ボッティチェリ展、ダ・ヴィンチ展、カラヴァッジョ展

 3月最後の週末(27,28日)に欲張って東京へ行って3つも美術展を見て回りました。盛りだくさんで完全に消化不良でしたが、年末にイタリアで堪能したルネサンスを中心とした芸術に改めて触れることができました。

 今年は日本とイタリアの国交樹立150周年にあたるようで、記念した企画の一環のようです。『ボッティチェリ』展(Webはここ:http://botticelli.jp)は国内では初めてのボッティチェリの回顧展になるそうですが、東京都美術館で4月3日まで。『レオナルド・ダ・ヴィンチ~天才の挑戦』展(Webはここ:http://www.davinci2016.jp)は江戸東京博物館で4月10日まで。もうすぐ終わってしまいます。『カラヴァッジョ』展(Webはここ:http://caravaggio.jp)は国立西洋美術館で6月12日までです。いずれも他への巡回はないようです。興味のある方は是非Webサイトをご覧下さい。

 見応えがありましたが、今回最も見たかったのは『ダ・ヴィンチ』展の「糸巻きの聖母」と「鳥の飛翔に関する手稿」です。また、カラヴァッジョの明暗を強調した絵画も是非とも見たかったので非常に満足しました。

 ダ・ヴィンチは15世紀後半から16世紀に活動していますが、若い頃から鳥、あるいは空を飛ぶことにあこがれを持っていたようです。ウフィッツィ美術館で見た『受胎告知』の大天使ガブリエルの翼の表現など、観察力とあの時代にそれを正確に表現できる描写力はやはり天才です。今回は具体的にどうやって飛ぼうとしていたのか、彼のアイデアの一端を「手稿」、要するにメモ書きを通して感じました。とても「見た」とはいえませんが、買ってきた図録には展示された「手稿」全ての写真と訳が掲載されているので、時間のあるときにゆっくりと読み込みたいと思います。

 ダ・ヴィンチは自分のアイデアを元に実際に「飛行機」をつくり、弟子に飛ばせています。今でいえば「鳥人間コンテスト」に出場するようなものですが、見事に失敗。以後、2度と試みることはなかったそうです。

 『カラヴァッジョ』展では、同時代の風俗を描いた絵画を多く見ることができましたが、その中に、当時使われていた楽器が描かれています。こうしたことから当時非常にポピュラーであった「リュート」という楽器のコンサートが西洋美術館内でありました。

 リュートはギターとよく似ていますが、起源は中央アジアの「バルバッド」という楽器で、西に行ってヨーロッパに渡ってリュートに、東に行って中国や日本では「琵琶」として現在に至っています。いずれもネックのヘッドの部分が折れ曲がっているところが共通しています。ギターと違って複弦ですが、音量は小さめ、響きも弱く、可憐でしとやかな感じがします。琵琶はバチで弾きますが、リュートは指(ツメ?)で弾きます。シェークスピア劇のような中世を舞台にした映画を観たことのある方であれば、何となく分かってもらえるのではないかと思います。CDで聴くことはあっても、生で聴く機会はほとんどできないので貴重な体験でした。もっといろんな曲、演奏を聴いてみたいですね。

世界一の歌声:アンナ・ネトレプコ

 先週火曜日(3月15日)にソプラノ歌手のコンサートを聴きに行ってきました。私にとっては今年前半のハイライトです。これまでにもMETライブビューイングで何度か紹介していますが、現代最高のソプラノ歌手と言っていいでしょう、アンナ・ネトレプコと彼女の夫君でテノール歌手であるユーシフ・エイヴァゾフの2人のコンサートです。

 スピーカーを通してしか聴いたことのない世界一の歌声を生で聴けました。第一声を聴いたときには鳥肌が立ち、彼女独特のクリーミーな歌声にうっとりし、声量と迫力に圧倒されました。

プログラムは
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より
私は神の卑しい僕です”(ネトレプコ)
チレア:歌劇「アルルの女」より
ありふれた話(フェデリコの嘆き)”(エイヴァゾフ)
ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より
穏やかな夜~この恋を語るすべもなく”(ネトレプコ)
ああ、あなたこそ私の恋人~見よ、恐ろしい炎を”(エイヴァゾフ)
ヴェルディ:歌劇「アッティラ」序曲
ヴェルディ:歌劇「オテロ」より
二重唱”すでに夜も更けた”(ネトレプコ、エイヴァゾフ)
(休憩)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より
ある晴れた日に”(ネトレプコ)
マスネ:歌劇「ウェルテル」より
オシアンの詩”春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか”(エイヴァゾフ)
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より
亡くなった母を”(ネトレプコ)
5月のある晴れた日のように”(エイヴァゾフ)
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」間奏曲
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より
貴方のそばでは、僕の悩める魂も”(ネトレプコ、エイヴァゾフ)
指揮:ヤデル・ビニャミーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 オペラのアリアばかりのプログラムで、ちょうど演奏会形式での上演を模したもの。通常のオケのコンサートで歌手が歌う場合には指揮者の横にじっと立って歌うのですが、今回は舞台上を動き回り、オペラでの演技さながらに、役になりきって持ち前の表現力を十分に見せてくれました。

 舞台上での存在感やふるまい、ピアニッシモであっても、後ろを向いていても十分にホール全体に響く声、曲によって声質や表情を使い分け、何をとってもすばらしい。人気、実力ともに世界一であることを見せつけられました。

 バックにオケが鳴っているので、音量だけで勝負すれば人の声の方が必ず負けてしまいます。しかし、聞こえるかどうかは音量だけの問題ではなく、倍音をどれだけ鳴らすかによって決まります(詳細はまた別の機会に)。したがって、ピアニッシモの声であってもオケの音に打ち勝って十分に聴かせることができます。

 今回の公演は、3月いっぱいかけてのアジア・ツアーの一環。日本では名古屋で1回やったあと東京で2回やるだけ。プログラムはほぼ同様のようですが、最近の彼女のオペラでの役と同様に、ヴェルディなどなめらかで重たい声を要求する曲ばかりです。ネトレプコは、若い頃は軽やかに高音を操るような曲を歌っていましたが、年齢とともに少しずつレパートリーを変えてきていています。同じ音域、彼女は「ソプラノ」ですが、歌い方や声質は作曲家や役柄によってかなり違いがあり、歌手ごとに得意不得意があります。ネトレプコは自分の声質の変化と役柄をうまくあわせて、常に自分に合ったレパートリーを採り上げてキャリアを築いているような気がします。40代半ばですが、ちょうど円熟期に入ったところかな? 

終 演後にはサイン会も。非常に陽気でとても楽しそうなご夫婦です。中央の赤いドレスで手を振りかけてくれているのがアンナ・ネトレプコ、右側のすごいジャケットがユーシフ・エイヴァゾフです。

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METライブビューイング:《トゥーランドット》

 先週末からプッチーニの遺作《トゥーランドット》が上映されています。METの演出は1987年から使われている「これぞオペラ」という名舞台。豪華絢爛で、文字通り「非日常」を体験できます。

 音楽はどれも印象的で、一回聴くと頭に残る曲がたくさんあります。ずいぶん前ですが、トリノオリンピックのフィギュアスケートで優勝した荒川静香が使った「誰も寝てはならぬ」も《トゥーランドット》第3幕で歌われる名曲です。

 ライブビューイングで取り上げられるのは2度目、前回(ここに感想を書きました)も満席だったのですが、今回も満席。女性客が圧倒的でした。

 あらすじは以前書いたのでここ観て下さい。今回の注目はリューを歌ったアニータ・ハーディング。若手のホープです。上演後も最も拍手が大きかったでしょうか。透明感のあるソプラノで、悲恋の女性にぴったりです。アニータは以前に《カルメン》のミカエラ役を歌っていました。どちらも理想の女性です(^_^;) 

 次回と次々回とプッチーニが続き、4月始めに《マノン・レスコー》、ゴールデン・ウィーク明けに《蝶々夫人》(2009年に別のキャストで上映されました)。どちらもわかりやすいストーリーで、聴き所満載です。