日急病とかで、予定されていなかった歌手が歌っていました.歌は身体が楽器であるために、調子の悪いときに歌ってもいい演奏ができないだけでなく、無理をするとのどを痛めてしまいます.したがって、当日にキャンセルというのは割とよくあること.そのために、どんな役にも必ず「カバー」として、歌劇場の専属歌手でバックアップ準備しておきます.この日エスカミーリョを歌った歌手は、当日の朝10時に電話で連絡があり、午後2時からの公演に出演.METデビューだったそうです.低音がよく響く迫力のある声でした.

今週の金曜日までやっています.試験が終わって時間のある方は明日の休日を利用して観に行ってはいかがでしょうか?

METライブビューイング《ばらの騎士》

現在名駅のミッドランド・シネマで、メトロポリタン歌劇場のオペラ映画(METライブビューイング)として、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)の『ばらの騎士』をやっています.先週土曜日に観に行きましたが、明日(木曜日)にもう一度観に行きます(^o^)(ここ

年始のNHKの『オペラ・コンサート』(
ここ)で森麻季たちが歌ったオペラです.

作曲者は先日の名フィルの定期で取り上げられた『最後の四つの歌』の作曲者です.同じ『シュトラウス』ですが、ワルツのヨハン・シュトラウスをは全く関係ありません.

ドイツ語でつくられたオペラで、原題はDer Rosenkavalier、1911年にドレスデンで初演されました.昨年来たドレスデン国立歌劇場(当時は宮廷歌劇場)です(
ここ).ホーフマンスタールという、当時のドイツで有名な劇作家との共同作業として、ストーリーと台本をゼロから作り上げられました.したがって、他のオペラと比べると言葉の量が多く、演劇性も高いので、難曲とされています.初演当時は大成功を収めて、ベルリンからドレスデンまで観客用の専用列車まで運行されたそうです(今のツアー旅行みたいですね).

さてあらすじと登場人物ですが、

舞台は18世紀半ば、啓蒙君主として名高いマリア・テレジア治世下のウィーン.ハプスブルク家の首都として最も華やかなりし頃です.

タイトルの「ばらの騎士」ですが、ウィーンの貴族が婚約の申込みの儀式に際して立てる使者のことで、婚約の印として銀製のばらの花を届けることから、このように呼ばれます.物語当時の貴族の間で行われている慣習という設定ですが、実際には作家であるホーフマンスタールの創作.この架空の設定が見事にはまっています.

登場人物は、
元帥夫人(ソプラノ):陸軍元帥の妻で、貴族出身の貴婦人
オックス男爵(バス):元帥夫人のいとこで、好色な田舎貴族
オクタヴィアン(メゾ・ソプラノ):元帥夫人の親族である伯爵家の貴公子、愛称がカンカン(女性歌手が男性役として演じるこのような役柄を『ズボン役』といいます)
ゾフィー(ソプラノ):オックス男爵の婚約者
ファーニナル:新興貴族、ゾフィーの父(おそらく事業に成功したブルジョアジーで、お金の力で貴族の称号を得たらしい)
この他に、当時のウィーンを思わせる多種多様な登場人物が花を添えます.

元帥夫人は台本上32歳(現在の日本なら40歳前くらい?)、オクタヴィアンは17歳.元帥夫人は出てきますが、元帥は名前が出てくるだけ.たぶん夫人とはだいぶ年が離れていて、現在、遠くへ遊びに(狩猟)に行っていています.この有閑マダムの寝室から話が始まります.

全3幕ですが、各幕とも1時間をこえ、全部で3時間半くらいかかる大作(実際の上演では幕間に休憩が入り、カーテンコールを入れて、4時間半くらいかかります).

第1幕の前に演奏される前奏曲は元帥夫人のオクタヴィアンの情事のシーンを描いていると言われています.なんとなく艶っぽく、いろんな想像をかき立ててくれる音楽です.そして
【第1幕】
多くの演出ではキングサイズのベットに、2人がけだるく横たわっているところから始まります.まさに『不倫』、まずオクタヴィアンが「あなたの秘めた情熱を知っているのは僕だけだ」と歌います.そして、2人でイチャイチャしているところに、突然オックス男爵が訪ねて来て、オクタヴィアンは慌てて隠れます.オックス男爵は、裕福な新興貴族の娘(ゾフィー)と婚約したので、彼女に『銀のばら』を送る『ばらの騎士』を紹介してほしいと、元帥夫人に頼みます.オクタヴィアンは夫人の小間使い(ここではマリアンデルという名前をつけられます)に変装(つまり、女性歌手が演じていた男性が、女装する)するのですが、好色な男爵はすぐに口説きにかかります.元帥夫人は『ばらの騎士』としてオクタヴィアンを推薦して、男爵を追い返します.
この途中で、いろんな人物が出てきて歌います.これが一つの聴きもので、特にテノール歌手が「心に甲冑を着てまで恋から遠ざかってきたのに〜」と歌うアリアは、歌詞もいいですが、メロディーがすばらしい.

この後、元帥夫人は若かった頃を思い出し、老いゆく自分を嘆きます.そしてオクタヴィアンに、あなたもいずれ若い女性と出会って私の元を離れていくのよ、と語ります(実際には歌うのですが・・・).一見悟っているようですが、決して若いオクタヴィアンをあきらめているわけでも、突き放しているわけでもないところが中年心(..; ).

若いオクタヴィアンは夫人の言葉を否定しますが、すねて出て行ってしまいます.この後の夫人の取り乱した様がリアルです.

【第2幕】
オクタヴィアンがファーニナルの館へ『ばらの騎士』として訪れ、ゾフィーに『銀のばら』を送ります.このとき、2人は互いに一目惚れ、このシーンは大注目.演出上の見せ所です.
続いて登場するオックス男爵はここでも好色丸出しで、ゾフィーを品定めするように振る舞い、完全に嫌われてしまいます.ゾフィーは何とか結婚を避けられないかとオクタヴィアンに助けを求めます.成り行きで、オクタヴィアンとオックス男爵は決闘.
オックス男爵役はたいてい大柄で、いかにも強そうに見える歌手が演じますが、小心という設定.ちょっと腕をかすられただけで大けがをしたように、大騒ぎ.こういうところのコミカルさもこのオペラの楽しいところです.
一段落したところで、オックス男爵に元帥夫人の小間使い(マリアンデル)から誘いの手紙が届きます.男爵は大喜びですが、実はオクタヴィアンが元帥夫人の助けを借りて仕組んだワナ.

【第3幕】
オックス男爵が小間使い(と思っているが実は女装したオクタヴィアン)に誘われてウィーン郊外のレストラン(個室です)で食事中.下心丸出しですが、オクタヴィアンたちにからかわれ、さらにファーニナルとゾフィーがやってきたところで醜態をさらしてしまいます.ファーニナルにも絶縁を言い渡されてしまうのですが、本人には意味がわからない様子.そこへ元帥夫人がやってきて「行動に気をつけて、貴族の体面を保つように」と一喝.婚約は解消されて、男爵はすごすごと引き下がります.ここまでのところは完全にコミック.後のしっとりした場面との対比は、台本が見事としか言いようがありません.

残った元帥夫人とオクタヴィアン、そしてゾフィーの3人は、ここでそれぞれに思いの丈を歌います.ここでの女声の三重唱がこのオペラの白眉.ドイツ語で歌われるので言葉とメロディーが一致するわけではありませんが、泣けます(;_; ).
元帥夫人は身をひく決心をして黙って出て行きます.残った2人は思いあまったように抱き合って、互いに「君だけを感じている」と歌って幕.

タイトルからすると「ばらの騎士」=オクタヴィアンが主役.事実、最も登場時間が長くて、歌う量も多いのですが、ストーリー上の主人公はやはり元帥夫人.この役を誰がどのように演じるか、で決まります.
今回のMETでは、当代屈指のソプラノ歌手にして、最高のシュトラウス歌手である、ルネ・フレミングが演じました.正直言って見事です.

名フィルのモーツァルト

日曜日に名フィルの特別演奏会(定期演奏以外の主催演奏会のこと)として、『アマデウス・シンフォニー』と題するオール・モーツァルトプログラムのコンサートがありました.
もちろん、アマデウスAmadeusはWolfgang Amadeus Mozartです.

プログラムは
交響曲第36番『リンツ』
ヴァイオリン協奏曲第1番
交響曲第38番『プラハ』
指揮とヴァイオリンの独奏は、名フィルの客演コンサートマスターのライナー・ホーネック

伏見のしらかわホールでしたが、ほぼ満員.小さなホールだということもありますが、しらかわホールの常連があることと、プログラム&ソリストでしょうか.

ホーネックは現在ウィーン・フィルのコンサートマスター.今年のニューイヤーコンサートでもコンサートマスターを務めていました.
コンサートマスター(コンマス)は、第1ヴァイオリンの一番前で弾いているヒト.ヴァイオリンの首席奏者であり且つオケ全体のリーダーです.プロのオケでは普通2〜3人おいて、演奏会毎に交代で務めます.名フィルでは常任が2人と客演が2人.客演の2人はいずれも年に1,2回だけやっていると思います.

ホーネックのソロは非常に音がきれいでした.これがウィーンの音か、と聴き惚れました.彼の使っている楽器はもちろんストラディヴァリウス.去年定期で聴いたデュメイと比べるとちょっと色気がないか?.モーツァルトが16歳の時に作った曲だと思えば、色気を求めてもという気がしますが、その分非常に素直で、たぶんいつまで飽きずに聴いていられるような、透明感のある音でした.

交響曲2曲はいずれも30分程度ですが、モーツァルト・テイストを満喫できます.いずれも標題はその曲が初演された地名にちなんでつけられた通称.『プラハ』はモーツァルト30歳の作品で、『リンツ』より3年くらい後につくられています.わずか3年ですが、36歳で亡くなったこと思うとすでに晩年の作品で、この後に不朽の名作である39〜41番が続くだけに、完成度は比較になりません.響きの豊かさ、全体の醸し出す格調高さなど、初めての方でも一度聴き比べるとすぐにわかると思います.