MET ライブビューイング《トゥーランドット》

  クラシック音楽、中でもオペラ(=歌劇)は敷居が高いと感じる人が多いようですが、いろんなところで耳にしています。また、生の上演は、そもそも機会が少ないですが、映像をそれなりの臨場感を持って鑑賞することはできます。同じように、最近では歌舞伎や、ポップスやロックのコンサートなどでも録画を映画館で鑑賞するスタイルが定着しているようです。定期的なイベントとしての嚆矢といってよいのが、ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場、通称METのライブビューイングです。日本では松竹が配給しています。

さて、今シーズン、2019ー2020シーズンのMETライブビューイングが先週から始まりました。今シーズンのスケジュールはここhttps://www.shochiku.co.jp/met/を見てください。ややマイナーな作品が多いのですが、プッチーニの3作品はいずれも名作です。

 オープニングは、そのプッチーニの遺作である《トゥーランドット》です。これまでにも何度か上映されています。あらすじはここを見ていただくとして、今回の配役は
   トゥーランドット:クリスティーン・ガーキー(ソプラノ)
   カラフ:ユシフ・エイヴァゾフ(テノール)
   リュー:エレオノーラ・ブラット(ソプラノ)
   ティムール:ジェイムズ・モリス(バスバリトン)
   指揮:ヤニック・ネゼ=セガン

 演出は、今年6月に亡くなったフランコ・ゼフィレッリ。1987年に新演出として上演された舞台で、名演出の誉れ高い、豪華絢爛な演出です。これぞ「オペラ」と言って良いでしょう。ゼフィレッリはビスコンティーの弟子で、映画監督としての代表作は『ロメオとジュリエット』でしょうか。

 主役はもちろんトゥーランドット姫ですが、物語を引っ張るのはカラフ。第3幕冒頭で歌われるカラフのアリア、「誰も寝てはならぬ」はトリノ五輪で荒川静香が使い、さらに開会式でパバロッティも歌ったことで有名になりました。平昌オリンピックでも宇野昌磨が使っています。みなさんもよくごぞんじでしょう。一度劇中での歌唱を聴いてみたいと思いませんか?

 今回カラフを歌ったユシフは歌手として知名度はまだまだですが、パートナーが現在世界一と言ってよいソプラノ歌手・アンナ・ネトレプコ。したがって、彼女の夫としての有名。 年前にネトレプコのリサイタル(ここです)を聴きに行きましたが、その時にも相手役として歌っていました。正直言って、奥さんの七光りで出してもらってる?という印象でしたが、今回の歌唱は見事でした。 これまでにMETで主役を歌ってきた数々の歌手たちにも十分に伍していると言ってよいのではないでしょうか。今後が楽しみです。

 オペラというと独唱者にう目が行きがちですが、このオペラの大きな魅力の一つは合唱です。METの合唱団のすばらしさもさることながら、民衆の声の迫力には圧倒されます。ライブビューイングを見て、是非とも生で聴いてみたいと感じなかった人はいなかったのではないでしょうか。

 主役であるトゥーランドット姫役はソプラノではありますが、中でもドラマティック・ソプラノと呼ばれる、力強い声質を求められる役です。歌っている時にはオケも大音量で鳴らしているため、並みの歌手では客席まで聴こえません。今回歌ったガーキーは、まだ若手ではありますが、しっかりとした声質で聴きごたえがありました。

 最後に、このオペラの役どころで最も共感を呼ぶのがリューでしょう。カラフを慕いながらも、女奴隷としてティムールに従っています。物語途中で自死しますが、いつ観ても泣けます。これは是非とも映像を見て感じてください。

 METの映像ではありませんが、ここhttps://m.youtube.com/watch?v=5vlgV3688q4で全曲を観ることができます。演出はやや前衛的です。

 次作は11月29日から、フランスの作曲家・マスネの《マノン》です。

はじめてのベルリン・フィル

 先週は週半ばにベルリン・フィルのコンサート、週末はMETライブビューリングに名フィル定期と、芸術の秋を満喫しました。

 Berliner Philharmoniker、日本語ではベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と訳されます。少しでもクラシック音楽、特にオーケストラの音楽に興味がある人になら説明するまでもないでしょう。世界に冠たるオーケストラです。数年に一度は来日していますが、名古屋に来るのは何年ぶりでしょうか? 今回はズービン・メータという、これまた現代を代表する巨匠を指揮者として、13日・水曜日の名古屋を皮切りに、10日間で全国で8公演の日本ツアーです。
 10月13日、愛知県芸術劇場・コンサートホールでプログラムは
   ブルックナー:交響曲第8番ハ短調
   指揮:ズービン・メータ
の1曲。(他の会場では、リヒャルト・シュトラウスとベートーヴェンのプログラムも演奏されるようです)

 80分余のじっくりと聴くべき大曲ですが、曲というよりも演奏に圧倒され、あっという間に終わりました。
この曲は学生時代に一度やったという思い入れもあり、大枚をはたきましたが、その価値は十分にありました。弦楽器、特に低音部の迫力は表現のしようがありません。腹にどーんと響いてくるような圧力を感じました。オケが鳴っているというよりも、舞台全体が1つになって鳴っているといえば分かるでしょうか。

 ブルックナーについてはここ(名フィル定期(第471回))を観てください。

 オケの音楽の特徴の1つは、弱音から強音までダイナミックスレンジの幅が大きいことです。しかし、どんな弱音も目の前で鳴っているかのようにしっかりときこえ、逆にどんな大きな音も決してハレーションすることなくここの楽器の音が聞き分けられる。ふしぎな響きでした。もちろん、音楽の表現力はすばらしく、オケ全体が1つの生き物のように自由自在に動き回っているかのようでした。CDや映像で見聞きするのとは全く違います。

 ベルリン・フィルのメンバーの演奏はこれまでにも何度か聴いています(名フィル第447回定期446回定期2016年バレンタイン・コンサート2014年ベルリン・フィル八重奏団名フィル第409回定期第402回定期)。もちろんどれもすばらしい演奏でしたが、その彼らがひとまとまりなってつくり出す音楽は想像がつきませんでした。一人一人の能力=音を生かしながら、全体が調和することによってより高い次元=音楽を実現するということでしょうか。

 指揮者のメータはインド出身の指揮者で、今年83歳。やや 脚がお悪いようで、舞台へは杖をついて入り、終始椅子に座っての指揮でした。しかし、全曲暗譜、テレビで何度か観ているとおりの指揮ぶりでした。終演後は万雷の拍手。オケが引き上げた後にも、メータが舞台へ。

 残念ながらやや空席もありました。今回聴きに行ったベルリン・フィルの他、ウィーン・フィルハーモニー、そしてオランダのロイヤル・コンセルトヘボウの3つのオケをもって、「世界三大オーケストラ」といいますが、実は1週間前にウィーン・フィルが、そして1週間後(20日)にロイヤル・コンセルトヘボウが名古屋に来ます。3週続けて聴きに行く方もいらっしゃるのでしょうか。いずれも高額。さすがに一回当たりのお客さんは少なくなります。

チャリティ・コンサート

 先週の水曜日(10月23日)に、名古屋銀行が主催するチャリティ・コンサートを聴きに行って来ました。
 毎年この時期に行われ、この数年毎年行っております。入場料が何と¥1,000という破格の値段でオーケストラの演奏が聴けます。毎年名フィルが、比較的若手の指揮者とソリストをそろえて演奏します。ほぼ満席で、プログラムは
  シューマン:歌劇『ジェノヴェーバ』序曲
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』
  シューマン:交響曲第3番『ライン』
  ピアノ独奏:グロリア・カンパネル
  指揮:川瀬賢太郎
でした。

 定期演奏会ほどのクオリティーは感じませんでしたが、ピアニストのカンパネラは長身でモデルのようなスタイル、正直言って引きつけられました。格好で演奏するわけではありませんが、やはり第一印象も大切です。彼女はすでに録音もあり、大学で教鞭も執っていることもあってか、演奏はなかなかに風格がありました。『皇帝』はという表題はベートーヴェンがつけたわけではありませんが、それまでのピアノ協奏曲にはないピアノのカデンツァから始まる冒頭をはじめ、その名にふさわしい名曲です。

 来年2月にも岡谷鋼機が主催するチャリティ・コンサートがあります。先々週末にオープンになりましたので、たぶんもう完売かな?