名フィル定期(第376回)

12月定期の紹介は書き始めはしたものの、書き上げたのが一昨日、今月の定期の直前でした.

さて、今回は早く更新しようと思いますが、昨日の定期のテーマは「ニューヨーク」、要するにアメリカということですが、残念ながらアメリカ生まれの有名な作曲家というのは少なく、今回はアメリカ生まれの2人の作曲家と、アメリカで作曲された有名曲という組み合わせ.

アイヴィス:『カントリー・バンド』行進曲
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲ヘ調
ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』
指揮:シュテファン・シュテルス
ピアノ:ボリス・ギルトブルク

アイヴィスは1874年生まれの作曲家で、本職は保険会社の経営者のようで、作曲数は多くありません.近年取り上げられることが多いそうですが、日本ではまだまだマイナーな作曲家です.私もCDは1枚しかもっておらず、今回の曲は演奏会で初めて聴きました.

題名は「片田舎のバンド」ほどの意味で、アマチュアバンドが奏でる時折音を外したり(いきなり不協和音ではじまります)、フレーズが合わなかったりという様子を、民謡やマーチを引用しながら描いています.小編成の楽しい曲でした.演奏中にコンサートマスターなど笑顔が見えましたが、オケ全体がいかにも楽しんでいるという雰囲気で、アットホームな感じの好演でした.

モーツァルトに「音楽の冗談」という不協和音を連発したりする曲がありますが、よく似た発想かもしれません.

2曲目の作曲者ガーシュウィンは「ラプソディー・イン・ブルー」が有名です.ドラマ「のだめカンタービレ」のエンディングに使われていた曲です.
今回のピアノ協奏曲もジャズスタイルで、全体としてよく似たテイストを感じさせますが、「急−緩−急」の3楽章構成、第1楽章はソナタ形式をとり、しっかりとした「協奏曲」です.

指揮者のシュテルスはハンガリー生まれでオーストリアやドイツで活躍している指揮者のようですが、ジャズっぽい雰囲気をうまくつくっていたような気がします.ピアニストはモスクワ生まれの26歳、舞台への出入りなど生真面目そうな感じでしたが、演奏はのびのびとしていて「ガーシュウィンらしさ」が出ていたと思います.アンコールは同時代で互いに影響し合ったとされるラヴェルのラ・ヴァルス.オケの編曲版は聴いたことがあるのですが、ピアノ原曲ははじめで、新鮮でした.

さて、メインの『新世界から』は名曲中の名曲、有名すぎて、かえって生で聴く機会はほとんどありませんでした(たぶん2回目?).ドヴォルザークがニューヨークの音楽学校の校長として赴任していたときに作られた曲で、第2楽章の主旋律は『家路』のメロディーとしてあまりにも有名です.

私がよく聴いたCDは、クーベリックというチェコの往年の名指揮者によるベルリン・フィルとの演奏.彫りが深く、個々の楽器の主張がハッキリとしていて、全体として明るい音色が特徴.これに対して、今回の演奏は管楽器はハッキリときこえるのですが、全体にしっとりとして、非常になめらかな音楽、すごく落ち着いて聴ける演奏でした.

今回の指揮者シュテルスは日本のオケを初めて振ったようなのですが、ドイツでは決して一流とはいえないオケや歌劇場をトップレベルに引き上げた実績を持つようで、いわば名伯楽.どんなリハーサルをするのか一度観てみたい気がします.

さて、来年度の定期演奏会のプログラムが発表されています.テーマはなんと「愛と死」.芸術の究極のテーマのような気がしますが、プログラムもなかなか凝っていて非常に楽しみです.興味のある方は
名フィルのHP(ここ)をご覧ください.