ベルリン・フィル八重奏団:シューベルト八重奏曲

先週末は土曜日に名フィル定期で世界一のホルンを聴き、日曜日には世界一のオーケストラのアンサンブルを堪能しました。

岐阜のサラマンカホールでベルリン・フィル八重奏団のコンサートで
リヒャルト・シュトラウス(ハーゼンエール編曲):もう1人のティル・オイレンシュピーゲル
モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調
シューベルト:八重奏曲ヘ長調
を聴きました。

サラマンカホールは岐阜県庁の近くにあるコンサート専用ホール。立派なパイプオルガンがあり、豪華なシャンデリアも印象的です。内装はすべて木、それほど大きくありませんが、その分ステージも低く、アットホームな雰囲気のいいホールです。数は多くないと思いますが、有名な演奏家を招いてコンサートが開かれています。近くの方は是非行かれるといいと思います。

さて、今回聴いたアンサンブルはその名の通り、世界一のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)のメンバーで構成されていて、ベルリン・フィルのメンバーによるアンサンブルとしては最も歴史があるとか。もともと今回演奏されたシューベルトの八重奏曲を演奏するために結成されたそうで、まさに十八番の一曲を聴くことができました。

八重奏曲の編成は、1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルンがいずれも1人ずつ。ミニ・オーケストラのような編成で、当時の室内楽曲の流行にしたがった6楽章構成ですが、約1時間という大曲、交響曲並みです。演奏はとにかくすばらしく、何かコメントするのも失礼なくらいですが、特に2楽章の美しさに聴き惚れ、6楽章の迫力には圧倒されました。

2楽章は冒頭のクラリネットのメロディを変奏曲風に他の楽器が引き継いでいくのですが、まるで1人で演奏しているかのように雰囲気を維持しならの流麗な音楽。6楽章は冒頭にゆっくりしたテンポの序奏がつくのですが、すばらしい緊張感で会場を圧し、そのあとのアレグロテンポの部分は演奏者の気迫、音楽への情熱のほとばしりのようなものを感じました。

このような曲はもともとは娯楽的な要素の強く、サロンで食事やおしゃべりを楽しむためのBGMのような位置づけで作曲されています。この八重奏曲の作曲のいきさつは詳しく知りませんが、そんなに外れてはいないと思います。しかし、そんな軽い曲であっても真摯に向かい合うことによって高い精神性を持った演奏ができることを改めて感じました。

ところで、今回のメンバーはベルリン・フィルの首席奏者がほとんどですが、1stヴァイオリンはベルリン・フィルの第1コンサートマスターである樫本大進。ご存じない方も多いでしょうが世界一のオーケストラのリーダーが日本人です。日本人のレベルは世界屈指。昨日発表されたアメリカ・グラミー賞でもヴァイオリニスト・五島みどりの参加したアルバムが受賞しています。

名フィル定期(第409回)

今月の名フィル定期は先週の金曜日、土曜日。
『土ーー東欧の自然/北欧の田園』
と題して、名フィル正指揮者円光寺雅彦の指揮で
ドヴォルザーク:序曲『自然の中で』
リヒャルト・シュトラウス:ホルン協奏曲第2番 変ホ長調
ニールセン:交響曲第3番 ニ短調 作品27 『広がりの交響曲』
ホルン独奏:ラデク・バボラーク
3曲目でソプラノ独唱:金原聡子、バリトン:能勢健司

円光寺さんの指揮はいつも音が暖かくて優しい。この日のコンサートでもホッとした気分にさせてくれる名演でした。棒の振りは決してかっこ良くはなく、誰でもマネできそうで、やや朴訥とした感じです。しかし、紡ぎ出される音はキメが細かく、しかも目がしっかりと詰まっています。そして、そっと包み込んでくれるような、いつまでも浸っていたいと感じさせてくれる響きです。

円光寺は名フィルのポストについて3年、だいぶなじんできた感じがします。音色は一朝一夕で作れるものではありません。できるだけ長く関係を保っていけると、いい『オケの音』ができると思います。


さて、ドヴォルザークは交響曲第9番『新世界から』、あの『家路』の曲です。音楽史上屈指のメロディーメーカーだと思っています。今回の序曲『自然の中で』はタイトルのように静かな森の中にいるような気分を味わせてくれる様々なメロディーにあふれています。特に冒頭は森の夜明け、窓を開けると鳥の声がいろいろ聞こえてくるようで、みごとです。

この「序曲」というのは、オペラの冒頭に演奏される序曲ではなく、演奏会用序曲といわれるジャンルの曲。あるテーマを立てて、その印象やストーリーを音楽で表現しようとした曲です。チャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」などが有名です。

3曲目のニールセンはデンマークの作曲家。同じ北欧、フィンランドのシベリウスと同い年で、1865年生まれ。交響曲が有名な作曲家ですが、日本はもちろんヨーロッパでもまだそれほど評価は高くないようです。確かにCDで聴いても、今ひとつ入っていけないというか、前後の時代のドイツやフランスの作曲家の曲と比べると、やや漠然とした雰囲気があって、私にとっては好きになるとしてももう少し時間がかかるかなと思っていました。

ところが、生で聴いてみると素晴らしい曲でした。特に歌、と言っても母音唱法
=ヴォッカリースが入る第2楽章は秀逸。おそらく管弦楽法としてはそれほど複雑ではないと思いますが、詩、それも人生の悲しさや厳しさを語るかのような朗読、あるいは群読を聞いているような前半から、後半は転調して雰囲気は一変。伸びやかなハーモニーに載せて遠くから響くヴォッカリースはまるで傷ついた心をいたわってくれているかのようでした。2人の歌手はホールのステージ後方(芸文のコンサートホールをご存じの方はわかると思いますが、オルガンの椅子の横)で歌われ、演出効果も満点。円光寺・名フィルの演奏もさることながら、これは、今後も聴きこんでみるか、と思っております(*^^)v また、第1、第4楽章も交響曲らしく、金管が鳴り、木管が奏で、弦が響き、「オケ」が伸びやかに歌い上げ、別名「ニールセンの田園交響曲」と呼ばれる所以です。

来シーズンではニールセンの交響曲第1番が取り上げられます。『ちょっとマイナーな」ではなく、本格的な交響曲作曲家の作品としてしっかりと予習しておきたいと思います。


さて、この日の主役はホルンです。ラデク・バボラークは元ベルリン・フィル首席奏者。おそらく現役では世界一のホルン奏者です。昨年、NHKの「らららクラシック」にも出演されていました。名フィルもこんな人が来るんです!

私の席からはホルンのベルが反対を向いていたためか、決して大きな音は聴こえませんでしたが、柔らかくてビロードのようなツヤのある音色。息の長い、まるでブレスをせずに歌っているかと思わせる流れるようなメロディー。細かい動きのところは、ボールが弾けながら転がっているかのようでした。あんなのを生で聴けるとは
😃  わずか20分足らずの曲、短すぎました(; ;)

リヒャルト・シュトラウスは今年が生誕150年、昨年が余りにビック・イヤーだったため目立たないのですが、個人的には好きな作曲家で、楽しみです。

アンコールの曲は聴いたことのない曲でしたが、倍音だけで演奏、超絶技巧に圧倒されました。拍手が鳴り止まず、急遽追加、指揮者も一緒に出てきてホルン協奏曲の最後の部分を聴かせてくれました。いつになく高校生など若いお客さんが多かったのですが、お目当ての音色とテクニックを堪能できたのではないでしょうか。

来月は常任指揮者M・ブラビンスがブルックナーを振ります。

犬山城

お正月に犬山城へ行きました。近すぎて今まで行くことができなかったのですが、念願が叶いました。

望楼型・三層四階建ての天守が国宝。天守が国宝である4つのお城の1つ。さらに、最近まで「個人所有」という非常に珍しいお城です。ちょうど年末から漆喰と高欄の工事を始めたようで、ご覧のように一部に足場が組んであり、最上階の廻縁も半分(木曽川側)が立ち入り禁止でした。
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犬山城は戦国時代に織田家の城として造られ、その後江戸時代には尾張徳川家の付け家老(幕府から派遣された家老)である成瀬正成が城主となりました。その後、一貫して成瀬家の居城として受け継がれて、明治維新を迎えます。江戸期、一国一城令の例外です。いったん愛知県の管理下に置かれますが、戦後再び成瀬家に譲渡されたそうで、現在は「犬山城白帝文庫」の所有、つまり財団法人化され、犬山市が管理しているそうです。さすがにこれだけの「国宝」は個人には世話できませんね。

青空によく映えて、上々のお城日和でした。

MET:ファルスタッフ

連休は終わりましたが、現在、ミッドランドスクエアシネマでMETライブビューイング:ヴェルディ作曲・歌劇《ファルスタッフ:Falstaff》が上演中です。現地での上演は昨年12月14日、ヴェルディ生誕200年の最後を飾るにふさわしい、素晴らしい舞台でした。

《ファルスタッフ》はヴェルディ最後のオペラ。約30作のオペラを書いているヴェルディも、そのほとんどが悲劇。喜劇は若い頃に1つ作って大失敗したのに懲りたのか、その後は全く手を染めず、最後になって生涯の最高傑作とも言えるオペラを喜劇として書き上げました。初演は1893年、聴いてみれば誰しもが感じると思いますが、80歳とは思えないエネルギッシュで躍動感のある音楽。作品の順に聴いていくとわかるのですが、《ファルスタッフ》の前に作っている《オテロ》(1887年初演、73歳)で到達したスタイルをさらに進めて、新たな峰を作り上げた発想の柔軟性と創作意欲にも脱帽です。

原作はシェークスピアの『ヘンリー4世』と『ウィンザーの陽気な女房たち』。残念ながら読んでいないため、違いを説明できませんが、ファルスタッフ、またはフォルスタッフは両方に登場する大兵肥満の老騎士。オペラでは大酒飲みで欲深く色好み、自惚れも人一倍ですが、どこな憎めないキャラクターとして描かれています。原作では「名誉だと? そんなもので腹がふくれるか?」というセリフなどが有名なようですが、このセリフを含めて幾つかはオペラでも生かされているようです。

主役のファルスタッフはバリトン(またはバス)で、アンブロージュ・マエストリ。素でファルスタッフの容姿という希有(?)な体格と豊かな声量を生かして、現代最高のファルスタッフと評価されています。

歌は、まるで戯曲の台詞を話すがごとく歌われているため、初めての方にはやや聴きづらいところもあるかもしれませんが、ストーリーはちょっとシニカルなところがありながらも、人間賛歌というか、おおらかな笑いに満ちたオペラです。