《ヴァチカン美術館~天国への入り口》

はじめて3Dの映画を見に行きました。現在、名駅・ささしまのTOHO109で上映されています。別に、栄・パルコ8階のセンチュリーシネマでは2D版が上映されているようです。(映画の公式HPはここです

これはヴァチカン美術館公認の映画を謳っていて、初めてヴァチカン宮殿に4K3Dのカメラを入れて撮影されたとのこと。美術館部分だけではなく、もちろんシスティーナ礼拝堂の内陣にも入って、ミケランジェロの描いた天井画(これです)や《最後の審判》(これです)も撮影されています。

4Kというだけあって、確かに精緻です。そして、アップでとらえているので、非常に見応えがありました。昨年末に徳島県鳴門市にある大塚国際美術館へ行って、これら壁画の実物大の陶板画を見てきました。迫力には圧倒されましたが、時間をかけてしっかり見るには大きすぎ、あるいは、絵のある位置が高すぎて疲れます。その点、今回の映画は、端から端までじっくり映してくれているわけではありませんでしたが、細部をうかがうことができました。

3Dの見所は多くの彫像群です。有名なミケランジェロの《ピエタ》(これです)は見応え十分でした。

ヴァチカン、つまりカトリックの総本山ですから、すべてがキリスト教に関わる美術品を並べていると何となく思っていたのですが、大違いでした。古代ローマ時代につくられ、土中に眠っていた彫像などがちょうどルネサンス期に大量に見つけられたようで、これらが大切に保管されているそうです。「目から鱗が落ちる」とはこのこと。ルネサンスの精神が最も保守的なところにまで入っていたとは。

METライブビューイング《ホフマン物語》

3月は時間と気持ちにわりとゆとりがあるのですが、こういうときにライブビューイングなど毎週やってくれるとじっくりと予習して鑑賞できるのですが、今月は2本だけ。

先週土曜日からは
オッフェンバック《ホフマン物語》
が上映されています。
オッフェンバックは前回の《メリー・ウィドウ》のようなオペレッタをたくさんつくった作曲家。一番有名な作品は《天国と地獄(原題の直訳は地獄のオルフェオ)》。日本では幕切れのカンカン踊りの音楽が運動会などでよく使われています。《ホフマン物語》はオッフェンバックが最後につくった作品で、唯一のオペラです。

このオペラはエルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン(Ernst Theodor Amadeus Hoffmann)という18世紀から19世紀にかけて活躍したドイツの作家が書いたいくつかの小説を基にしたオムニバス形式のオペラです。私が知るかぎり、オムニバス形式のオペラは他にありません。全3幕にプロローグとエピローグが付いたもので、正味の演奏時間は3時間弱。

具体的な小説の内容は知らないのですが、作家と同名の主人公ホフマンが酒場で恋人を待つ間、酔って話す3つの失恋話。3人の全くタイプの異なる女性が登場しますが、歌手に求められる声質や歌唱のタイプも異なるため、多くは3人のソプラノ歌手がそれぞれを演じます。
ストーリーはMETのオフィシャルWebサイトの日本語解説(http://www.metopera.org/metopera/season/synopsis/hoffmann?customid=822)を見て下さい。

今回ホフマンを歌ったのは、現在世界中から引っ張りだこになっているテノール:ヴィットーリオ・グリゴーロ。三大テノールとして有名になった故ルチアーノ・パヴァロッティの再来と言われています。イタリア人だから(?)か、飲んだくれてくだを巻く様子や、失恋して呆然とする様子など、演技がやや大げさに見えるところもありましたが、声の美しさ、声量は見事。きっと生で聴いたら魂を奪われてしまうかもしれません。4月に来日予定。来日記念CDも発売予定とのことです。YouTubeでも歌っています(ここ

3人の昔の恋人のうち、一人目(第1幕)のオリンピアは実は自動からくり人形。不思議な眼鏡をかけさせられて、人間と思い込まされた末の喜劇のような失恋劇。このソプラノ役は人形が歌うということもあり、超絶技巧を伴ったアリアがあります。今回はエリン・モーリーという若いアメリカ人の歌手がものの見事に歌手くれました。最後に、普通は出さないはずの超高音を奇声のように張り上げて大拍手でした。最後の音は、五線譜でト音記号の上第二線のC(ド)の上のA(ラ)フラットです。

最もたくさん歌うのが第2幕に出てくるアントニアという女性。劇中でも歌手という設定ですが、病のため歌うことを禁じられています。ヒドラ・ゲルツマーヴァという、ロシア人のソプラノ歌手でした。エキゾチックな雰囲気の美人で、声質も非常に美しく、清々しい歌い方でした。残念ながら、この日は体調不良か、一番いいアリアは夢の中で聴いてしまい、感想が書けません(-_-;)。彼女はライブビューイング初登場だと思うのですが、これからもたびたび出てくるような気がします。

このオペラには各幕に一人ずつ、合計3人の悪役が登場します。第1幕ではホフマンに怪しげな眼鏡を売りつけ、第二幕ではアントニアに病を押して歌うことを進め、あげくに死に至らしめてしまいます。この悪役は一人の歌手が演じることが多く、今回はトマス・ハンプソンという現代を代表するバリトン歌手が歌いました。これまではつややかな歌声で主役級のヒーロー役を歌っているのを聴いていたのですが、今回は低音のドスをきかせて、腹黒い雰囲気を醸して、いい悪役振りでした。

ホフマンが話す失恋話のなかで、必ず一緒に出てくるのが友人であるニクラウス。実はミューズの変身した姿で、舞台上では男性役ですが、女性、メゾ・ソプラノが演じます。《ホフマン物語》は5年前(2009-2010シーズン)にもライブビューイングで取り上げられていて、そのときと同じ歌手、ケイト・リンジーがニクラウスを歌いました。前回聞いて注目をしていたのですが、その後順調にキャリアを広げているようでうれしくなりました。決して大柄ではないのですが、ほぼ出ずっぱりでいくつものアリアを歌いきる体力は恐れ入ります。これからが、ますます楽しみです。

ライブビューイングのHPでは《ホフマン物語》のリハーサル映像が公開されています(
ここ)。

今月は、月末から来月にかけて、
チャイコフスキー《イオランタ》とバルトーク《青ひげ公の城》、ともに1時間半ほどの短いオペラのため2本立てです。