名フィル定期(第372回)

先週土曜日、名フィルの9月定期は5月に続いて常任指揮者のティエリー・フィッシャーの指揮で
斉木由美:二つの素描〜独奏ヴァイオリンとオーケストラのために(委嘱作、世界初演)
マーラー:交響曲第5番
の2曲でした.

名フィルの定期ではこの数年、作曲家に新作を委嘱して、それを初演する取り組みを続けています.つまり現代音楽を演奏するわけですが、今回の作曲家の斉木さんは多分30代(プログラムの紹介には生年がないので不明)、愛知県立芸大の出身の注目株だそうです.

おそらく多くの方が「現代音楽」と聞いてイメージするものに近かったと思います.恐怖映画のBGMか効果音かというようなところが随所にあって、全くメロディカルではありません.形式はヴァイオリンの独奏を伴った協奏曲風で、オケと掛け合うような、対話しているような雰囲気もあるのですが、???

終わった後で、いつも隣り合う年配のご夫婦には「なかなか難しい曲ですね」といわれ、つい「響きを楽しむ曲ですね」と答えてしまいました.

さて、メインのマーラーの5番は約70分に及ぶ大曲.マーラーの他の交響曲の多くが声楽付で、標題音楽的というか、曲に物語性があるのに対して、この曲はどちらかというと絶対音楽.具体的な意味がなく、音楽のための音楽というようなつくりです.ただ、マーラーの音楽はいずれも厭世観が漂っているというか、「死」を感じてしまうところは同じ.

今年はマーラーの生誕150年(1860年生まれ)ということで、記念してのプログラムです.ショパンやシューマンの生誕200年の陰に隠れていますが、オケにとっては重要な作曲家ですので、いろんなところで取り上げられていると思います.実はマーラーは51歳でなくなっているので、来年が没後100年、続けてのメモリアルイヤーです.

マーラーの交響曲はいずれもオケの編成は大きく、金管楽器、特にホルンとトランペットが大活躍します.もちろん木管楽器のハーモニーや弦楽器のソロなども堪能でき、ダイナミックスレンジ(音量の強弱の差)も非常に大きな曲です.独特の響きがあって、メロディーも決して口ずさめるようなものではないので、ちょっと取っつきにくいところもありますが、聴き出すとはまってしまいます.CDもたくさん出ていますので、ぜひ一度手に取ってみてください.

ブラームス

夏休みが終わりましたが、いかがでしたでしょうか? 「久々」の夏休みで戸惑った方もいたかもしれませんが、実技の試験が今日から始まっているようですね.学科の試験は2週間先ですが準備を怠りないように.

名大は夏休み前(8月はじめ)に前期試験をやってしまうので、学生はまだ夏休み期間中です.したがって、学内はいたって静か.明日、明後日に予定していた大学院生の実習も、たった一人の受講生がドタキャンしてしまったために、あえなくキャンセル.来週初めの授業に向けて早く休み気分を吹き飛ばさねばと、焦っているところです.

さて、音楽の方も「椿姫」で大枚はたいた分、ちょっと静かにしていたのですが、日曜日に名フィルの特別演奏会に行ってきました.

オーケストラは「定期演奏会」が本来の職分みたいなもので、定期以外はすべて特別演奏会.団員の服装も「定期」は燕尾服ですが、これ以外はいわゆる礼服(略礼).

今回のテーマは「ブラームス(Brahms)」、19世紀に活躍したウィーン出身の作曲家です.「ドイツ3大B」の一人などと称されることもあります.「ドイツ」とあるのは、オーストリアも含めたドイツ語圏の音楽家と言うことで、後の2人はバッハ(Bach)とベートーベン(Beethoven)です.
プログラムは、
ブラームス作曲:セレナーデ第2番
ハイドン作曲:トランペット協奏曲
ブラームス作曲:ハイドンの主題による変奏曲
正味の演奏時間で1時間ちょっとという短いコンサートでしたが、密度の濃い、充実した演奏でした.

最初のセレナーデは初めて聴いた曲でした.ブラームスがかなり若いときに書いた曲だそうですが、ヴァイオリン抜きの小編成の曲です.指揮者の左に管楽器、右にヴィオラ以下の弦楽器というやや変わった配置でした.管楽器の活躍が目立つ曲で、もともと管楽器をやっていた者としては非常に興味をそそられました.CDを持っていないので予習できなかったのが残念です.

2曲目の協奏曲は、この3月まで名フィルにいた藤島さんというトランペット奏者が独奏を務められました.オケの中では何度も聴いていたのですが、彼の音は非常に柔らかくて、とても耳に優しいなめらかな音.見た目も優しそうな方なのですが、そのままという感じでした.
この曲は何度聞いても飽きない、いい曲です.いかにも楽しそうな第1楽章、抒情性豊かな第2楽章、軽快な第3楽章と非常にうまくつくられています.CDもそんなにたくさん出ているわけではないのですが、皆さんぜひ聴いてみてください.

この日のメインは3曲目、学生時代にやったことがあるのですが、聴いた感じよりもはるかに難しい曲です.ハイドンがつくったとされる(実は違うらしいのですが)メロディーを題材にした変奏曲.作曲技法的にはかなりしっかりしたつくりなのだそうで、確かに、次々に新しい楽器の組み合わせや響きが出てくる割には安心して聴いていられます.最後の盛り上がりも十分で、「よし、終わった」ということがハッキリとわかるので、こういうところも安心感を生んでいるのかもしれません.

今週末は名フィルの9月定期、マーラーの交響曲第5番(映画「ヴェニスに死す」でBGMとして使われた曲)です.