ベートーヴェン交響曲第7番

 今日は本来は名フィルの2020-2021シーズン(https://www.nagoya-phil.or.jp/concerts_regular)のオープニングを飾る定期演奏会に予定でしたが、中止となってしまいました。エド・テ・ワールトという、名指揮者が振ってくれる予定でもあり、大いに楽しみにしていただけに残念です。

 今年は、作曲家であるベートーヴェンの生誕250年にあたり、名フィル定期は『Tribute to BEETHOVEN』と題して、ベートーヴェンの作曲した管弦楽曲や、縁の曲が取り上げられる予定です。

 ベートーヴェンは、177012月に当時のケルン大司教領に含まれたボンで生まれました。行ったことはありませんが、生家が今も残り、博物館として公開されています(https://www.beethoven.de)。祖父、父がともに大司教の宮廷音楽家。特に、祖父は宮廷楽長まで務めたとか。父親による英才教育を受け、幼少期から才能を発揮し、21歳の終わり頃にウィーンへ出てピアニスト兼作曲家として活躍します。20代後半から難聴が悪化し始め、一時は自殺も考えますが、立ち直り、以後作曲家として傑作をつくり続けます。交響曲第3番『英雄』、第5番(通称『運命』)、第6番『田園』、ピアノ協奏曲第5番(通称『皇帝』)、ピアノ・ソナタ第8番『悲愴』、第14番(通称『月光』)、第23番『熱情』など、有名曲を上げ出すときりがありません。この他に、ロマンス第2番(https://www.youtube.com/watch?v=Jf2J0ykoW2A)やピアノと管楽器のための五重奏曲(https://www.youtube.com/watch?v=EbBOB5ChC-0)、ヴァイオリン・ソナタ第5番『春』(https://www.youtube.com/watch?v=kwvfCR2DXxI)などは、よく知られた肖像画からは想像できない愛らしい曲です。

 さて、4月の定期は《冗談》という、彼のイメージとは全く相容れないようなテーマ。プログラムは
  ジョン・アダムズ:主席は踊るーー管弦楽のためのフォックストロット
  ジョン・アダムズ:アブソリュート・ジェストーー弦楽四重奏と管弦楽のための
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
   弦楽四重奏:アタッカ・カルテット
   指揮:エド・デ・ワールト
の予定でした。

 ジョン・アダムスは現代の作曲家、“Jest“とは冗談、悪ふざけという意味で、ベートーヴェンの様々な楽曲のモティーフを取り込んだ曲です。全体の雰囲気は表題の通り、ちょっとふざけているようにも聴こえます。もちろん、茶化しているわけではなく、最大限のリスペクトをはれってアレンジしているのです。シーズン開幕にふさわしい1曲!となるはずでした。
私のコレクションは
 ピーター・ウンジャン指揮のロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団とドーリック弦楽四重奏団によるCD(CHSA5199)です。

 そして、メインは、
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
です。きっと一部は誰もが耳にしたことがある曲です。特に、第1楽章第1主題がドラマ《のだめカンタービレ》のオープニングで使われていました。
 作曲されたのは1811年から翌年にかけて。ベートーベンが41歳の時。交響曲第3番で、彼以前のハイドンやモーツァルトの交響曲のスタイルを打ち破り、第5番、第6番で19世紀のロマン派への道を切り開くような独自のスタイルを確立したのち、むしろ回帰するように典型的な楽器編成と4楽章構成で作曲されています。しかし、全体は後に「舞踏の権化(または聖化);Apotheose des Tanzes」と評された(ワーグナー)ように、全曲に渡ってリズムが活用されています。出現するリズムとメロディーがいずれも印象的です。

 今回のコンサートで演奏されるはずであったアダムズの『アブソリュート・ジェスト』がそうであるように、有名な曲や印象的なリズム、メロディは後に様々な引用されたり、パスティーシュされたりします。交響曲第7番の場合には第2楽章がよく使われます。単純なリズムとほとんど音程が変化しないメロディーは、誰でも思いつきそうなだけに利用しやすいのでしょう。ベートーヴェンの音楽の特徴の一つは主題労作または動機労作と呼ばれる手法で、一つのモチーフを組み合わせたり、変化させたりしながら、曲を作り上げていくものです。交響曲第5番第1楽章がその典型であり、最高傑作でしょうか。「タタタタン」だけで、10分近い曲を完璧に構築しています。日本語では「作曲する」と言いますが、英語では“compose”、ドイツ語では“komponieren”、元来は「構築する」と言う意味です。決して思いついたメロディーを書き付けていくだけの作業ではなく、しっかりとした理論に基づいた技術が必要です。

 また、交響曲第7番では第4楽章も非常にエキサイティングです。ちょうどロックのドラムスのリズムの取り方と同じで、弱拍にアクセントを置くようになっています。そして、この単純なリズムを、第2楽章同様に執拗に繰り返します。そして、興奮が最高潮に達するところで曲が締めくくられます。名伯楽として知られるエド・デ・ワールトのタクトで会場が興奮のるつぼになることを期待していたのに、残念です。

 演奏によって差はありますが、繰り返しをいれて40分前後でしょうか。最近は速いテンポで、よりリズミカルに、快活な演奏が主流です。コレクションは以下の通りです。
  サイモン・ラトル:ウィーン・フィルハーモニー
  朝比奈隆:大阪フィルハーモニー交響楽団
  ヘルベルト・ブロムシュテット:ドレスデン・国立歌劇場管弦楽団
  ヘルベルト・ブロムシュテット:ライプツィッヒ・ゲバントハウス管弦楽団
  ヘルベルト・フォン・カラヤン:ベルリン・フィルハーモニー(1977年・セッション)
  ヘルベルト・フォン・カラヤン:ベルリン・フィルハーモニー(1978年・ライブ)
  クラウディオ・アバド:ベルリン・フィルハーモニー
  セルジュ・チェルビダッケ:ミュンヘン・フィルハーモニー
 テレビで放送されたコンサートの録画ですが、
  マリス・ヤンソンス:バイエルン放送交響楽団
  ズービン・メータ:ウィーン・フィルハーモニー
  パーボ・ヤルヴィ:ドイツ・カンマーーフィルハーモニー管弦楽団
  ヘルベルト・ブロムシュテット:NHK交響楽団

 変わったところでは、木管楽器のアンサンブル用の編曲もあり
  ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブル
による演奏もあります。

 好みがありますので一概に言えませんが、《舞踏の権化》を堪能するならカラヤン/ベルリン・フィルでしょうか。落ち着いて聴くならブロムシュテット。TouTubeでもいろんな演奏が簡単に見つけられると思います。PCのスピーカーが音割れするくらいで聴くとちょうどよいかも。