ロイヤルオペラ・ライブビューイング《ドン・ジョヴァンニ》、《ドン・パスクワーレ》

 以前(「英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシリーズ」)にも紹介しましたロンドンにあるロイヤルオペラのライブビューイングの19/20シーズンが年明けから始まりました(Webサイトはhttp://tohotowa.co.jp/roh/)。20年になってから19シーズンというのも変ですが、現地では10月くらいにシーズンが始まっており、ライブビューイングも現地では上映済み。翻訳や映画館の手配の問題でしょうか、日本では年明けの
  3日からが
   モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》
  10日からが
   ドニゼッティ:歌劇《ドン・パスクワーレ》
でした。

 METとはソリストや演出の雰囲気など、うまくいえませんが何かが違います。モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》はモーツァルトのオペラの中でもとりわけ有名な作品です。村上春樹の『騎士団長殺し』を読んだ方はわかるでしょう。タイトルはもちろん、物語全体を貫く重要なモチーフとなっているオペラです。正直言って、オペラの筋を知らないとあの小説は全くおもしろくないでしょう。
ドニゼッティの《ドン・パスクワーレ》は上演頻度はそれほど高くはないようです。いずれもメロドラマ、あるいは悲劇ではなく、一応喜劇に分類されます。ただし、喜劇というにはややシリアスなストーリーです。

 《ドン・ジョヴァンニ》のストーリーはここを参考にしてください。出演者は初めて聴く歌手ばかりですが、
   ドン・ジョヴァンニ:アーウィン・シュロット
   レポレッロ:ロベルト・タリアヴィーニ
   ドンナ・アンナ:マリン・ビストローム
   ドン・オッターヴィオ:ダニエル・べーレ
   ドンナ・エルヴィーラ:ミルト・パパタナシュ
   チェルリーナ:ルイーズ・オールダー
   マゼット:レオン・コザヴィッチ
   騎士団長:ペトロス・マゴウラス
   指揮:ハルトムート・ヘンフェン
でした。
 舞台上に2階建ての屋敷様の簡単なセットがあり、回り舞台の上で回転し4面が異なった建物として利用されます。場面ごとに建物が変化するという趣向です。しかし、歌手たちは内部を移動し、それによって心情の変化や葛藤がある様子を示していたようです。プレーボーイのふしだらな生活を描くだけではなく、女性の内面や葛藤も一緒に描こうとするもので、これまでに観てきたどの演出とも異なるかなり意欲的な演出でした。
歌手たちも皆すばらしい声で、聴き応え十分でした。

 ドニゼッティは19世紀前半にイタリアとフランスで活躍したオペラ作曲家です。《愛の妙薬》などが有名で、《ランメルモールのルチア》や《連隊の娘》などもよく知られています。今回上映された《ドン・パスクワーレ》は晩年にパリで上演するために書かれた作品で、音楽的には非常に充実した聴き応えのある作品です。
 出演者は
   資産家ドン・パスクワーレ:ブリン・ターフェル
   パスクワーレの甥・エルネスト:イオアン・ホテア
   エルネストの恋人・ノリーナ:オルガ・ペレチャッコ
   パスクワーレの主治医でエルネストの親友・マラテスタ:マルクス・ヴェルバ
   指揮:エヴェリーノ・ピド
で、ストーリーを簡単に紹介します。

 舞台はローマ、もともとの時代設定は19世紀でしょうが、今回は現代に置き換えられていました。
 資産家のドン・パスクワーレは独身で、財産を甥のエルネストに譲ろうとしています。ただし、エルネストがパスクワーレの決めた相手と結婚することが条件。エルネストは恋人であるノリーナとの結婚を望んだため、パスクワーレはエルネストを追い出して自分が結婚することにします。医師のマラテスタが花嫁候補として自分の妹・ソフローニャを紹介します。パスクワーレはしとやかなソフローニャが気に入り、結婚証明書に署名します。ところが、ソフローニャは、実はノリーナで、結婚したとたんにパスクワーレをいたぶり、散財を重ねます。パスクワーレが離婚すると行っても、適当にあしらって外出します。このとき、ノリーナはわざと別の男性との逢い引きの約束をした手紙を落とします。パスクワーレはこの手紙を読んで、不貞の現場を押さえようとしますが、ノリーナたちの策略。離婚したいパスクワーレは、ノリーナをエルネストの妻として家に入れるからソフローニャにに出て行けといいます。ここで、ノリーナの正体が明かされ、パスクワーレは一杯食わされたと知ります。最後に、ノリーナが「この物語の教訓は老人が若い妻を迎えるな。災いと苦難のもと。もっと寛大になれ。」と歌って終わります。

 主役のパスクワーレを歌ったターフェルはこれまでにMETなどでも聴いたことがありましたが、コメディの役を聴いたのは初めて。初めて取り組んだ役とのことでしたがなかなかの役者ぶり。しばらくは重要なレパートリーとしていくことのことでした。また、ノリーナ役のペレチャッコは透き通るような歌声で、聴き惚れました。

 ロイヤル・オペラのライブビューイングはシーズンでオペラ6作品とバレエ6作品の合計12作品が上映されます。ロイヤルオペラハウスはオペラはもちろん、世界三大バレエカンパニーにも数えられるほどバレエが有名です。本場の舞台を間近でみると迫力が違います。興味がある方は是非。