テレビと映画でのオペラ鑑賞

今年の初めにも紹介した(ここここ)のですが、アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(The Metropolitan Opera)が歌劇場での上演の一部をライブで世界中に配信しています.日本では時差や日本語字幕をつけるなどの都合から約1ヶ月遅れにはなりますが、映画館で1週間上演されています.映像はもちろんハイビジョン、音声も5.1チャンネル.
東海地方では名古屋のミッドランドスクエアシネマだけですが、幕間の休憩時間などもそのままプログラム通りで、様々な角度のカメラアングルで撮影されていて歌劇場で生で見るよりも見応えがあるかもしれません.「Metライブビューイング」として配信されています.
HPはここです.

今シーズンは全部で12作、既にはじまっていて、先週、今年度第2作目となる、ムソルグスキー作曲『ボリス・ゴドゥノフ」を観に行ってきました.このオペラはストーリーなどもあまり知らずに、

という触れ込みに惹かれたのですが、いやさすがでした.
劇場だとどうしても遠目でしか観ることができないので、歌手の細かな表情までは(オペラグラスを使っても)なかなかわかりません.そこをアップでとらえているので、文字通り歌と演技の両方を楽しむことができます.また、衣装や小道具など、美術作品として鑑賞することもでき、楽しみが倍加するといってもいいかもしれません.

今回の『ボリス・ゴドゥノフ』、主人公であるロシア皇帝ボリス・ゴドゥノフと彼を取り巻く宮廷内の陰謀や民衆の蜂起など、かなり濃い話です.原作はプーシキンの同名の戯曲.HPのからあらすじを写すと

子供が居ない皇帝フョードル1世が没し、彼の弟でまだ幼いドミトリーが後継者と目された。しかし、そのドミトリーが変死。彼を暗殺した疑いのある摂政ボリス・ゴドゥノフがついに皇帝の位に就く。しかし僧院では青年グリゴリーが老僧ピーメンからボリスについての真相を聞き、秘かな野望を抱いていた。グリゴリーは死んだドミトリーになりすまし、反乱軍を組織する。一方ボリスは野望を達成し、将来は自分の子に帝位を継がせようとしているが、反面、良心の呵責に苛まされ、あげくは政治も行き詰まり国は荒廃していった。次第に乱心していくボリス。そしてグリゴリーの野心は・・・。 人間の真実を追求したムソルグスキーによるロシア・オペラの金字塔。まるでドストエフスキーの小説のような世界に、ゲルギエフが魂を吹き込む。
ゲルギエフは今回の指揮者、現在のロシアを代表する名指揮者です.

次回は12月はじめで、ドニゼッティという19世紀初めのイタリアの作曲家がつくった「ドン・パスクワーレ」.私も観たことはありませんが、肩を張らずに観ることのできる喜劇のようです.アンナ・ネトレプコという現代を代表するソプラノ歌手が出演します.

今シーズンの(私の)一番のおすすめは、来年4月に上演される
ドニゼッティ:ランメルモールのルチア
です.

さて、このMetライブビューイングは松竹が配信しているのですが、毎回NHKが提灯持ちのように、時期を合わせて前年あるいはそれ以前の話題作を「華麗なるメトロポリタンオペラ」と題して放送しています.今年も昨年の4作品を明日深夜(23日午前0時〜)から順に放送します.興味のある方はぜひ観てください.

実際にライブビューイングを観に行った感想をつけていますので、よかったら参考にしてください.
23日:プッチーニ「トスカ」(
ここ)、24日:ヴェルディ『アイーダ』、25日:プッチーニ『トゥーランドット』(ここここ)、26日:オッフェンバック「ホフマン物語」です.(NHKの番組詳細はここ) 

アイーダに出てくる『凱旋行進曲』はサッカーの応援などでよく使われています.トゥーランドットの中の『誰も寝てはならぬ』は荒川静香が踊った曲です.ホフマン物語の中の『ホフマンの舟歌』はたぶん誰しもが一度は聴いたことのある曲です.
あらすじは
メトロポリタン歌劇場の公式HP(日本語版)に掲載されていますので、事前に読んでおくと分かりやすいと思います.(昨シーズンの他の演目は年明けに放送されると思います)

名フィル定期(第374回)

昨日、名フィルの11月定期を聴きに行きました.週半ばから風邪気味で、やや重い頭を抱えながらのコンサートでした.

テーマは『サンクトペテルブルク』、プログラムは
ベートーヴェン:序曲『コリオラン』
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番『レニングラード』
指揮は井上道義

前回に続いて、序曲と交響曲.

ベートーヴェンの序曲は、オペラや演劇のために書かれた曲ではなく、『コリオラン』という紀元前に実在したローマの貴族を題材にして、上演とは無関係に単独で演奏するために作られた曲.ベートーヴェン以降の時代には盛んにつくられるようになるのですが、その先駆けです.

ローマから追放されたために、ローマに攻め入り殺されてしまう悲劇の英雄だそうです.演劇や小説の題材として盛んに取り上げられたそうで、ベートーヴェンもその一つに触発されたようです.力強さがある反面、死を暗示するように静かに終わります.

メインのショスタコーヴィチは、指揮者・井上が最も得意とする作曲家の一人.
第二次大戦中にナチスに侵略される中のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)で作曲された曲で、当時のソ連の人々を大いに励ましたそうです.軍隊の侵攻を思わせる行進曲や戦闘シーンを彷彿とさせるような激しい展開が随所に盛り込まれています.一方で、もの悲しいメロディーもあり、いろんなことを考えさせてくれる曲でした.
70分を超える大曲.特に第3,第4楽章は続けて演奏されるため、non-stopで約30分.ショスタコーヴィチはいろんなことを考えながら曲を作った作曲家なので、こちらもいろんなことを想像しようとするのですが、如何せん、難解で、ついていくのがやっとでした.

ベートーヴェンは比較的小編成で、舞台上の配置も「対向配置」という、1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが指揮者をはさんで向かい合うように並んでいました.当時はこのように並んだそうです.現在は指揮者の左から順に1stヴァイオリン、2ndヴァイオリンと並ぶことが普通です.井上は『オーケストラアンサンブル金沢』という、小規模のオーケストラの音楽監督を務めていて、ベートーヴェンなどはよく演奏しているのだと思いますが、たぶん、そこでも採用している配置なのでしょう.

これに対して、ショスタコーヴィチは舞台上が真っ黒に染まったかのような大編成.金管楽器はホルン、トランペット、トロンボーンが通常の倍の人数(それぞれ、4+4、3+3、3+3)で、ハープ2台にピアノまで必要です.オーケストラはこんな大きな音が出せるのか、という大音量で圧倒されました.やや頭が痛かったので、正直つらかったです.

来月は尾高忠明指揮のラフマニノフです.今年度の定期の中で私が最も注目するコンサート.17,18日です.興味のある方はぜひ聴きに行ってみてください.