名フィル定期(第370回)

先週末は名フィルの定期演奏会でした.

名フィルの定期演奏会は月1回ですが、同じプログラムで2日(金曜日と土曜日)続けて行われます.私は土曜日の定期会員ですが、金曜日に比べるとやや早めの時刻、午後4時開演ですので、この季節はまだ日のあるうちに演奏会が終わります.

さて、今回のテーマは「マドリード」、スペインにちなむ音楽が並び、指揮者は川瀬賢太郎(なんと26歳!!、かなりの注目株のようです).
プログラムは
マーラー:花の章
ボッケリーニ/ベリオ:『マドリードの夜の帰営ラッパ』の4つのオリジナル版
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ギターソロ:福田進一)
ファリャ:バレエ『三角帽子』全曲(メゾ・ソプラノ:藤井美雪)
でした.

冒頭のマーラーだけがマドリードとは特に関係のない曲です.多分指揮者の意図による選曲、今年がマーラーの生誕150年、名フィルの定期でも今年はいくつか交響曲が取り上げられるので、あやかっているのかもしれません.
もともと交響曲第1番の一部として創られたそうですが、現在では単独でたまに取り上げられる程度でしょう.メジャーではないのですが、後期のマーラーのような暗さというか陰鬱さがあまりなく、梅雨時に汗をかきながら会場に足を運んだ聴衆に準備された一服の清涼剤のようでした.

2曲目は、ボッケリーニというちょうどベートーヴェンと同じ時代に活躍した作曲家の室内楽曲を基に現代の作曲家が編曲したもの.ボッケリーニはイタリア人ですが、最後はマドリードに定住したそうです.初めて聴きましたが、題名に「夜の帰営」とあるように、華々しい起床ラッパではなく、落ち着いた雰囲気の曲.プログラムの楽曲解説にはややこしい説明がついていたのですが、BGMとしても聴けるような、なじみやすいメロディカルな曲です.次のアランフェスへの心の準備をさせてくれるに十分でした.
実は、5月のNHK交響楽団の定期演奏会のプログラムとしても取り上げられています(翌日に放送された「N響アワー」で紹介されました).偶然ですが、こういうことは結構あります.昨年のショスタコーヴィチの「祝典序曲」も直前?のN響で取り上げられていました.

この日のお目当ては3曲目.有名な曲ですが、生で聴く機会があるとは思ってもみなかったので、感激でした.
特に第2楽章はBGM的によく使われますので、どこかで耳にしているのではないでしょうか.ロドリーゴは1901年生まれで1999年になくなりました.文字通り現代音楽の作曲家ですが、のもがなしい様なメロディーは口ずさむこともできるので、すっーと耳に入ってきます.スペインを連想させてしまう独特の雰囲気と合わせて、何度聞いても飽きない名曲です.

協奏曲は、独奏楽器、この曲の場合はギターとオーケストラが対等の立場で音を紡ぎ合っていきます.ギターはやや音量に乏しい楽器なのでマイク(?)を使っていましたが、決して音楽を妨げるものではなく、うまくオケと渡り合ってくれました.

協奏曲の後はソリストのアンコールが楽しみなのですが、今回は「アルハンブラの想い出」(タレガ作曲).ギターの名曲中の名曲.もちろんスペインがらみ.

メインのファリャは19世紀後半から20世紀に活躍をしたスペインの作曲家.この「三角帽子」や「恋は魔術師」などが有名で、音の色彩感に富む、今にもスペインらしい曲を作っています.
吹奏楽用の編曲もあるので聴いたことのある方もいるかもしれません.

来月はサン・サーンスの交響曲第3番、パイプオルガン付の大曲です.

ショパンとシューマン

日曜日に同じく宗次ホールでのピアニスト・小山実稚恵のリサイタルに行ってきました.

何度も紹介しているNHKの『名曲探偵アマデウス』にもよく登場しています.日本を代表するピアニストで、ある雑誌で『日本人で最高のショパン弾きは?」というアンケートで見事第一位になっています.今回は彼女が年2回、12年間続けるという連続コンサートの第9回目、プログラムを全部あらかじめ発表されていて、今回は

シューベルト:ソナタ 第13番
ショパン:ソナタ 第2番 『葬送』
ブラームス:『ふたつのラプソディー』 第2曲
シューマン:ソナタ 第3番

と、ロマン派の大家が並ぶ、めったにない構成でした.

コンサートのはじめにソリスト自身が「4人のそれぞれ異なった響きを楽しんでください」とスピーチしていたのですが、堪能できました.

プログラムの軸はなんと言っても生誕200年に当たる2人、ショパンとシューマンです.『ピアノの詩人』と評されるショパンはいうまでもなく、シューマンも多くのピアノ曲を書いており、名曲が揃いです.

1曲目のシューベルトは、まさに『歌』.『歌曲王』といわれるにふさわしい、歌心にあふれ、草原でひなたぼっこして、いつの間にかうとうとしているかのような曲です.(本当にうとうとしてしまいました^_^;) 初めて聴いた曲なのですが、「シューベルト侮れず」、一度ピアノ曲をまとめて聴いてみようかと思っています.

ショパンの『葬送』は、第3楽章が有名な葬送行進曲、「あの」メロディーです(わかります? プロ野球の応援で、相手チームの打者が凡退したときなどによく吹いている人がいます). 彼は『詩人』なのですが、決してあらかじめ標題を決めて曲を作っていたわけではありません.そんな中にあって、この曲だけは『葬送』をテーマにして創ったようです.
第1楽章冒頭からいきなり胸ぐらをわしづかみにされるような、ショパンらしい激しさ.しかし、第3楽章の冒頭の「葬送行進曲」の部分が終わると、柔らかい光が差し込んでくるかのようなうっとりするメロディーです.いつまでも聴いていたいような気にさせてくれます.
演奏もすばらしかったです.先日の『名曲探偵アマデウス』でも小山実稚恵が弾いていました(
ここ

「ラプソディー」は日本語では「狂詩曲」.特に形式にとらわれず、自由な発想で作られる曲です.既成のメロディーをモチーフにすることも多いようで、ドラマ「のだめカンタービレ」のエンディングに使われた、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」などが有名です.ただ、ブラームスは、これまた彼らしい構築美というか、考えて考えてつくっているなというのがよくわかる曲でした.結果、全体がソナタ形式になっているという、ちょっと珍しい曲です.

最後のシューマンは、「ソナタ第3番」という題名ですが、元々は「管弦楽のない協奏曲」という題名で構想された曲.スケールが大きく、オーケストラが鳴っているかのように次々と響きや音量が変化する大曲です.今回演奏されたのは、当初出版されていた譜面を、作曲者自身が大幅に改訂した版.いや、すばらしい曲です.演奏もよかったのでしょうが、いろんな演奏を聴いてみようかと思っています.

シューマンは奥さんのクララが優れたピアニストであったためか、ピアノの名曲がたくさんあります.「子どもの情景」などはご存じの方も多いと思いますが、自分がピアノを弾けないのでこれまでそれほど聴いたことがなく、ちょっと後悔をしております.
ここでは紹介していないのですが、昨年11月に、内田光子のリサイタルを聴きに行って、シューマンの「幻想曲」を初めて聴いたのですが、これがまた引き込まれる曲(且つ演奏)でした.

小山実稚恵の次のコンサートは10月、ショパンの24のプレリュードです.

室内楽の楽しみ

先週の金曜日と日曜日の2回、名古屋・栄の宗次ホールで行われたコンサートに行きました.

金曜日は、『アンサンブル・フィービー」という名フィルのメンバーでつくっている室内楽アンサンブルのコンサートです.
プログラムは、

ドヴィエンヌ:ファゴット四重奏曲(ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)
ダマーズ:オーボエ、ホルン、ピアノのための三重奏曲
モーツァルト:ピアノ、クラリネット、ヴィオラのための三重奏曲
グリンカ:七重奏曲(オーボエ、ファゴット、ホルン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

の4曲です.

『フィービー』という名称は、このアンサンブルの中心になっている名フィルコンサート・マスターの『日比』さんの名前からとられています.アンサンブルのコンサートとしては4回目ですが、わたしが聴きにいくのは昨年に続いて2回目(
昨年のコンサートはここ

メジャーな作曲家がモーツァルトくらいですが、お目当ては1曲目と4曲目です.

ドヴィエンヌは1759年生まれで、ちょうどモーツァルトと同世代のフランスの作曲家.ファゴットを中心として、3つの弦楽器が脇を固める小編成の曲です.ファゴットがメインになる曲は珍しく、演奏される機会も殆どないので貴重な機会でした.
ファゴット・ソロは、名フィルの首席ファゴット奏者であるゲオルグ・シャシコフ.ブルガリア人です.日本のオケに在籍する外国人は珍しのですが、名フィルには現在彼を含めて2人います.
ゲオルグのファゴットは、音色が気に入っています.柔らかくて、つやつやした音.やや童顔の彼らしい響きです.

モーツァルトの三重奏も珍しい編成ですが、中心はクラリネット.モーツァルトの友人にシュタドラーというクラリネットの名手がいて、モーツァルトは彼のためにクラリネット協奏曲やクラリネット五重奏曲などいくつかの曲を書いています.
『どこかで聴いたような』と思わせる、いかにもモーツァルトらしい、明るく親しみやすいメロディカルな曲です.

グリンカは『ロシア音楽の父』といわれ、19世紀前半に活躍した作曲家.ちょうどチャイコフスキーと入れ違いくらいです.
弦楽器と管楽器の合奏曲はそんなに多くありませんが、室内楽の好きな者にとってはかなり魅力的なジャンルです.
この曲はベートーヴェンの七重奏曲を意識して創られたそうですが、クラリネットがオーボエに変わっているためやや響き違っていて、やっぱり「ロシア的?」.

実は、前回の名フィル定期の翌日にも名フィルメンバーの室内楽演奏会が多治見でありました.本来出演するはずのメンバーが急病などで交代していましたが、ベートーヴェンとモーツァルトのピアノと管楽器のための五重奏曲という、名曲二品.笠原中央公民館という600人くらいはいるホールなのですが、座席は舞台上にしつらえて、目の前で演奏を聴くという、いかにも室内楽らしい雰囲気でした.本当にリビングでCDを聴いているような気にさせてくれました.