名フィル定期(第369回)

今回は常任指揮者ティエリ−・フィッシャーが指揮をして、得意のショスタコーヴィチの交響曲を含むプログラムでした.

常任指揮者というのは、その名の通り『常任』しているはずなのですが、フィッシャーはヨーロッパに本拠を置いているため、1ヶ月ずつ3回、年間3ヶ月ほど名古屋にいて、定期演奏会を含めて3〜4回/1か月の演奏会を指揮することになっています.定期演奏会や自分が指揮する特別演奏会などの年間のプログラム選定にも責任を持っているようです.

今年度最初の定期登場は、自信の生まれ故郷であるスイス・バーゼルをテーマに
オネゲル:交響曲第4番『バーゼルの喜び』
ラヴェル:ピアノ協奏曲(ピアノ独奏:北村朋幹)
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
の3曲でした.

メインであるショスタコーヴィチ:交響曲第5番は、かつては「革命」の副題をつけて呼ばれていました.20世紀を代表する作曲家でありながら、旧ソ連の体制に翻弄された作曲家の渾身の名作です.作曲の経緯はいろいろあり、作曲者がどのような思いを込めているのか、いまだにいろんな議論が続いています.

とはいえ、ベートーヴェンの交響曲第5番『運命』と同様に、厳しい運命を受け入れながらも最後には輝かしく打ち勝っていくという、古典的なテーマを継承しています.聴いていていろんなことを考えさせてくれるとともに、やっぱり最後には元気をくれる名曲です.

この曲の第4楽章の冒頭は、むかし(?)、関西テレビがやっていた『部長刑事』(日曜の夜6時半?)のテーマソングでした.東海地方でもやっていたのでしょうか^_^;

フィッシャーが最初に名フィルを振ったのも同じショスタコーヴィチの交響曲第12番でした.得意な作曲家で、スコア(オーケストラ用の総譜のこと)を念入りに読み込んだと言うだけあって、一分の隙もなく構築されていて(管楽器にちょっとミスがありましたが)、ずっとこのまま音楽が続いてくれたら、と思いながら聴いていました.

1曲目のオネゲルの交響曲は初めて聴いた曲です.そもそもオネゲルという作曲家自体があまりポピュラーではありませんが、1892年フランス生まれ.この曲は1946年につくられているので現代音楽の範疇に入ります.確かにモーツァルトやベートーヴェンとは異質の響きがありますが、口ずさめるメロディーでつくられているので比較的入っていきやすい曲でした.

フィッシャーはこのオネゲルが得意らしく、隅々まで目が行き届いているなという演奏でした.

2曲目のピアノ協奏曲の作曲家であるラヴェルは『ボレロ』で有名ですが、1875年フランス生まれ.美術史に『印象派』というくくりがあるように、音楽史にも『印象派』と呼ばれるグループがあり(意味や時代は同じです)、ラヴェルはその中心的な作曲家です.

ラヴェルの音楽を一言で表すと『軽妙洒脱』ということでしょうか.今回のピアノ協奏曲はまさにこの一言がぴったりの音楽です.演奏した北村は春日井市出身でこの3月に名古屋の明和高校を卒業したばかり.昨年もフィッシャーの指揮でモーツァルトのピアノ協奏曲第9番を協演しています.現在は東京芸大の1年生.

3楽章構成ですが、各楽章毎に全く違った曲調で、オケとうまく対話しながら見事に表現していたと思います.ピアノパートは一見難解にきこえるのですが、曲の持っている雰囲気はモーツァルトと共通するところが多く、まだ若い彼には取っつきやすいのかもしれません.経験を積んで、数年後にはベートーヴェンやブラームス(非常に高い表現力が要求される曲です)を聴かせてほしいものです.

名フィルの定期演奏会は月1回、同じプルグラムで連続2日間公演です.S席は¥6,000とやや高いですが、D席は¥2,000、24歳以下であればY席が¥1,000(当日券のみ)です.来月は6月18,19日、ロドリーゴのアランフェス協奏曲(ギターの名曲)を中心にしたプログラムです.