名フィル定期(第388回)

1週間たってしまいましたが、今月の名フィル定期の感想を一言.

テーマは「英雄の死」、プログラムは
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ドヴォルザーク:序曲《謝肉祭》
ヤナーチェク:狂詩曲《タラス・ブーリバ》
ヴァイオリン独奏:パク・へユン
指揮:小泉和裕

協奏曲を冒頭に置くというのはやや珍しい配列ですが、全体の時間構成(ヴァイオリン協奏曲:約40分、序曲:約10分、《タラス・ブーリバ》:約25分)を考えると、やむを得ないかもしれません.

今回のソリスト、パク・へユンは1992年生まれ(*_*).今回のような40分を超える協奏曲というのも珍しいのですが、この曲は単に長いというだけでなく、曲の構造も非常に大きく、表現すべき内容も重いので、とてもティーン・エイジャー向きとは思えないのですが・・・・(__;).そうはいってもそれらしくやってしまったので、将来が楽しみです.

コンサート全体は、前回、前々回と超大曲の名演が続いたためか、やや物足りなさの残る内容でした.少なくないお客さんも同じように感じられたようで、客席の緊張感も前回ほどではありませんでした.

テーマの「英雄の死」は3曲目の《タラス・ブーリバ》のこと.ロシアの文豪ゴーゴリの同名の小説を素材にして、その印象的なシーンを音楽で表現しています.この小説は翻訳が文庫で出ていないようで残念ながら読んでいないのですが、「隊長ブーリバ」という映画になっています・

全体は個別のタイトルを持つ3曲からなり、ハープやオルガンも入り、聴き応えは十分.非常に色彩感豊かで、まるで映画音楽のサントラ盤を聴いているような気分にさせられます.

作曲者のヤナーチェクは、村上春樹の小説「1Q84」で取り上げられた《シンフォニエッタ》で有名です.曲調はこの《シンフォニエッタ》の方が印象的です.

ブラームスの協奏曲は、まるで交響曲の上をヴァイオリンが動いているかのような重厚長大な造りで、ブラームスらしいといえばそれまでですが、とても19歳が弾く曲ではありません.同時に、この曲の第2楽章は非常に美しいメロディーで綴られていますが、ここはブラームスの師であるロベルト・シューマンの奥さんであるクララ・シューマンへの愛を表現しているともいわれ(やや眉唾ですが)、これまた19歳には難しい素材.作曲当時のブラームスは40代半ばで独身、クララは50代後半(ロベルト・シューマンは既に亡くなっています).

さて、3月はシーズン最後、エルガーのチェロ協奏曲とリヒャルト・シュトラウスの交響詩.チェロ協奏曲では指揮者:円光寺雅彦とチェリスト:山崎伸子の夫婦共演です.

名フィル定期(第387回):尾高・マーラー6番

試験勉強で大変な時期で誰もみてくれないでしょうが、忘れないうちに先週の名フィル定期の感想をまとめておきます.

今回は
「運命の一撃に死す」
と題して
マーラー:交響曲第6番
指揮は尾高忠明

演奏時間90分近い大曲で、休憩なしの1曲プログラム.先月に続きheavyな1日でした.
尾高が振るマーラーということで、今年度の演奏会の中で最も注目していたプログラムです.期待に違わぬ名演(^o^)、あっという間の90分でした.

マーラーは一昨年が生誕150年、昨年が没後100年.19世紀後半から20世紀初め、つまりいわゆる「世紀末」に活躍した作曲家.したがって、マーラーの音楽には退廃的というか、厭世的というか、あるいは常に「死」を意識しているかのような何ともいえない雰囲気があります.映画「ヴェニスに死す」にはマーラーの交響曲第5番の第4楽章が使われていて、独特の雰囲気をつくっていますが、今回の第9番でも第2楽章が同じような曲想です.

マーラーの曲は古典的な曲に比べると決して口ずさめるようなメロディーがあるわけではありません.同時に響いている音の数、種類が多いために、非常に複雑にきこえます.また、管楽器が分厚いので音量も大きく、私も聴き始めた頃は全く曲の中に入っていけませんでした.いまだになじめないところが多く、今回も予習がてらCDを聴いていただけでは(^_^;でしたが、生で聴いてみて、すこし感じ方が変わりました.

マーラーの交響曲には声楽附きの曲や楽章構成が複雑な曲も多いのですが、第6番は純器楽曲、典型的な4楽章構成.オケの音に集中できるということもありますが、岩城の指揮はじめじめ/どろどろしたところがなく、非常にすっきりとまとめ上げています.輪郭がハッキリしているので、聴き所がハッキリしていて、すっーと耳に入ってきます.こういう演奏であれば他の声楽附きの曲も是非聴いてみたいと思います.

さて、今回のテーマにある「一撃」ですが、第4楽章に「ハンマー」が使われているところからつけられているのでしょう.本物のハンマーです.ちょうど杭を打つときに使うような大型の木槌.相当しっかりつくられているのであろう共鳴箱にたたきつけて鳴らします.これまでどんな曲、演奏でも聴いたことがないようなとてつもなく大きな音がしました.

驚く人も多いでしょうが、作曲家は「新しい音」、「新しい響き」を取り入れていきます.現在のオーケストラの編成、あるいはあらゆる音楽のアンサンブルの形態もこうしたチャレンジの結果作り上げられてきたものです.
ハンマーなど見た目にはただただ(・o・)ですが、実際に聴いてみるといかに効果的であるのかがよくわかりました.