METライブビューイング 《アドリアーナ・ルクブルール》

 2月のライブビューイングは、19世紀末から20世紀前半にイタリアで活躍した作曲家、チレア(1866-1950)の代表作です。1902年に初演されたさオペラですので、プッチーニの《蝶々夫人》とほぼ同時期です。ドラマチックで、聴きやすく、わかりやすい音楽です。ただ、主人公のアドリアーナが18世紀に実在の大女優ということもあり、やはり大歌手が歌わないと様にならず、他の歌手たちも含めて歌唱的にも難曲のようで、演奏頻度は非常に低い作品です。私もディスクは持っておらず、文字通り初めて観ました。

 この日は、これまでにも何度も紹介した世界のDiva・ネトレプコの熱唱に加えて、その他の歌手たちも素晴らしく、稀に見るハイレベルな舞台でした。チレアの音楽は、オーケストレーションがダイナミックでありながらも、一つ一つのメロディラインがはっきりしていて聴きやすい。ノセダの指揮も、歌手とオケのバランスをうまくとり、見応え,聴きごたえのある公演でした。

 舞台は1830年のパリ、コメディ・フランセーズという有名劇場。三角関係の末の悲劇の物語です。登場人物と配役は、
    看板女優・アドリアーナ・ルクブルール:アンナ・ネトレプコ
    ルクブルールの恋人・騎士のマウリッツォ(実はザクセン伯爵):ピュートル・ベチャワ
    マウリッツォの元恋人で、ブイヨン公妃(公爵夫人):アニータ・ラチュヴェリシュヴィリ
    ブイヨン公爵:マウリツィオ・ムラーノ
    舞台監督・ミショネ:アンブロージョ・マエストリ
    この日の指揮は、ジャナンドレア・ノセダ

 第1幕:コメディ・フランセーズの楽屋
 アドリアーナとマウリッツォは恋人同士ですが、マウリッツォは伯爵という身分を隠しています。一方、舞台監督のミショネもアドリアーナを密かに愛していますが、アドリアーナの気持ちを知って諦めます。ブイヨン公爵やその取り巻きも登場して、それぞれがアリアを歌います。ソプラノ、テノール、バリトンと声質の異なるアリアを楽しめます。
マウリッツォは遠征で手柄を立てて帰国。アドリアーナと会い、褒美がないとこぼしますながらも、二人で一夜を過ごす約束をします。最後に手紙のやり取りがあり、マウリッツォはかつての恋人であるブイヨン公妃に呼び出され、アドリアーナもブイヨン公爵の別荘に行くことになってしまいます。

 第2幕:ブイヨン公爵の別荘
 ブイヨン公妃が待つ別荘にマウリッツォが現れる。ブイヨン公妃はマウリッツォ、実はザクセン伯爵が冷たくなったことをなじるも、夫であるブイヨン公爵が現れたため、別室へ逃れる。そこへアドリアーナも現れると、マウリッツォはが実はザクセン公爵であることを悟りますが、同時にあ マウリッツォは別室の女性を逃がしてくれるようにアドリアーナに頼みます。暗がりの中で、アドリアーナとブイヨン公妃は違いが恋敵であることを知ります。
アドリアーナとマウリッツォの二重唱のほか、アドリアーナとブイヨン公妃の二重唱も聴き応え十分です。

 第3幕:ブイヨン公爵邸の大広間で、舞台が設えられている
 アドリアーナとブイヨン公妃はこの日初めて顔を合わせますが、声から別荘で出会った恋敵と知ります。アドリアーナは余興に朗読を頼まれます。ここで、 アドリアーナは夫を裏切った女性の物語を朗読します。これもオペラですからアリアとして歌われます。その後、侮辱されたと感じた公妃が怒りに燃えてアリアを歌います。
この幕では冒頭で、舞台での演技としてバレエが演じられます。演出の見どころですが、今回は小さな舞台の上で、少人数で華麗な舞が堪能できました。

 第4幕:アドリアーナの自宅か、コメディ・フランセーズの楽屋
 アドリアーナとは病で休んでいます。そこへ彼女がマウリッツォに贈ったスミレの花が届けられます。この花はマウリッツォが公妃に渡してしまっていたため、この花をアドリアーナに送りつけてきたのです。アドリアーナはマウリッツォが花を送り返してきたと嘆きますが、直後に苦しみだします。花に毒が仕掛けてありました。マウリッツォが駆けつけるも、時すでに遅く、アドリアーナは息を引き取ります。

 ストーリーは三角関係のもつれの殺人事件を、始まりから終わりまで描いているにすぎず、他にも同じようなストーリーのオペラはいくつもあります。しかし、今回の上演はネトレプコ、ベチャワ、ラチュヴェリシュヴィリの3人があまりにも素晴らしく、やや陳腐なストーリーも、むしろ3人の歌唱を浮き上がらせるためかと思うほどです。現地で生で見た人たちが羨ましい。

 そのうちディスクでも販売されるでしょうし、来年にはテレビでも放映されるでしょう。今から楽しみです。このMETライブビューイングは、1年前のシーズンの映像をWOWOWで放送しています。視聴できる方は、一度Monthly Programをご覧ください。

 次回は、今度の金曜日からで、有名なビゼーの《カルメン》です。椿姫と並ぶ人気作。初めての方にも入りやすい名作です。