小山実稚恵ピアノリサイタル

今回はピアノの単独のコンサート、リサイタルです。

ピアニストは小山実稚恵、現在の日本を代表するピアニスト。ショパン・コンクールとチャイコフスキー・コンクールの両方に入賞した唯一の日本人ピアニストで、レパートリーも広く、現在12年間で24回の連続コンサートを名古屋を含む国内7カ所で進めています。先週土曜日に、名古屋・栄の宗次ホールで第16回目のリサイタルがありました。

これまでにも2回聴きに入っているのですがいずれも満席。今回は《ピアノの魅力》と題して、ピアノの表現力の広さをアピールするようなプログラムで、もちろん満席でした。

ベートーヴェン(リスト編曲):交響曲第6番《田園》
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、ポロネーズ第2番、同第5番
シャブリエ:絵画風の小曲集から 《牧歌》
ヴェルディ/リスト:リゴレット(演奏会用パラフレーズ)

リストはたくさんのオーケストラ曲やオペラをピアノ用に編曲しています。今回はその中から2曲。

ベートーヴェンのすべての交響曲にリストによるピアの編曲版があります。なかなか生で聴く機会はありませんが、以前に《第9》を聴いたことがあります。今回の《第6》で2曲目(^-^) 演奏前にピアニストの簡単なコメントがあり、その中で、「ピアノで弾くが、頭の中ではオーケストラが鳴っている」といっていました。そのつもりで聴いたからか、聴いていると、こちらの頭の中でもオケの音と重なってくるようで、不思議な気分でした。

ヴェルディの《リゴレット》は、オペラの中の有名な曲あるいはフレーズを使って、リストが自分なりにまとめ上げた曲(こういう曲をパラフレーズといいます)。20分ほどで一気に聴かせてくれるのですが、有名な「カルテット」(
ここを参考にしてください)を中心にまとめられていて非常に楽しい曲です(オペラはとんでもなくミゼラブルなストーリーです。オペラについてはここここを観てください)。終演後にサイン会があり、しっかりと参加しました。そのときに、この《リゴレット》について、「メロディーはヴェルディでも音楽は完全にリストなんですね」と尋ねると、「その通りですよ」とのご返事でした。

ショパンが3曲はいっています。もちろん、今回のテーマ「ピアノの魅力」はショパン抜きでは語れません。いずれもポロネーズ(ポーランドの舞曲をもとにしたショパン独自の音楽)ですが、さすがは小山得意のショパン。完全に手の内に入っているというか、見事でした。小さなホールで生で聴いたからでしょうか、CDで聴くよりもダイナミックで、響きの広がりに圧倒されました。

この日はなんとアンコールが3曲。
チャイコフスキー:組曲《四季》(12の性格的描写)から「10月・秋の歌」(先月の名フィル定期での上原彩子のアンコールと同じ曲です)
プロコフィエフ:プレリュード
ショパン:英雄ポロネーズ
でした。

映画」『椿姫』ができるまで

今年が作曲がヴェルディの生誕200年ににあたることは何度か書きましたが、この映画もメモリアルにあわせて作られたようです。オペラ上演の舞台裏をとらえた非常にユニークなドキュメンタリー映画です。

一昨年の夏にフランス南部のエクサン・プロヴァンスで開催された音楽祭で上演されたヴェルディの歌劇『椿姫』の上演に至までの、主役であるヴィオレッタ役のナタリー・デセイの練習風景を中心にしたドキュメンタリー。主役のデセイが大好きだということもありますが、映画としてつくられていることにも興味をそそられて観に行きました。

『椿姫』のストーリーに従って練習部屋や舞台での歌手と演出家や指揮者とのやりとりが中心。歌声は練習での声をそのまま拾っているので、時に口ずさむ程度になることもあり、練習のやり方がよくわかりました。また、この手のドキュメンタリーでありがちな、最後を本番の一場面で締めくくるというような作り方ではなく、ずっとリハーサルが続いていくかのようなエンディングです。

歌手へのインタビューなどはほとんどないため「生の声」は期待するほど聞けないのですが、演出家の要求に対して歌手がどのように応じていくのか、できあがった舞台からは想像がつかないところを十分に観ることができます。

この上演の演出は非常にシンプルなつくりで、歌手は歌と演技にかなり集中できるようです。それだけに演技にかなり力を入れていて、観ているこちらもちょっとあつくなってしまいました。

名古屋・伏見ミリオン座で先月末から上映しています。たぶんあと1か月くらいはやるのではないでしょうか? 

名フィル定期(第406回)

今回のテーマは「空気・水ーー夜空と海の情景」

プログラムは
アンダーソン:発狂した月
武満徹:オリオンとプレアデス
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:管弦楽のための3つの交響的素描《海》
チェロ独奏:宮田大
指揮:尾高忠明

ドビュッシーの名前はご存知の方も多いと思います。19世紀終わりから20世紀初めに活躍したフランスの作曲家。武満は日本が世界に誇る作曲家。音楽に言葉がいらないということを考えると、大江健三郎や村上春樹よりも影響力は大きいと思います。アンダーソン、Julian Andersonはイギリスの作曲家で現役です。(有名な「シンコペイティッド・クロック」などを作曲したのはルロイ・アンダーソン、アメリカの作曲家です)

毎年のように客演し、常に名演を聞かせてくれる尾高が、期待にたがわぬ素晴らしいドビュッシーを聴かせてくれました。特に、『海」は一度は生で聴いてみたいと思っていただけに、感激しました。

ドビュッシーのようなフランス音楽で特に管楽器が活躍しますが、細部までしっかりと眼が行き届いているようで、非常に引き締まっていました。また、弦楽器がいつになくよく鳴っていたような気がします。


前半の2曲は典型的な現代音楽です。口ずさめるようなメロディーがあるわけではありません。いろんな楽器の組み合わせによる響きを楽しみながら、作曲者の込めたもの=精神性をいかに感じるかがポイントでしょうか。従って、作曲者の意図をあらかじめ知っていた方がわかりやすく、少し予習が必要です。演奏会のパンフレットには必ず楽曲解説がついているので、少し早めに会場に入ってザッと目を通しておくだけでも十分です。

さらに、演奏者、オーケストラ曲の場合は指揮者によっても演奏の質に差が出ます。第一線で活躍している指揮者は例外なく現代音楽を取り上げて実績を上げていますが、尾高はその代表のような存在でしょう。特に、今回の2曲は初演を尾高が指揮。作曲者自身とも交流があるようですし、十分に掌中に収めたような演奏でした。

パリ・オペラ座:ジョコンダ

以前にも紹介したパリ・オペラ座のライヴビューイングの最終回で、ポンキエッリという19世紀後半に活躍したイタリアの作曲家(1836年生まれ)の代表作、《ジョコンダ》を観てきました。

初めて観たオペラです。ちょうどヴェルディと同じ時代ですが、先日観に行った《蝶々夫人》を作曲したプッチーニの作曲の先生です。当時はヴェルディと並び称されるほどだったそうですが、現在ではほとんど上演されることはなく、今回の《ジョコンダ》も日本でもまだ上演されたことはないようです。


さて、全4幕で約3時間半、(多分)中世のヴェネチア。黒と白を基調として中央上手から下手にかけて運河を配した絶妙の舞台。主な登場人物は6人。
ヴェネチア一番の歌姫・ジョコンダ(ソプラノ)
ジョコンダの恋人で海賊・エンツォ(テノール)
司法長官・アルヴィーゼ(バス)
アルヴィーゼの妻で、エンツォの昔の恋人・ラウラ(メゾ・ソプラノ)
司法長官の密偵・バルナバ(バリトン)
ジョコンダの母(盲目)・チェーカ(コントラルト)

第1幕:ヴェネチアの運河沿い
バルナバはジョコンダに横恋慕しています。エンツォと相思相愛のジョコンダに相手にされないため、彼女の母親が魔女と言いふらして、町の人たちを魔女狩りに駆りたてます。そこにアルヴィーゼとラウラが通りかかり母親を助けます。同時に、エンツォとラウラは互いにかつての恋人を見て昔の気持ちがよみがえります。

第2幕:ヴェネチアから外洋への港
エンツォが出航の準備中に、ラウラが訪ねてきます。実は、バルナバがジョコンダとエンツォの仲を裂こうと策した結果。そこへジョコンダも現れ、嫉妬のあまりラウラを殺そうとしますが、母親の命の恩人であることを思い出します。一方、ラウラの夫であるアルヴィーゼの部下がラウラを尾行していることがわかり、ジョコンダはラウラを逃がします。あらためて、ジョコンダはエンツォに求愛するも、エンツォの気持ちは完全にラウラに向かってしまっていました。

第3幕:アルヴィーゼの館
不貞を働こうとしたラウラをアルヴィーゼが責めて、毒薬を与えて出て行きます。絶望したラウラが毒をあおろうとする直前に、ジョコンダが現れて毒薬を仮死薬と交換。一方でアルヴィーゼは舞踏会に興じていると、紛れ込んでいたエンツォがアルヴィーゼに切りかかり捕らえられてしまいます。

第4幕:ヴェネチアの運河沿い
ジョコンダはエンツォが自分から離れてしまったことをさとり、ラウラと一緒に逃がしてやることにして、自らを投げ出してバルナバに依頼します。エンツォとラウラが逃げた後、バルナバに迫られたジョコンダは自ら命を絶ってしまいます。

なんとかまとめたつもりですが、筋としてはやや無理があります。原作はビクトル・ユゴーの『パドヴァの暴君アンジェロ』だそうです。読んだことはありません(そもそも邦訳はないかもしれません)が、オペラの台本にする過程で手が入っているかもしれません。

演奏は素晴らしかったと思うのですが、音楽的には特徴がないですね。ヴェルディとプッチーニに挟まれていては、現代において人気がないのも止むを得ないでしょう。

このオペラで最も有名な曲は第3幕の舞踏会のシーンでバレエ用に演奏される「時の踊り」でしょう。ディズニーのアニメでも使われたそうなので聴けばわかります。また、第4幕のジョコンダのアリア「自殺!」も聴きごたえがあります。

今回の上演で驚いたのはバレエ「時の踊り」の振り付けです。男女のペアがともにトップレス(というよりも、パンツ1枚)で約10分。ジッと見入ってしまいました。最初は淫らな気持ちで見ていました(^_^;)が、パリ・オペラ座バレエ団のプリマ(つまり世界一)の肉体美に圧倒されました。ご存知の方も多いと思いますが、バレリーナ(女性のバレエダンサー)はモデル並みに絞った体型をしています。しかし、ただ細いだけではなく、全身が筋肉で覆われていて、激しい動きに応じた筋の様子がよくわかりました。

春から始まったパリ・オペラ座のライブビューイングは今回で終わり。109ではお客さんの集まりももう一つかなと思いますが、ぜひ来年もやって欲しいと思います。