名フィル定期(第392回)

先週土曜日の名フィル定期は、「ある東欧の物語」と題して、チェコにまつわる出来事に関する音楽で組まれたプログラムでした.

スメタナ:交響詩《ブラニーク》(連作交響詩《わが祖国》より第6曲)
モーツァルト:交響曲第38番《プラハ》
マルティヌー:リディツェ追悼
フサ:プラハ1968年のための音楽[管弦楽版]
指揮・下野竜也

前回が「協奏曲」特集だったのに対して、今回は純「オーケストラ曲」特集とでもいうのでしょうか、「管弦楽」の響きを堪能できました.

全体の「物語」は、宗教改革以前にチェコで起こった「フス戦争」から第2次大戦中のナチスによる虐殺事件、そして戦後1968年の「プラハの春」に対する抑圧事件と、やや暗い話が綴られています.考え方を変えると、さすがに「音楽の国・チェコ」だけあって、いろんなジャンルの音楽にあふれているともいえます.

さて、第1曲スメタナは、有名な「モルダウ」を含む6曲からなる曲集(連作交響詩《わが祖国》)の終曲です.それぞれが15分前後なので、なかなか生で全曲を聴ける機会はありません.私もこれまで1度だけです.
この曲は単純なメロディの賛美歌の主題を中心に、激しい闘いの様子が描かれています.「ブラニーク」とは、宗教改革前に、当時の腐敗したカトリック教会に対して反抗したフス戦争でのチェコ民衆の拠点になった地域の名前だそうです.

この曲や《モルダウ》を含めて、《わが祖国》はいい曲です.

曲の中に過去の有名なフレーズを使ったメロディを使う手法はよく用いられますが、この《ブラニーク》で使われた賛美歌のテーマは、最後のフサの曲の中でも使われています.プログラム全体としても非常にまとまりのある選曲です.

山中城

トップページに写真を載せたように、週末に静岡県三島市にある山中城址を観てきました.

本当はゴールデンウィークに熱海市にあるMOA美術館(尾形光琳の国宝「紅白梅図屏風」があります)へ行く予定だったのですが、大雨で中止したために目的の展覧会は終わってしまいました.完全に取りやめにしてしまうのも悔しいので、今回百名城巡りと抱き合わせにしました.

山中城の紹介は
ここあたりが簡単で分かりやすいと思います.戦国時代に北条氏の西の備えとして箱根に築かれたいくつかの山城の1つ.今は国道1号線が城跡中央を走っています.ちょうど旧東海道・旧箱根街道と一致している部分です.戦国時代にもこのルートが使われていたのかどうか定かではありませんが、当時の三島から小田原へ抜けるルートが旧東海道と同じであるとすると、まさに関所のように建っていたことになります.
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ちょうど城跡に沿うように旧箱根街道の石畳を整備されていて、ハイキングルートにもなっています.昔の道祖神らしきものも残っており、往時を偲ばせます.

さて、山中城は標高600メートル近くの尾根沿いに曲輪をつなげたような構造.曲輪とは土塁や石垣などで周囲を囲った内側をいい、写真のように、山中城の曲輪はきれいに整備されているのでひとつひとつ中に入ることができます.
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また、堀は障子堀といい、堀の中に障子の桟のような仕切りがつけてあって敵の侵入を防ぐ構造がつくられています.下の写真では堀が小さく見えますが、何人もの人十分に入れる深さ・幅があります.
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下の写真の右上が山中城本丸、堀の脇に見える細い通路のようなものが「犬走り」.
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城としては小規模ですが、何せ山城、全部を見て回ろうとするとハイキングのようなつもりで2時間くらいかかります.時間の都合で全部を見て回ることができませんでしたので、改めてゆっくりと訪れてみたいと思います.

名フィル定期(第391回)

月をまたいでしまったのですが、5月の定期の記録です.

今月のテーマは「ハーメルンの笛吹き」.ドイツの有名な伝説を基に作曲された
コリリアーノ:『ハーメルンの笛吹き』幻想曲(フルート協奏曲)
をメインにして、
リゲティ:コンチェルト・ロマネスク(ルーマニア協奏曲)
モーツァルト:オーボエ、クラリネット、ホルンとファゴットのための協奏交響曲
指揮は川瀬賢太郎(名フィル指揮者)
『ハーメルンの笛吹き』のフルート独奏:上野星矢
モーツァルトの独奏は、各楽器の名フィル首席奏者

多くの方にとって、「モーツァルト」という名前以外は???だと思います.私も、コリリアーノやリゲティという作曲家名は今回初めて知りました.リゲティは1923年生まれで2006年に亡くなっています.コリリアーノは1938年生まれでご存命です.つまり、1曲目と3曲目は典型的な現代音楽で、ある程度慣れていないとただ眠いだけになってしまいますが、映画音楽みたいなものと思って聴けば入っていけるかもしれません.

今回2曲目に演奏されたモーツァルトの協奏交響曲は私の大好きな曲で、無人島にCDを1枚だけ持ていけるといわれたらたぶんこれを選ぶでしょう.「交響曲」と付いていますが、堅苦しい曲ではなく、次々と出てくる流れるようなメロディーと各ソロ楽器を見事に使い分けた名曲.3楽章構成で30分強と、この時代の曲としてはやや長めですが、いつの間にか時間が過ぎていくような、自然に耳に入る音楽です.

ただ、「本当はモーツァルトが作った曲ではない」ともいわれているせいか、コンサートで取り上げられる機会はあまりなく、生で聴いたのは今回は2度目.誰がつくったにせよ、名曲に違いないのでもっと取り上げてほしいのですが・・・

さて、今回のソリストたちは名フィルの将来をしょって行くであろう若手の首席奏者たち.しかも、4人のうち2人が外国人という、日本のオケとしては非常に珍しいメンバー構成です.もちろん、同じオケのメンバー同士ということで、息のあったいい演奏でした.オケは現代風のモーツァルト演奏とでもいうのでしょうか、非常に素朴な音造り.今回の指揮者・川瀬は昨年から名フィルのポストに就いた20代の新鋭.巨匠たちのCDで聴くような艶やなめらかさはないのですが、音楽が若々しくはつらつとしています.

この日のメインである『ハーメルンの笛吹き』幻想曲は、フルートソロが伝説上の『笛吹き』に扮して、つまりそれらしい衣装を着て登場します.物語のうち、ねずみを操ったりする部分を大きく取り上げていて、いろんなやりとりを音楽で表現しています.曲の筋がわかっているほうがより楽しめるので、当日のプログラムには作曲者自らが記した解説(日本語訳)が掲載されていました.物語の最後でこどもたちが「笛吹き」と一緒に街からいなくなるわけですが、このこどもたちもエキストラでフルートを吹きながら舞台に登場.最後はソリストとともに客席後方のドアから出て行き、舞台上も音楽、照明ともにフェードアウトしていきます.ちょうどオペラを観ているかのような演出効果満点のおもしろい曲.

エキストラのこどもたちは村松楽器のフルート教室から選ばれたようですが、名フィルのフルートメンバーや指揮者つきっきりのリハーサルが何度もあったようで、うらやましいかぎり.