名フィル定期(第396回)

先月の名フィル定期の記録をつけ忘れていました.いずれもマイナーな曲ばかりが並んだプログラムでしたが、非常にしっかりとしたいい演奏でした.さすがに詳細は忘れてしまったので、とばして、一昨日の今月の定期の記録です.

テーマは《ファウスト伝説》で、
リスト:メフィスト・ワルツ第1番(レーナウの《ファウスト》による2つのエピソードから第2番)
シューマン:チェロ協奏曲
ブルックナー:交響曲第2番
指揮:小泉和裕
チェロ独奏:ヨハネス・モーザー

テーマと直接かかわっているのは冒頭のリストのみ.「ファウスト」はゲーテの作品が有名ですが、同名の魔術師が実在したそうで、いろんな物語が作られているようです.

リストはゲーテの「ファウスト」を題材にして『ファウスト交響曲』という大曲もつくっていますが、今回演奏されたのは別の『ファウスト」作品にインスピレーションを得て作られた商品です.非常に色彩豊かなつくりで、ハープを含むオーケストラが自在に鳴っていて、演奏会の冒頭を飾るにふさわしい快演でした.この曲はピアノ用にも編曲されています.こっちの方が有名かもしれません.

2曲目のチェロ協奏曲は、ドヴォルザーク、ハイドンと並んで『3大チェロ協奏曲』と称されることもありますが、他の2曲と比べるとチェロの独奏に重きが置かれていて、やや規模が小さいように感じます(チェロ独奏は難しいと思いますが・・・).シューマン晩年(41歳)の作品で、心身ともに病んでいるときの作品.全体に陰鬱は表情をたたえています.ゲーテの『ファウスト』で描かれた、主人公ファウストの悩みを感じたような?気にもなりました.

今回の独奏者は30代前半ですが、すでに多くのCDもだしていて、世界的にかなり活躍しているようです.演奏はこってりと引き込むというよりは、ややさっぱりした感じでした.おきまりのアンコールはチェリストのバイブル、バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番から《アルマンド》.

メインのブルックナー、昨年末に交響曲第7番が取り上げられました(
ここ)が、名フィルは演奏頻度がやや高いようで、かつ毎回非常にいい演奏を聴かせてくれます.今回の第2番はブルックナーの初期の作品(彼は交響曲を11曲つくっています)で、演奏会で取り上げられる機会はほとんどないと思います.私も生で聴けるとは思ってもみなかったのですが、細部にわたって作り上げたすばらしい演奏でした.指揮者の手腕もさることながら、オケ全体のモチベーションも相当なものだったと思います.今回はコンサートマスターが他のオケからの客演で、どうまとめるのかと思ったのですが、全くの杞憂でした.

さて、今度の日曜日25日の早朝(6:00〜7:55)、NHK-BSプレミアムの「特選オーケストラライブ」という番組で名フィルの9月定期(
第394回、ここ)の様子が放映されます.定期演奏会は毎回、金曜と土曜の2日間、同じプログラムで行われます.私は毎回土曜日に行っていますが、この放送分は金曜日の演奏が収録されています.興味のある方はぜひご覧ください.

感激!!

一昨日、授業のあと東京まで行き
ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』(演奏会形式)
を聴きに行ってきました.
会場は有名なサントリー・ホール、私の愛するナタリー・デセイがこの公演だけのために来日、感激に酔いしれて来ました(^◇^).

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演奏:マリンスキー歌劇場管弦楽団
ルチア(ソプラノ):ナタリー・デセイ
エドガルド(テノール):エフゲニー・アキーモフ
エンリーコ(バリトン):ウラジスラフ・スリムスキー
ライモンド(バス):イリヤ・バンニク
アルトゥーロ(テノール):ディミトリー・ヴァロプエフ

合唱:新国立劇場合唱団
グラス・ハーモニカ:サッシャ・レッカート

ロシアの歌劇場ですが、指揮者のゲルギエフは現代を代表するマエストロ.この組み合わせで多数のCDもだし、大成功しています.

さて、デセイ/ルチアは既に紹介したことがありますが(
ここここ)、あの澄んだ歌声と声量、そして表現力、2年前にも生で聴いているのです(ここ)が、演奏会形式(オケもステージにのり、歌手は演技をせずに歌う)だからか、前回とは違って「声」を堪能することができました(。)カンド-.

このオペラの見せ場は第2幕『狂乱の場』.ここはフルートとのデュエットのように演奏されること一般的なのですが、本来作曲者はここで「グラス・ハーモニカ」という楽器を使いたかったようで、デセイもこの方がお気に入りなのか、CDで採用しています.今回はこのグラス・ハーモニカ奏者も一緒に来日.音色に圧倒されました.

グラス・ハーモニカの音がホール全体にさざ波のように広がり、その中をデセイの声が一筋の光のように突き抜けて響き、思わず涙が出てきました.

今回の公演に参加したソリストたちの多くは、既に出ているCD(
【ハイブリッド, SACD】 『ランメルモールのルチア』全曲 ゲルギエフ&マリンスキー劇場、デセイ、ベチャワ、他(2010 ステレオ)(2SACD)|HMV ONLINE)と一緒、今回のグラス・ハーモニカ奏者も共演しており、ロシアでの演奏会の様子(Lucia di Lammermoor)も公開されています.

終演後には、なんとデセイとゲルギエフのサイン会!きゃ(/\).目の前であえて、もう思い残すことはありません.

MET今シーズンのおすすめ

前回の続きで、12作品上映される今シーズンのMETライブの中からお勧めを紹介します.

それぞれのあらすじなどはHPを観ていただくことにして、
今年は3作品、一番のお勧めはオープニングを飾っているドニゼッティ『愛の妙薬』です.金曜日までで、もう観ていただくのは無理ですが、ストーリーのわかりやすさ、出演者の魅力、ともにオペラが初めてという方でも無理なく入っていけると思います.

『愛の妙薬』をのぞくと、来週土曜日からのヴェルディ『オテロ』です.シェークスピアの戯曲をもとにした作品で、同じ事件が現在に起こればワイド・ショーで大きく取り上げられそうなストーリーです.ヒロインを演じるルネ・フレミングが必聴.また指揮者のセミヨン・ビシュコフも何度か来日して成功している指揮者です.

年明け1月には毎週上映がありますが、なんと言っても有名なのはヴェルディ『アイーダ』.数年前にも同じ演出をライブビューイングで取り上げているのですが、ヴェルディ・イヤーということで再度企画したのでしょう.エジプトを舞台にした愛の悲劇、ちょうどミュージカルもやっているので比較してみるのもおもしろいと思います.METの『アイーダ』は絢爛豪華を絵に描いたような舞台装置が最大のウリでしょう.また、ヒロインであるアイーダには新人を抜擢するようです.ヒーローであるラダメス役はロベルト・アラーニャというテノールのトップ・スターです.指揮は現在METの中心になっているファイビオ・ルイージというイタリア人指揮者.

その後は同じくヴェルディ『リゴレット』、ヘンデル『ジュリアス・シーザー』あたりでしょうか.これらは時間のあるときに紹介します.

METライブビューリング:今シーズン開幕

過去のブログで何度も取り上げてきましたが、毎年秋から春にかけて、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場での上演をライブ録画して映画館で上演する企画:METライブニューリング(MET Live in High Difinition)が始まりました.日本では松竹が配給していて、名古屋ではミッドランドスクエアシネマで観ることができます.(HPはここ

今シーズンは全12作、来年がオペラの2大巨匠であるヴェルディとワーグナーのともに生誕200年に当たることから、両者、特にヴェルディの作品が多く取り上げられます.

第1作目が先週土曜日から今週金曜日まで、ドニゼッティ《愛の妙薬》です.前回紹介した《ルチア》と同じ作曲者の作品(初演は1832年)ですが、この作品はラブ・コメディ.割と気楽に観られます.

METの今シーズンのオープニングを飾った新演出.あらすじと観所・聴き所をライブビューイングのHPからコピーすると

19世紀のスペイン、バスク地方。農場主のお嬢様アディーナは、美人でチャーミングで知的と三拍子揃った皆のマドンナ。純情な青年ネモリーノは、『トリスタンとイゾルデ』を皆に読みきかせる彼女に想いを募らせる。きざな連隊隊長ベルコーレがアディーナに熱烈なアタックを開始したことを知ったネモリーノは、薬売りのドゥルカマーラから、これを飲めば相手も自分を恋するようになるという「愛の妙薬」を手に入れるが・・・。 「愛の妙薬」が取り持つ、インテリお嬢様と純情青年の恋のゆくえは?〈人知れぬ涙〉などの名アリアでも知られるドニゼッティの傑作ラブコメディが、A・ネトレプコ、M・ポレンザーニ、M・クヴィエチェンのゴールデン・トリオで登場!ヒット作を連発するB・シャーのおしゃれな舞台で、人気絶頂のスター・ソプラノ、ネトレプコのチャームが花開く!イタリアの名バリトン、A・マエストリのいかさま薬売りにも注目!

主役であるネモリーノを歌うポレンザーニは癖のないすっきりとした声で純朴な村の青年を演じ、ヒロイン・アディーナを歌うネトレプコは明るいというよりはややハスキー気味ですが落ち着いた歌声です.これが知的なお嬢様にぴったり.

このオペラの最大で最も有名なのはネモリーノが歌うアリア「人知れぬ涙」.
ここでライブが観られます.ポレンザーニの声の美しさと表現のすばらしさを感じてください.(会場からは拍手の嵐、アンコールしてくれなかったのが残念です)

オペラは常に同じ楽譜を使って演奏されるので、音楽はいつも一緒ですが、演出は劇場によって、あるいは公演によって異なります.現在のオペラは『演出の時代』といわれ、どんな舞台設定、演技かによって見方、聴き方がまるっきり違います.この《愛の妙薬》は、ややどたばたコメディっぽい演出もあり、それだけに楽しく観られるのですが、今回のMETの演出は非常にシリアスというか、奥行きのあるストーリーに仕上がっています.ハッピー・エンドであっても、そこに至る過程で登場人物たちにはいろんな悩みや葛藤があるはず.今回の上演はそこをしっかりと描いていて、非常に見応えがありました.