名フィル定期(第405回)

今月の名フィル第405回定期演奏会は、「火ー始まりの花火と黄金の羽」がテーマ。

プログラムは
ナッセン:花火と華麗な吹奏
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番
ストラヴィンスキー:バレエ『火の鳥』全曲
指揮:マーティン・ブラビンズ
ピアノ独奏:上原彩子

ピアノの上原は岐阜市出身、1998年のチャイコフスキー・コンクール優勝以来華々しい活躍を続けていますが、名フィルとの共演は初めてとか。期待の高さを示すように、ほぼ満員でした。

 
ナッセンは初めて聴く作曲家です。現代イギリスを代表する作曲家だそうで、多分指揮者とも懇意なのでしょう。現代音楽だけに口ずさめるようなメロディーはありませんが、題名の通り開演を告げるにふさわしい曲です。特に、打楽器が華々しく、「鳴子」が大活躍でした。高知のよさこい踊りでも使われているものです。

プロコフィエフとストラヴィンスキーはともにロシア生まれですが、ロシア革命を前後して国外に出てしまったのですが、ストラヴィンスキーが1882年生まれ、プロコフィエフは1891年生まれです。同じ頃に活躍したラフマニノフのような19世紀風のロマンチックな路線から外れて、新しい音楽を模索した作曲家です。

さて、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は彼がまだサンクトペテルブルク音楽院ピアノ科の学生だった頃に作曲した曲。印象的なフレーズが随所に出てくるのですが、ピアノはまるで打楽器のように様々な音を激しく打ち鳴らします。上原の演奏はこの曲の要請に応えるかのように実にパワフルで、これまで聴いたどんなピアニストの音よりも大きくきこえました。音量だけでなく、音の固まりも大きく、ホールを圧するかのようでした。

協奏曲には珍しく4楽章構成で約30分。上原はこの曲を演奏するのがはじめてだそうですが、もちろん暗譜です。ものにするまでにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?想像がつきませんが、演奏のための体力、ペース配分をつくる練習も必要そうな曲です。

一般にオケの演奏会でソリスト附きの曲を演奏したあとにはソリストのアンコール演奏、つまりソリストが一人で(ソロの)短い曲を演奏します。ところが、今回はありませんでした。さすがにこの曲の後には体力が続かないのでしょう。その代わり、今シーズンから常任指揮者を務めるブラビンスが指揮をするコンサートでは『ポストリュード、postlude(後奏曲)」として、すべてのプログラム終了後に何らかのアンコール演奏が企画されるようになりました。そこで、今回はソリストの上原が小品、チャイコフスキーの組曲《四季》から4曲を演奏してくれました。

ヘビーな曲が続いたコンサートだけに、ちょうどいいドルチェ気分を味わうことができました。

蝶々夫人3

今回の公演では、主な出演者のうち二人が事前に降板してしまい、当初の予定とは別の歌手が出演していました。
長崎領事シャープレス:ジョーリオ・ボスケッティ
女中スズキ:林美智子
のお二人です。

オペラではよくあることで、これまで観に行った公演でもたまにありましたが、同時に二人ははじめて。何と言っても「のど」が楽器の歌手ですから、体調不良で無理をすると肝心の楽器が壊れていまいますし、「演奏の質が悪い」と評価されると次の出演に影響します。世界的な名歌手だったルチアーノ・パヴァロッティは完璧主義だったようで、ちょっと調子が悪いとすぐにキャンセル。それがために「キャンセル魔」と言われていたそうです。

今回、本来歌うはずだった方たちのことは全く知らないのですが、代役の二人はブラヴォーです。特に、シャープレス役は見事でした。

そしてなんと言ってもオケ、名フィルが見事でした。いつも彼らが主役として舞台に乗っているのですが、今回は一歩引いた立場でオペ・ピットに入っての演奏。年に数回しかやらないはずのオペラの演奏ですが、プッチーニの音楽はオケが非常に活躍します。非常に音が分厚く、オケらしいサウンドを堪能できます。

蝶々夫人2

歌劇《蝶々夫人》、題名は聞いたことのある人がほとんどだと思います。簡単にあらすじを紹介します。(わかる!オペラ情報館:http://www.geocities.jp/wakaru_opera/madamabutterfly.htmlを参考にしました)

1890年代(明治30年頃ということになりますが、現実とはややずれています)、長崎が舞台、ソロのある登場人物は7人、
蝶々夫人(ソプラノ):15才の芸者
ピンカートン(テノール):アメリカ海軍士官
シャープレス(バリトン):駐日アメリカ総領事
スズキ(メゾ・ソプラノ):蝶々の女中
ゴロー(テノール):結婚仲介人
ボンゾ(バス):蝶々の叔父で僧侶
ケート(ソプラノ):ピンカートンの母国の妻
演奏時間は第1幕:50分、第2幕第1場:50分、第2幕第2場:40分、合計:約2時間20分です。

【第1幕】
 短い序奏のあとにすぐ第1幕が始まります。

 アメリカ海軍士官のピンカートンは、結婚仲介人ゴローの斡旋によって、現地妻として蝶々さんと結婚し、長崎の港を見下ろす丘に立つ家を手に入れます。といっても、いずれも999年契約で、ピンカートンの都合でいつでも解約可という勝手なもの。アメリカ総領事シャープレスが、ピンカートンの行為は軽率だと忠告しましたが、ピンカートンは聞く耳を持ちません。
 
 蝶々さんは武士の家に生まれましたが、父が切腹するなど没落して芸者となっていました。このとき15才。結婚を心から喜んでいて、キリスト教に改宗までしました。しかし、その改宗に怒った叔父の僧侶ボンゾが、結婚式に怒鳴り込み、他の親戚もあきれて帰ってしまいます。悲しむ蝶々さんでしたが、ピンカートンが彼女をなぐさめ、二人は初夜を過ごます。ここでの『愛の二重唱』が聴き所です。
 
【第2幕】
 結婚生活も束の間、ピンカートンはアメリカに帰り、既に3年が経ちました。彼の帰りをひたすら待つ蝶々さん。有名な『ある晴れた日に』はここで歌われます。ある日、総領事シャープレスがピンカートンの手紙を持って現れます。シャープレスはその手紙を蝶々さんに読んで聞かせようとしますが、ピンカートンの帰りを信じる蝶々さんを前に最後まで読むことができません。逆に、二人の間にできた3才の子を見せられ、ますます真実を話せなくなりました。蝶々さんとシャープレスの『手紙に二重唱』は泣かせます。シャープレスが帰ったあと、蝶々さんは長崎の港にピンカートンの所属する軍艦が入港したのを見つけ、欣喜雀躍し、彼の帰りを待ちます。
 
 ここで場面転換されることもあり、間奏曲が入ります。夜が更け、そして明けていく様子を舞台裏から女声合唱がハミング(『ハミングコーラス』)で歌います。この先を知っているとこれだけでジーンと来ます。

 しかし、一晩中寝ずに待っていましたが、彼は帰って来ません。朝、蝶々さんが子どもと寝室で休んでいると、ピンカートンとその妻ケートが訪ねてきます。女中のスズキから蝶々さんの思いを聞いたピンカートンは深く反省し、耐えられずそこから立ち去りました。直後に蝶々さんが起きてきて、アメリカ人女性の姿を見たとき、彼女はすべてを悟ります。子どもを預かるというケートの申し出に、蝶々さんは彼が迎えに来るなら渡すと言いました。このあとが蝶々さんの最後の独唱ですが、壮絶です。そして、ピンカートンが駆けつけたますが、すでに父の形見の短刀で自害した蝶々さんを見つけ、ピンカートンの「Butterfly! Butterfly! Butterfly! 」という絶叫で終わります。

 初演は1904年、ミラノ・スカラ座でしたが、実は大失敗。改訂版は同年、ブレッシャ、テアトロ・グランデで上演して成功を収め、以後は世界中で上演されています。このオペラはルイージ・イッリカ、ジョゼッペ・ジャコーザの2人がイタリア語で書いた台本にプッチーニが音楽をつけたのですが、実は原作があります。ロングというイギリス人が書いた小説『蝶々夫人』に基づくベラスコの戯曲が原作で、そのほかにも当時の日本を描いた様々な文献を参考にして台本がつくられました。

蝶々夫人

今、『あいちトリエンナーレ」が進行中です。トリ=tri=3ですから3年に一度の芸術イベント。現代アートが中心のようですが、必ずオペラも上演されます。前回は行き損なったので、今回こそはと早々にチケットを予約しました。先週末、土曜と月曜の2回公演で
プッチーニ作曲、台本:ルイージ・イッリカ、ジョゼッペ・ジャコーザの歌劇『蝶々夫人 Madama Butterfly』、台風とのバッティングでしたがほぼ満席。生では初めてです。

指揮:カルロ・モンタナーロ
演出:田尾下哲

蝶々さん:安藤赴美子
アメリカ士官ピンカートン:カルロ・バッリチェッリ
長崎領事シャープレス:ジョーリオ・ボスケッティ
女中スズキ:林美智子
合唱:AC合唱団
管弦楽:名古屋フィルハーモニー管弦楽団


タイトル・ロールである蝶々さん(Cio-Cio-San)の安藤赴美子の見事は声と表現には正直言って驚きました。また、脇役であるシャープレス(Sharpless、アメリカの長崎領事)も存在感のある演技で、主役二人を支えていたと思います。演出も非常にわかりやすく、シンプルなセットに豪華な着物がよく映えていました。着物での所作が不自然なことが多いのですが、今回は歌舞伎の女形が所作指導したとかで、非常に綺麗でした。

今回座ったのは、1階席の舞台に向かって左端のややボックスのようになったところ。自分の前に席がなく、且つ右隣が通路と、ややゆったりと聞ける場所でした。舞台の奥の方からの声はやや聴き取りにくいにですが、舞台前の方に歌手が立ったときには、迫力だけでなく細かな表現の違いも堪能できました。

このオペラで最も有名なのは第2幕のはじめに蝶々さんが歌うアリア「ある晴れた日に(un bel de)」です。非常にドラマティックに歌い上げる歌手が多いのですが、この日の安藤は、声を張り上げるというよりは歌詞の意味に合わせてしっかりと歌い込んでいるという印象でした。けなげにピンカートンを信じている様子がよく出ていたと思います。最も感動したのはこのアリアの少しあとで歌われる「手紙の二重唱」でした。先々月のセミナーでも安藤自身が最も気に入っていると言っていただけあって、気持ちの込め方というか、切なさで聞いていて涙が出てきました。

小諸なる古城のほとり

夏休みに長野、新潟に行き、いくつかのお城をみてきましたので、簡単にメモだけ記します.

下の写真は小諸城大手門.重要文化財に指定されているそうですが、旧城郭部分につくられた懐古園という公園からは少し離れたところにあります.
島崎藤村の「小諸なる古城のほとり」という有名な詩に歌われています.


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春日山城(新潟県上越市)
博物館用の無料駐車場あり。その他、さらに麓にも数カ所の無料駐車場がある。
天気が悪く、博物館を見学するだけ。本丸までは30分以上歩く必要があったため断念。麓の神社までは車でいけるほか、案内板など整備されている。次回は十分に時間をとって山域をハイキングしよう。
博物館近くは、発掘調査に基づいて堀や土塁を再現している。

松代城(長野県長野市)
すぐ近くに無料駐車場あり。
大手門が再現され、石垣も本丸の周囲を組み直し、見応えがある。解説板は貧弱。
城の周囲に高い建物がないため、当時の雰囲気を味わえる。
同時に、屋敷跡、藩校跡、宝物館を見学。やや時間をかけたが、十分に楽しめる。

上田城(長野県上田市)
幹線道路からはいれる無料駐車場あり。
 
石垣、堀が保存されており、小ぶりながらも見応えがる。かつて千曲川が流れていた部分は駐車場や道路などになっているため面影はないが、断崖上に作られた櫓とその周囲の構造は当時をしのばせる。
本丸と土塁などを見ていると合戦の様子が目に浮かぶ。
城の周囲に武家屋敷や古い街並みがあったが時間の都合で割愛。

小諸城(長野県小諸市)
懐古園横に有料駐車場。
重文指定の門が二つある。城郭としての遺構の多くは懐古園内にある。入場料がやや高いが、時間があればゆっくりできて楽しめそう。
大手門は懐古園からやや離れているため、やや寂しがっている感じがする。