METライブビューイング《トスカ》

 上映期間は終わってしまいましたが、2月17日から1週間、METライブビューイングの4作目、
プッチーニ作曲《トスカ》
が上映されました。

 4年前のシーズンでも取り上げられました(ここを見て下さい)が、非常にわかりやすいストーリーで、音楽と場面が見事にマッチした名作です。今回はこれまでの演出から変更しての上演です。

 1800年のローマ、現在も残る実在の教会や宮殿を舞台として描かれています。特に今回の演出は、それぞれのセットを実物に即してデザインしているとのことで、臨場感があります。原作は19世紀後半につくられた戯曲で、サラ・ベルナールという当時のトップ女優を主役としてつくられた作品です。現在はほとんど上演されることはないようですが、オペラの方は世界的にも上演頻度の高い演目です。

 主人公トスカは、ソニア・ヨンチェヴァというブルガリア生まれの若手ソプラノが務めました。現在売り出し中というところでしょうか、今シーズンのライブ・ビューイングでは3作品に登場します。相手役のマリオ・カヴァラドッシはヴィットーリオ・グリゴーロ。これまでにも何度か紹介しましたが、美声のテノールです。それぞれ、2幕と3幕に有名なアリアがあり、いずれも泣かせます。

 ストーリーは別項に譲りますが、独唱、重唱、合唱、そして衣装に舞台セットと聴き所も見所も満載の上演でした。

 次回は3月3日から、ドニゼッティの《愛の妙薬》です。この作品もわかりやすいストーリーで、声の妙技が楽しめる喜劇。興味のある方は是非どうぞ。

名フィル定期(第454回) ストラディヴァリ

 今月の名フィル定期は1617日。名古屋の姉妹都市であるシドニーがテーマですが、シドニーゆかりのよい作曲や曲目がなかったようで、同じオーストラリア出身の作曲家の曲を含むプログラムでした。また、《ストラディヴァリシリーズ》として、ストラディヴァリ製作のヴァイオリンを使っているヴァイオリニストを招いての協奏曲が演奏されました。

 プログラムは
クーネ:エレヴェーター・ミュージック
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調
アッテルベリ:交響曲第6番ハ長調『ドル・シンフォニー』
ヴァイオリン独奏:アリーナ・ポゴストキーナ
指揮:広上淳一
でした。

 最初の曲は1997年初演、2番目の曲は1904年初演、3曲目は1928年初演と、20世紀をまたいで作られた曲が並んでいます。クラシック音楽の中心は18世紀後半から19世紀にかけてですから、やや個性的なプログラムです。クーネとアッテルベリは今回初めて知った名前です。録音もそれほど出ていないようですが、20世紀の作曲にしては非常に聴きやすい曲でした。

 オーストラリア南部のアデレード出身のクーネは、1956年生まれ。もちろん存命です。現代の曲らしく多くの打楽器が活躍する曲でした。指揮者の広上は若い頃に名フィルの指揮者を務めていたこともあり、なじみの間柄。独特の「フォーム」で、オケと指揮者が一緒になってノリノリの演奏でした。題名の「エレヴェーター」がどこで表現されているのか、よく分かりませんでしたが、時折刻まれるマンボのリズムが印象的で、メロディカルなところもあり何度聴いても飽きないのではないでしょうか。

 シベリウスは『フィンランディア』で有名な作曲家ですので、名前を聞いたことのある方も多いでしょう。今回演奏されたヴァイオリン協奏曲はシベリウスの作品の中でも演奏頻度の高い曲で、ヴァイオリン協奏曲の名曲として知られています。ソリストにとっては難曲でもあるようですが、名フィルの演奏会でもこれまでに数回聴いています。

 今回のソリストのポゴストキーナは1983年ロシア生まれ。ドイツ系なのでしょうか、その後一家でドイツに移住したそうです。現在、ストラディバリ製作の「サセルノ」と名付けられた楽器を貸与されて使用しています。期待されているのでしょう。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲はオケと独奏ヴァイオリンがメロディをやりとりしたり、受け渡しをしたりするようなつくりではなく、オケの上で独奏が一人で舞っているようなつくりです。それだけに、独奏者の技量が問われますし、逆にオケが出しゃばりすぎてはいけない。指揮者広上がオケの手綱をしっかりと引き絞って見事に操っていました。1曲目とは指揮のフォームが全く違いました。きっとソリストもやりやすかったことでしょう。

 今回はサイン会はなかったのですが、彼女のCDを買いました。たぶん、楽器は別のものだと思いますが、コンサートの時の同じ音です。抒情的で、どちらかと言えば悲しげな音です。芯があると言うよりも、音が何層にも重なっているような感じに聞こえます。いかにも木の板が振動していると感じさせるような響き。今回演奏されたシベリウスなど、ロマン派、特に北方の作曲家の曲にはぴったりの音色だと思います。

休憩後に演奏されたアッテルベリは、スウェーデン生まれの作曲家。日本ではあまり知られていない名前ですが、指揮者広上は得意としているようで、今回の交響曲第6番は特にお気に入りとか。前回聴いた『春の祭典』よりも10年ほど後に作られた曲ですが、むしろもっと前の時代につくられたかのような、なめらかな曲です。口ずさめるというほどのメロディはありませんが、印象的なフレーズが多く、落ち着いて聴いていられます。