名フィル定期(第466回)『ニーチェ:ツァラトゥストラ』

 名フィルの3月定期は19世紀ドイツの哲学者、ニーチェの代表作である『ツァラストゥストラ』をテーマに
    モーツァルト:交響曲第35番ニ長調『ハフナー』
    リスト:ピアノ協奏曲第1番ホ長調
    リヒャルト・シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』
    ピアノ独奏:セドリック・ティベルギアン
    指揮:小泉和裕
でした。

 これまで読んだことのないニーチェ『ツァラストゥストラ』を、光文社古典新訳文庫で読んでみました。残念ながら理解の限界を超えていました。新書ででている解説本も1冊読んでみましたが、こっちは多少理解できたものの、作品の内容を概観するのみで、逐条的な解説ではないために、改めて原作を読みなをしてもやはりだめでした。今シーズンの最後ということもあり、かなりの熱演でした。

 原作は4つの部分に分けられていて、邦訳で文庫本2冊。R.シュトラウスの交響詩は、作品全体をおっているのではなく、一部の、それも作曲者のインプレッションを音楽にしたものです。したがって、曲を聴いて原作をイメージする必要もなく、聴いたままを感じればよいと開き直れば、聴き応えのある曲です。

 冒頭部分は誰もが知っているはずです。映画『2001年宇宙の旅』で使われ、以降もテレビ番組やコマーシャルなどのいろんな場面で使われています。前期の授業でみたカエルの受精卵の卵割のムービーを覚えているでしょうか。実はあのムービーにもBGMとして使われています。

 30分あまりの曲ですが、切れ目はなく、一続きで演奏されます。管楽器だけではなく、弦楽器にも多くのソロがある珍しい構成。今回の演奏ではコンサートマスターのソロが絶品でした。また、普段単独で聴くことのないヴィオラ・パートの音もよくきこえていました。前半ではオルガン(パイプオルガン)も加わり、響きも音量も普段とは全く違う音楽を楽しむことができました。

 この日の演奏で最も光ったのは、2曲目の協奏曲。特にピアニストです。1975年生まれとのことですので、40代半ばですね。ベルリン・フィルを始めとする世界の有名オーケストラとも共演を重ねているとか。リストの協奏曲はこれまでにも聴いたことがあります。ここでは紹介しませんでしたが、昨年の夏にも愛知県出身のピアニスト、田村響の独奏で聴きました。超絶技巧がならぶ、聴き応えのある曲ですが、今回のティベルギアンの演奏ではピアノの音がこれまでに聴いたことのない音。「ピアノの音に違いがあるのか」と思われるかもしれませんが、演奏者によって、同じ演奏者で作曲者あるいは曲によって全く異なります。きらきらと光輝く大きな玉がピアノから飛び出してくるようでした。次から次へと飛び出す球に圧倒されましたが、ソリストは軽々と弾いていました。改めて超一流を感じました。

 名フィルのコンサートは来月から新しいシーズンに入ります。定期演奏会は《マスターピース(傑作の意)》シリーズと題して、特に19世紀の作曲家を中心にしたプログラムです。有名な曲もかなり含まれていて、予習のために改めてCDを買う必要はほとんどなさそうです。

 4月定期では、ドイツ音楽のベテラン指揮者がモーツァルトの《レクイエム》を取り上げます。