ドン・ジョヴァンニ(METライヴビューイング)

やや時間がたってしまいましたが、名フィル定期の翌日に行ったMETのモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》の感想です.

非常に有名なオペラで、上演頻度も高く、多くのオペラをつくったモーツァルトの作品の中でも名作の1つです.
ライヴビューイングのHP(ここ)では
「天下のプレイボーイの没落を鮮やかに描くモーツァルトの大傑作」
と謳っています.
その通りで、ヨーロッパで昔から語り継がれる「ドン・ファン」という話をたたき台にして、ロレンツォ・ダ・ポンテというモーツァルトの同時代人が書いた台本を基に作曲されています.


あらすじは
18世紀、スペインのセヴィリャ。青年貴族のドン・ジョヴァンニは、2065人!をものにした史上最強のプレイボーイ。今宵も騎士長の娘ドンナ・アンナの寝室へ忍び込むが、アンナに騒がれ、父の騎士長と争う内に殺してしまう。豪胆な彼の次の獲物は、婚約者のいる村娘のツェルリーナ。一方ドン・ジョヴァンニに捨てられたドンナ・エルヴィーラは彼を諦めきれずに追いかけるが、天罰の下る時が近づいていた・・・。 」(HPより)

いろんな演出があり、時代背景などを抽象化していることも多いのですが、今回はその時代らしい衣装や舞台背景を使った「オペラらしい」演出でした.時折客席から笑いも出ていて、第一級の娯楽作品というところでしょうか?
HPには
「オペラ史上最高のアンチ・ヒーローにして疾走するフェロモン、ドン・ジョヴァンニ。あまたの女性を翻弄してきた彼が「愛」と「死」に弄ばれて破滅する、モーツァルト随一の劇的オペラが、
M.グランデージの卓越した演出でよみがえる。天下のプレイボーイを演じるのは、METの若きスター・バリトン、M.クヴィエチェン。イタリアの名花B.フリットリ、パワフルな歌姫M.レベッカらMETならではのより抜きのスターたちが、光と影のドラマを彩る。」
と紹介されています.

主演のクヴィエチェン(どこの国の人だったか?^_^;)は、ドン・ジョヴァンニ役にうってつけの顔立ちで、見事にはまっていました.この春に観に行った「ランメルモールのルチア」ではエンリーコというヒロインのを政争の道具として扱う兄役が今も目に焼き付いていますが、ややアウトロー的な雰囲気が漂っています.また、 ドンナ・エルヴィーラを演じたバルバラ・フリットリは、これまであまり聴く機会がなかったのですが、評判通り.ソプラノらしい透き通った声で、身ごなしも楚々として、現代のイタリアを代表するといわれるだけのことはあります.

ところで、このMETの企画は毎年秋から始まり翌年の春まで.昨年までは時期を合わせるようにNHKが過去のライヴビューイングの録画を放送していました.まるで提灯持ちですが、今年はありません.どうやらWOWOWにとられたようで、10月から月に2,3回のペースで、WOWOWライヴで過去の録画を放送しています.実は、これを観るために10月からWOWOWを契約しました(^^)
その代わりなのでしょうか、NHKは年末にミラノ・スカラ座の今シーズンのオープニングを上演録画を放送します.12月25日深夜からで、今回のMETと同じ《ドン・ジョヴァンニ》.もちろん演出も出演者も異なっていますが、違いを比較してみるには絶好の機会.その後、31日かけて過去の録画を放送する予定のようです.

名フィル定期(第385回)

先週末は、土曜日が名フィル定期、日曜日がMETライブ・ビューイングと盛りだくさんでしたが、先ずはコンサートから・・・

テーマは「愛の渇望」
プログラムは
ムソルグスキー:歌劇《ホヴァンシチナ》前奏曲
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
コダーイ:組曲《ハーリ・ヤーノシュ》
バルトーク:バレエ《中国の不思議な役人》組曲
ヴァイオリン独奏:アリーナ・イブラギモヴァ
指揮:ゴロー・ベルク

指揮者はドイツ人ですが、ソリストはロシア人、プログラムはロシア/旧ソ連、ハンガリーの作曲家による作品という組み合わせ.おもしろい組み合わせですが、オケのコンサートとしてはヴァイオリン協奏曲以外は非常に珍しい曲ばかりです.

3曲目の《ハーリ・ヤーノシュ》は一部が吹奏楽版に編曲されていて、コンクールの自由曲などで演奏されることもあるので知っている方もいるかもしれません.「どこの国の曲?」と思うくらい不思議な感じの曲です.農民のほら吹き話を元にした劇音楽のためにつくられた音楽をまとめ直したもの.

コダーイは1882年生まれ、1967年に亡くなっていますので、「現代音楽」に分類してもいいのですが、ハンガリーの主要民族であるマジャール人の民謡などを収集して、自らの作曲に生かしたりしていました.日本の民謡などにある5音音階(いわゆるヨナ抜き音階)ということもあり、何となく懐かしさのようなものを感じさせます.
管楽器が大活躍しますが、木管楽器のソロはすばらしく、聴き応えがありました.

6つの小曲からなる組曲ですが、このうちの2つに「ツィンバロン」という楽器が使われています.ハンガリーの民族楽器で協奏曲のように活躍します.今回のお目当てはこれでした(^_^)b ピアノのように音階順に金属の弦(太めの針金?)が張ってあり、これをばちで叩いて音を出します.ピアノの原型ともいわれていますが、国内で演奏できる人はほとんどいないようで、崎村潤子さんという方がソロを受け持っていました.
ややオケの元気がよすぎて、私の席では聴き取れないときもありましたが、生で聴けて感激しました.

以前ブダペストに行ったときに、入ったレストランでツィンバロンとヴァイオリンなどでやったライブを聴いたことがあるのですが、それ以来です.

この日の2曲目、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲は聴くにも弾くにも(たぶん)難曲(^_^;.しかし、始まったとたんソリストに会場中が引き込まれているようでした.髪を振り乱して激しく身体全体でひいているかと思えば、緩徐な部分では会場からは物音一つたたないくらいの集中力を発し、全体で40分近い曲ですが、あっという間に演奏が終わってしまった感じでした.
これまでいろんなソリストを聴いてきましたが、終了後の拍手は、今回が最も大きく、長かったのではないでしょうか.
ソリストは1985年生まれとのことで、終わってからパンフレットを見て(・o・)でした.

協奏曲のあとは、ソリストのアンコール、普通は一人で(オケの伴奏のない曲を)演奏します.これだけの大曲のあとではさすがにないだろうと思っていたら、なんとバッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタの一部を演奏してくれました.まるっきり正反対の雰囲気を持った曲ですが、演奏だけではなく、選曲のセンスもさすがです.

この日のメインはコダーイと同じハンガリーの作曲家バルトーク.年もほとんど同じですが、作風は全く異なります.今回の曲は本来は「パントマイム」のための付随音楽の一部を演奏会用の組曲にまとめたもの.奇想天外な物語で、組曲として聴くかぎり、話の筋を追いながら聴かなくても十分に楽しめそうにくまれています.
これも管楽器、特にクラリネットが大活躍します.見事なソロで、終了後は大きな拍手を受けていました.
元々のバレエ(パントマイム)は、今年のサイトウ・キネン・フェスティバルで上演されていて、少し前にNHKで放送されました.

次回の定期演奏会は12月の最初の週末で、ブルックナー:交響曲第7番.ブルックナーの曲の中では一番好きな曲です.

アンナ・ボレーナ(METライブビューイング)

これまでにも何度か紹介しましたニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(通称MET)の企画する《ライブビューイング》の2011-2012シーズンの日本上映が先週から始まりました.本来は文字通りの「ライブ」なのですが、ニューヨークとの時差や字幕、上映会場の都合などで、日本では1ヶ月遅れくらいで上映されます.その代わり1週間毎日あるので時間の都合はつけやすくて便利です.

歌劇場での実演をいろんなカメラアングルでハイヴィジョン撮影して、音声も5.1チャンネル.幕間には歌手のインタビューやバックステージ見学なども入っています.このあたりではミッドランドシネマで上映されます.

さて、今シーズンはメジャーなオペラが少ないような気がするのですが、逆にめったに出会えない作品を観ることができるので大いに楽しみです.日本での公式HPはここです(
METライブビューイング | 松竹).またニュースサイトもあります(METライブビューイング 最新情報).興味のある方は是非のぞいてください.

今シーズンオープニングは
ドニゼッティ:アンナ・ボレーナ
という作品です.ややマイナーな作品ですが、9月に始まったMETの今シーズンのオープニングを飾った演目で、タイトルロール(Title role:標題役、つまり主役)がアンナ・ネトレプコという、ロシア出身のソプラノ歌手.たぶん現在のソプラノ歌手の中では人気、実力(ついでに美貌も(^_^))トップでしょう.(パンフレットの表紙も彼女です↓)


これはアン・ブーリンという16世紀に実在したイギリス王妃をモデルにした悲劇.夫のヘンリー8世は6人の妻がいたそうで(もちろん同時に6人ではありません)、アン・ブーリンは不貞の濡れ衣を着せられて処刑されます.この実話を基に19世紀初頭に活躍したイタリアの作曲家ドニゼッティがオペラにしたもので、主役であるアンナ・ボレーナは最後には狂気に追い込まれた末に断頭台へ上ります.演じるソプラノ歌手には歌唱技術だけではなく、心理的な表現力も求められる難役で、上演機会も少ないそうです.

実は映像のディスク(DVDなど)もほとんどなく、日本語字幕附きは出ていません.したがってとりあえずCDだけ1組買って音楽をさらって行ったのですが、やっぱり「観ると聴くでは大違い」.圧倒されてしまいました.

アンナ・ネトレプコは声量のある歌手ですが、今回は恐ろしいほどの迫力というか、鬼気迫るものを感じました.不貞の相手とされるペルシ公を演じたテノール歌手(スティーブン・コステロ)の美声にも驚きました.声量もかなりのもので、上映していたホールのスピーカーがハレーションしているのではないかと思うくらいでした.まだ新人とされる歌手でしたが、今後が楽しみです.

今回の演出は、できるだけ16世紀の雰囲気が出るようにと、衣装などもしっかりと時代考証した上でつくったようです.本当に映画を観ているような気にもなりました.

今シーズン2作目は来週の土曜日(19日)から
モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ
です.最も有名なオペラの一つで、ヨーロッパの「ドン・ファン伝説」をもとにつくられた名作.一度聴いたら忘れられないメロディがたくさんあります.上演時間4時間弱(休憩1回)とやや長いですが、是非!!