ベートーベン・ピアノソナタ

皆さんにとっては試験期間中で、何ともやりきれないシルバー・ウィークだったかもしれません.

私は金曜日から水曜日まで連日コンサート(日曜日だけお休み)に出かけておりました.
名古屋・伏見にある「しらかわホール」で、若林顕というピアニストのベートーベン・ピアノソナタ全曲のリサイタルです.
1回1回の入場料がそれほど高くなかったということと、誰の演奏にしろこんな機会は二度とはないだろうということで、ピアノ曲はそれほど興味があるわけではありませんが、ちょっとがんばってみました.
ピアニストの若林は、たぶん私と同い年、以前に名フィルの定期に出たこともあるのですが、この世代としてはぴかいちの実力者として評判です.

ピアノを習っていた方はわかると思いますが、ピアノ・ソナタは3〜4楽章からなり、少なくとも第1楽章はソナタ形式でできていて、ピアノだけで演奏する曲です.18世紀半ば頃、つまりハイドンやモーツァルトが活躍していた時代から一般化して、19世紀中頃までよく作曲された曲種です.この時代はピアノが楽器として改良・発達した時期とも重なります.
ベートーベンは全部で32曲つくっていて、第1番をつくったのが25歳頃.もともと名ピアニストとして活躍を始めたベートーベンが腕によりをかけてつくった名曲が並んでいます.1曲が20〜30分くらい、ピアニストにとってのバイブルともいわれていて、ある程度ピアノをやった人であれば必ず取り組む曲です.日本では音高や音大の入試の課題曲としてもよく取り上げられます.

有名な「月光」や「悲愴」、「熱情」など、題名を聞いたことがある人も多いと思います.初期の曲はベートーベン自身がまだ独自の境地を切り開く前で、ピアノという楽器の音域は音量も限られていたこともあり、彼以前の作曲家、特にハイドンなどの影響を強く受けています.こういう曲の音楽的な状態を「古典的」といいますが・・・.20番台に入ると、作曲した時期も30代に入り(耳はもうほとんどきこえていなかったかもしれません)、曲調も劇的になっていきます.ちょうど交響曲第5番(日本では「運命」という表題で呼ばれます)をつくったのもこの頃です.

さて、コンサートは1日あたり5〜7曲のペースで、ほぼ作曲された順番にしたがって演奏されました.途中に2回の休憩が入り、全体で3時間を超えるコンサートでした.演奏するピアニストが大変なのは言うまでもありませんが、聴く方もいかに集中力をもたすか、自分との闘いです.
演奏は、初期の曲よりは、後期のダイナミックな曲想のソナタの方がピアニストの集中力も高まっているような気がしました.曲が持っている力によるのかもしれませんが、シリーズのコンサートということで、少しずつ気持ちが乗っていったということかもしれません.

さて、明日日曜日午後8時からNHKの「名曲探偵アマデウス」で、ピアノソナタ第7番「悲愴」が取り上げられます.ここ(
NHK クラシックミステリー 名曲探偵アマデウス | これからの放送予定)です.興味ある方はご覧ください.

モーツァルト:ファゴット協奏曲

土曜日に名フィルを聴いたのですが、翌日曜日にはアマチュアの合唱団のコンサートを聴きました.同じ、名古屋・栄の芸術劇場コンサートホールです.

曲目は、いずれもモーツァルトの宗教曲.オーケストラ付きの曲で、セントラル愛知交響楽団がのっていました.
ただ、目当ては合唱曲ではなく、途中でやったモーツァルトのファゴット協奏曲です.

学生時代にオケでファゴットをやっていたので、CDはたくさん持っているのですが、生で聴くのは初めて.ひょっとすると最後かもしれません.
モーツァルトがわずか18歳の時に作った曲ですが、そもそもファゴットのための協奏曲というのは珍しく、もちろんコンサートで取り上げられる機会もほとんどありません.以前NHK交響楽団が現代の作曲家のつくったファゴット協奏曲を取り上げているのをテレビで聴いたことがありますが、国内でも数年に1回くらいしかないかも.

ファゴットいうのは木管楽器の最低音を受け持つ大型の楽器、オケでは木管楽器群の後ろ、たいていクラリネットのとなりに長く突き出ている茶色の楽器です.
こんなのです.ここも観てください→http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/b1orc1/b1orc1/b106fa/b11fg1.mpg
ソロを吹いたのは、名フィルの首席奏者・ゲオルグ・シャシコフ(ブルガリア人、たぶん奥さんが日本人)、前日に「火の鳥」で見事なソロを聴かせてくれたばかりで、いつリハーサルをやったのかと思うのですが、初めて聴けたので感動でした._(._.)_

ドラマや映画のBGMでも結構活躍しているのですが、機会をつくってゆっくりと紹介したいと思います.

名フィル定期(第361回)

すっかり夏休みをしてしまいましたが、うまい具合に9月に入って最初の週末に演奏会がありました.

今回の名フィル定期は、「夏風の中で」と題して、常任指揮者のティエリ−・フィッシャーの指揮で
ウェーベルン:牧歌「夏風の中で」
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の想い出に」
ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」全曲
でした.

正直言ってヘビーでした.居眠りしなかったのが不思議なくらい(*^^).
三人とも20世紀に入ってから活躍した作曲家で、特に前半の二人は「前衛音楽」というか、いわゆる「現代音楽」といわれて誰もがイメージするような音楽をつくっていた作曲家です.ですから、電車の中でiPodで聴いてみるとか、パソコンに向かって書き物をしながら聴くということのできない曲.かといって、真剣に聴いてもわかったようなわからないような、スコアも手に入らなかったので、ほとんど予習もできませんでした.

それでも、1曲目のウェーベルンの曲は、牧歌と題しているだけあって、まあメロディカルで、少し楽しめました.15分くらいの曲ですが、オーケストラの編成は大きく、いろんな響きを楽しむことができました.ただ、夏風?という感じではありましたが(^_^;

問題は2曲目、いつまでたってもこの手の曲は苦手(>_<)ゞ どこを聴いていいのかよくわからない上に、決して口ずさめるようなメロディーではないため、後で思い出そうとしてもなかなか頭の中で鳴ってくれません.ソリストは、フランス出身のオーギュスタン・デュメイという、現代を代表するヴァイオリニスト.正直よく名フィルにきたなというくらい(^ニ^)
終了後は客席のあちこちから「ブラボー」と声がかかっていたし、きっとすばらしい演奏だったんでしょうが、…>_<… 

ソリストはたいていアンコールとして小品を演奏してくれます.この日はオケ付きで、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番の第2楽章でした.聞き慣れた響き、これならわかります.
しかし、これがヴァイオリンの音(?_?)エ?、今まで聴いたこともない軽やかで、甘くうっとりするような音でした.ため息が出るのを通り越して、ただ聴き入るばかり.

CDでヴァイオリン協奏曲などを聴くと、ホールで生で聴くよりもヴァイオリンの音が大きく響くことがあります.スタジオで録音してミキシングしているんだろうなあと思っていたのですが、このモーツァルトは、それほど大きな音ではないはずなのにヴァイオリンだけが目の前で弾いていているようにきこえます.
このデュメイのベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全集を持っているのですが、確かにいい音です.ただ、モーツァルトとなるとまたひと味違った、別人のような音でした.

さて、メインは6月の定期と同じ、ストラヴィンスキーのバレエ音楽.今回は約50分に及ぶ全曲版(組曲スタイルなので、抜粋で20分くらいに縮めて演奏されることが多い).
こちらは比較的なじみのある曲なので、何とかついて行けました.途中管楽器に乱れがあったような気がするのですが、最後はしっかりとまとめ上げて一気に盛り上がったところは、指揮者の腕でしょう.
ちなみに、題名の「火の鳥」はロシアの民話に基づくお話で、手塚治虫とは関係ありません.
これも大編成で、ハープは3台もいます.打楽器も活躍するので、観ていても飽きませんでした.

さて、来月は日本を代表する指揮者である尾高忠明が、もっとも得意とするエルガー(「威風堂々」が有名です)の交響曲を振ります.