ライプツィヒ・ゲヴァントハウス

昨日、ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(Gewandhausorchester Leipzig)というオーケストラの演奏会を聴きに行きました.

その名の通り、旧東ドイツのザクセン州にあるライプツィヒにあるオケ.今年の春に聴いたドレスデンも同じ州にあります.ドレスデン国立歌劇場が宮廷劇場に期限を持つ最古のオケなら、このゲヴァントハウスは市民がつくった最古のオケ.250年を超える歴史を持っています.

昨日は音楽監督のリッカルド・シャイーの指揮で
メンデルスゾーン:交響曲第5番
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
の2曲でした.

どうして聴きに行ったかというと、このオケが今年生誕200年に当たるメンデルスゾーンが指揮者を務めていたオケだから.プログラムにもメンデルスゾーンの曲が入っているし、逃してはならじと予約しました.

期待に違わぬ名演.「一糸乱れぬ」とはこういうことを言うのか思うくらい、オケ全員が指揮者とも一体となっていました.
例えば名フィルの演奏を聴いていると、弦楽器の1パートはみんな同じ音を弾いているわけですが、いろんな音(音色?)の集まりだなという感じがどうしてもしますが、ゲヴァントハウスの演奏を聴いていると、1つのパートが本当に1個の楽器の音を聞いているような感じでした.これは木管楽器についても同じで、複数の楽器の組み合わせでできた音が、「組み合わせ」ではなく、あたかもそれで1つの楽器が鳴っているかのような見事な音作り.そして、ここから1種類の楽器が抜けても決して音色が突然変わるのではなく、うまくフェードがかかるように変わっていく様には、聴き惚れるしかありませんでした.

もっといろいろあるのですが、なかなか文章ではうまく表現できないのが残念です(+_;)

さて、「ゲヴァントハウス」というのはドイツ語で「織物会館」というような意味です.中世のギルド制によって力をつけた織物の商人・職人たちが見本市会場としてつくった建物を会場として活動するプロの音楽家の集団によるオーケストラ活動が起源.市民の援助による自主運営団体としては、世界最古の歴史を持っています.
1845年〜1847年にメンデルスゾーンがこのオケの「カペルマイスター(日本語では楽長と訳しますが、指揮者であり指導者であるというような位置づけ)」としてオケを指導しました.

今回の指揮は.現在のカペルマイスターであるイタリア人・リッカルド・シャイー、おひげを蓄えた、明るい感じの顔つきをした指揮者です.CDをほとんど持っていないので、どんな演奏家と不安と期待半々で望んだのですが、非常に明快・わかりやすい解釈で、すぐにその音楽に引き込まれてしまいました.ブルックナーは70分を超える大作なのですが、あっという間に過ぎてしまいました.

今回の2曲はなかなか言葉で説明するのが難しく、とにかく「一度聴いてみてください」としかえいえません.まあ、ブルックナーはどれもそうですが・・・^_^;

名フィル定期(第362回)

昨日は名フィルの10月定期、やや雨模様だったためか、インフルエンザに感染するのを恐れて人混みを避けたのか、お客さんの入りは今ひとつでした.
まあ、プログラムからして宜なるかなと言うところではありますが・・・(;O;)

リャードフ:交響詩『魔法にかけられた湖』
武満徹:ア・ストリング・アラウンド・オータム(A string around autumn)
エルガー:交響曲第2番変ホ長調
指揮は尾高忠明、2曲目にはヴィオラ独奏がついて、今井信子
でした.

9月のプログラムもそうですが、あまりにも意欲的というか、指揮者の個性を生かすことを最優先したような選曲.聴衆側としては驚くばかりですが、『はまった』時には大きな爽快感・満足感を得ることができます.今回の演奏会はその典型だったでしょうか.

最初の曲の作曲者リャードフは今回初めて聴いた作曲家です.19世紀後半から20世紀にかけて活躍したロシアの作曲家.
交響詩というのは、読んで字のごとく、音=オーケストラによって情景や物語を表現しようとした曲で、交響曲のように楽章に分かれていたりせず、1曲もそれほど長くありません(せいぜい20分くらい).

この曲は10分足らずで、妖しげな雰囲気の湖の様子を見事に描いています.深く霧がかかった湖面と思える様子や流れ込んでいる小川の脇のよどんだ様子が表現され、小魚が飛び跳ねているような響きがきこえ、湖面に張り出した木々から夜露がたれているかのような音がちりばめられています.もちろん演奏がよかったからこそ理解できたわけですが.
後半が大曲なので1曲目はやや手抜きがあるかと思ったのですが、しっかりと統率された見事な演奏でした.

2曲目は日本を代表する作曲家である武満が1989年に作った曲です.指揮者の尾高はこの曲のCDを出しており、また独奏者の今井はこの曲の初演を手がけていて、ヴィオラ奏者としても現代を代表する一人.

『秋』は作曲家・武満にとって重要なテーマだったらしく、秋をテーマにした曲をいくつか書いているようです.この曲は大岡信の
「沈め 詠うな ただ黙して 秋景色をたたむ 紐となれ」
という詩をもとにつくられたそうです.この詩の解釈自体が難しく、結局音楽も今ひとつよく理解できませんでした.ただ、決して「実りの秋」を描いているのではないようで、何となく暖かみはあるものの、全体としてやや寂しげな雰囲気の曲です.決してメロディカルではないのですが、それだけにうまく表現できることもあるのかもしれません.一人で『秋は夕暮れ いとおかし』とかみしめているような雰囲気?

さて、メインのエルガーはイギリスの作曲家で、ちょうどリャードフと同時代の人.『威風堂々』という曲はご存じでしょうか?
CMでもよく使われていますし、イギリスでは『第2の国歌』とも言われるほど親しまれているそうです.そして、指揮者・尾高はイギリスのオーケストラ(BBC・ウェールズ交響楽団)の指揮者も務めていて、このエルガーがもっとも得意.イギリスでも非常に高く評価されているそうです.

いや、さすがでした.(・0・)
指揮者のリーダーシップというものをこれほど感じたことはありませんでした.4楽章構成で1時間近い曲ですが、全体に漂う威厳というか、音楽の「張り」のようなものを終始維持しながら、音が受け継がれていました.
特別目立ったソロがあるとか、印象的なメロディーがあるというわけではなく、どちらかというと全体にべたっとして雰囲気の曲です.それだけに息も尽かせぬ緊張感を求められるのだと思いますが、明るく輝くような曲調と暗いかげりのある雰囲気とでうまくメリハリがきいていました.こういうところが指揮者の腕の見せ所なんでしょう.

次回11月定期では、有名なグリーグの「ペール・ギュント」が取り上げられます.

オペラのすすめ

何度かオペラについて書きました.その中でニューヨークのメトロポリタン歌劇場(通称”MET”)がやっている「ライブヴューイング」という企画を紹介しました.今年も来月から、アメリカではたぶん今日?から始まっています.
来年の5月くらいまでで、全部で9つの演目を、欧米ではほぼ生中継、日本では録画して日本語字幕をつけて1か月遅れくらいで上映します.松竹の企画ですが、名古屋ではミッドナイトシネマで、いずれも1週間ずつの上映です.案内はここ(
METライブビューイング | 松竹)です.(ここも参考にしてください

去年もそうだったのですが、NHKが提灯持ちのような番組をつくっています.今日から4日間、昨年の企画から4作品をハイヴィジョンで取り上げています.案内はここ(
特集番組, ほか)です.昨年は石坂浩二が司会をやっていたのですが、今年はなんにもなしで、いきなり始まりました.

今日はワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』という作品.オペラの中でも最も長い部類に入って、4時間以上かかります.そのうちの半分くらいが、主役であるトリスタンとイゾルデの2重唱で、はっきり言って飽きます.昨年も上映中に寝ました.今まさにやっているのですが、ちょっと息抜きです.

明日のプッチーニ『ラ・ボエーム』や明後日の『マノン・レスコー』は、正味2時間くらい、メロドラマ調なので取っつきやすいと思います.演劇などに興味のある方にもきっと楽しんでいただけると思います.

さて、先月の末と昨日、生のオペラを見に行ってきました.
昨年も行ったのです(
ここに感想を書きました)が、ボーデン市立歌劇場というオーストリアの劇場の引っ越し公演で、豊田のコンサートホールで、モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」というオペラです.
タイトルロール(オペラでは主人公の名前がそのまま題名になっていることが多く、title roleという言い方をよく使います)の不良騎士が次々と女性に声をかけ、あげくに地獄に堕ちるというストーリー.セルヴァンテスの「ドン・ファン」とは違いますので、念のため.
豊田のホールはオーケストラなどのコンサート用のホールで、オペラをやるためのホールではないので(つまりオケピットがない)、前の方の客席をなくして、そこにオケが座り、決して段差があるわけではないステージ上で演じるという形でした.
オケの演奏はいまいちでしたが、久々の生のオペラで、十分楽しむことができました.
女性の主要な役柄が3人、いずれもドン・ジョバンニに引っかけられそうになるわけですが、この3人がすばらしい.

たぶんシェークスピアなどの演劇もそうだと思いますが、オペラでは歌詞を含めて音楽は変えられませんが、演出には縛りがありません.したがって、演出家がどう考えるかで、舞台が全く違ってきます.
今回の「ドン・ジョバンニ」は、全体としてオーソドックスというか、中世ヨーロッパを舞台にした話らしい美術(大道具など)、衣装でした.音楽作りも、演出にあわせたのか、さっぱりしたわかりやすいモーツァルトでした.

来年もまたきて、きっと豊田でやると思います.

また、昨日は岐阜のサラマンカホールというところであった、これもモーツァルトの『魔笛』.
ただ、普通のオペラ公演ではなく、演奏がオケの代わりに木管八重奏+鼓(つづみ)、歌手が歌うのではなく、少しストーリーを変えて狂言師が演じるという変わり種.したがって『狂言オペラ』と題していました.
演奏はドイツカンマ−フィル・管楽ゾリステンという超一流のアンサンブル(後でしっかりサインをもらってきました)で、この管楽アンサンブルを聴くつもりで行ったのですが、狂言も大蔵流の中心メンバーということで、期待に反してというと怒られますが、こんな表現もあるのかと「目から鱗」でした.
実は能や狂言にも興味があって、これまでにも2,3度見に行ったことがあるのですが、いろんな約束事がわからなかったり、仕手(シテ)がうまく聞き取れず、いまひとつなじめずにいました.ただ昨日のような形であれば、私にとっては親しみやすいというか、むしろ、これまでそれなりにわかっているつもりだった『魔笛』の見方がちょっと変わりました.
この企画、今年で3回目だそうで、これまではモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」と『フィガロの結婚』を取り上げてきています.とすると来年は『コジ・ファン・トゥッテ』? 『後宮からの誘拐』?

今度の土曜日は名フィルの定期です.

アラビアンナイト

台風が迫っています.明日の授業はどうでしょうか? 2,3年生は京都へ行く予定だと聞いていますが・・・(; ;)

昨日は名フィルの特別演奏会でした.
以前音楽監督をやっていた小林研一郎という指揮者が年に3回くらいやっている「コバケンスペシャル」というシリーズです.非常に人気のある指揮者で、演奏も毎回名演が続いています.

今回は
コダーイ:ガランタ舞曲
フランク:交響的変奏曲
リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェエラザード』
というプログラム.一言で言うと、オケの名人芸の見せ所にあふれた名曲コンサートということろでしょうか.

コダーイは20世紀ハンガリーを代表する作曲家.教育者としても有名な人です.指揮者の小林は30年くらい前にブダペストの国際指揮者コンクールで優勝して一躍有名になった人.それだけにハンガリーへの思い入れは深いようで、この曲はCDも出しています(持っていませんが(;O;)).今回のような3曲くらいあるプログラムの最初の曲というのは、後の2曲と比べて結構見劣り(聴きおとり)することも多いのですが、どうして、どうして.一分の隙もありませんでした.
この曲はハンガリーの民族的な舞曲に題材をとってつくられています.ウィーンナーワルツやフラメンコなどとは全く違う、もっと土俗的な感じのリズム・メロディーです.大きく3つのパートに分かれているので、ともすると散漫な感じになるのではと思っていたのですが、管楽器のソロや弦楽器のならしどころでしっかりと聴かせてくれました.

2曲目はピアノソロの入った、実質的にはピアノ協奏曲といってもいいつくりになっています.江崎昌子という、たぶんそれなりに有名なソリストだったようですが、私はやや音になじめず、睡魔に負けてしまいました.
曲は何となくつかみ所のない雰囲気で始まりますが、全体としてピアノを聞きたい人にも、オケを聞きたい人にも十分満足のいく曲ではないでしょうか.

さて、メインの「シェエラザード」はアラビアンナイト、つまり『千夜一夜物語』に着想を得てつくられた曲で、作曲者のリムスキー=コルサコフの代表作.吹奏楽への編曲版もよく演奏されます.
これぞ『オーケストラ』といわんばかりに、コンサートマスターのソロをはじめ、ほぼすべての楽器に聴かせどころのソロがあり、オケ全体もガンガンなる曲です.指揮者コバケンも得意にしている曲の一つ.さすが、期待に違わぬ名演で、堪能させていただきました.
ファゴットにも有名なソロがあり、学生時代から何度も聞いているのですが、生で聴くのは今回が初めてでした.実際、演奏される機会もそれほど多くはありません.(ということもあってか、『コバケンスペシャル』にしてはお客さんの入りも今ひとつでした)
1時間弱の曲ですが、あっという間でした.『アラビアンナイト』の語り部役=シェエラザードをイメージさせるヴァイオリンソロを随所に挟んで、ここは嵐なんだろうか、お祭りなんだろうか、などと想像しながら聴けて、非常に楽しい演奏でした.
映画のサウンド・トラックのような曲です.CDもたくさん出ていますので、是非一度聴いてみてください.

定期演奏会では『アンコール』はないのですが、今回のような特別演奏会だと必ず最後にオケのアンコール曲がおまけでつきます.期待をしていたら、オケは派手にやり過ぎたから、コン・マスのソロ続きということで、一人(コバケンのピアノ伴奏がつきましたが)でのアンコールでした。ちょっとおどろきましたが、これもオケの実力のうちでしょう.
曲はハンガリーの作曲家モンティのつくった『チャールダーシュ』。元来はハンガリーの民族音楽の1ジャンルをさす言葉ですが、この曲のさわりはたぶん誰でも聴いたことがあると思います。
余談ですが、ハンガリー民族は一部にモンゴリアンの流れをくんでいて、文化的にもやや東洋的なところがあります.名前も日本人や中国人と一緒で、姓が先に来ます.

さて、この『コバケンスペシャル』、次回は来年3月ですが、コバケンがもっとも得意とする
ベルリオーズ:幻想交響曲
名演が期待できます.