映画『パバロッティ』

 久しぶりに映画を観に行きました。
  『パバロッティ〜太陽のテノール(原題:Pavarotti)』です。
 ルチアーノ・パバロッティの名前は知っている人も多いでしょう。90年代には「三大テノール」として一世を風靡し、トリノ冬季オリンピックの開会式で「誰も寝てはならぬ」を歌いました。彼の生涯を描いたドキュメンタリー映画です。実上映時間115分と長めですが、バックに流れる音楽とパバロッティの美声、まさに太陽のテノールに圧倒されて時間が過ぎていきます。

 録音も映像もそれほど持っているわけではありませんが、彼の声は突然聴いてもそれと分かるほどに独特です。突き抜けるように明るく、艶があり、そしてパワフル。一度聞いたら忘れられない声です。生で聴きたかったと思いますが、今回の映画では、録音原盤を基にしっかりとしたミキシングがされているようで、かなり忠実に再現されていると思います。彼の声を聴くためだけでも十分に価値のある映画です。

 大きな体と人懐っこい笑顔に世界中の人が魅了されたようで、クラシック音楽の枠を超えて様々な音楽家と共演しています。また、自らが戦争や様々な苦労を体験したことから、チャリティ活動にも熱心でした。映画中でも描かれているイギリス・ダイアナ妃との親交がそのきっかけとなったようです。

 映画の中では音楽家を始め、マネージメントに関わった人たちの話から、いかに厳しい世界を渡って行ったのか、垣間見ることができます。そして何よりも彼の家族が語る彼のプライベート、多くの写真や映像とともに、偉大な芸術家も一人の人間として生きていたことを知ることができます。

 現在、パバロッティの再来と言われるテノール歌手もいないわけではありませんが、彼ほどに魅力的で、カリスマ性がある歌手はもう2度とでないでしょう。そして、パバロッティは永遠に語り継がれることでしょう。

 映画としては、本当はもっと早くに封切られるはずでしたが、結局9月はじめから。ミッドランドスクエアシネマと伏見ミリオン座で上映されています。

ソフィア・コッポラの《椿姫》

 先週土曜日からイタリア・ローマ歌劇場で上演されたヴェルディの歌劇《椿姫(la Traviata;ラ・トラヴィアータ)》の録画が映画館で上映されています。

 これまでに紹介したニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の《ライブビューイング》とは少し違い、ナビゲーターはつかず、バックステージ・ツアーもありませんが、イタリアでは評判になった舞台だそうです。

 HPここ:http://sofia-tsubaki.jpです。名古屋・港区のTOHOシネマズ 名古屋ベイシティで10月20日まで、名古屋・新栄の名演小劇場で10月21日から2週間の間上映されます。

 評判の最大の理由は演出を映画監督であるソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)がつとめ、出演者の衣装をファッションデザイナーのヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)がデザインしたこと。

 コッポラ監督の映画は見たことはありませんが、《ゴッドファーザー》のフランシス・コッポラ監督のお嬢さんです。《ゴッドファーザーⅢ》では主役であるドン・コルレオーネ(アル・パチーノ)の娘役を演じた女優を覚えているでしょうか? 監督は自分の娘を抜擢したのですが、エンディングでドン・コルレオーネの身代わりのように殺されてしまいます。映画監督としてのキャリアを順調に積んでいるようですが、今回の《椿姫》はオペラでは初演出で注目され、成功を収めました。

 また、ヴァレンティノはご存じの方も多いでしょう。私は全く縁がありませんが、有名なブランドだそうです。終演後のカーテンコールの最後に登場して客席から大きな拍手を送られていました。

 ローマ歌劇場は3年前に行ったことがあり、正面玄関の雰囲気や豪華な客席が印象に残っています。しかし、イタリアの首都にありながら、ミラノやボローニャ、ヴェネチアやトリノに後れをとり、国内での評価はそれほど高くありません。事前のチラシでも演出やデザインのことばかりを注目するコメントが掲載されていたため、演奏にはあまり期待をしておりませんでした。出演は
ヴィオレッタ・ヴァレリー:フランチェスカ・ドット(ソプラノ・Francesca Dotto)
アルフレード・ジェルモン:アントニオ・ポーリ(バリトン・Antonio Poli)
ジョルジョ・ジェルモン:ロベルト・フロンターリ(バリトン・Roberto Frontali)
指揮:ヤデル・ビニャミーニ
演奏:ローマ歌劇場管弦楽団と合唱団

演出や舞台美術はオーソドックスで、あまりゴテゴテしすぎず、歌手に注意を向けていることができます。作品の時代である19世紀半ばのパリの社交界(裏の社交界)をイメージしたのでしょうか、豪華な衣装は見ごたえがありました。演出家が女性だからでしょうか、タイトルロールである椿姫=ヴィオレッタが常に中心で、初めての人にも非常にわかりやすいとおっもいます。
オーケストラの演奏も、歌手ごとに色を変え、メリハリのあるいい演奏でした。指揮者も若手で、他では聴いたことはありませんが、うまくまとめ上げていて将来が期待されます。

オペラは総合芸術と言われます。音楽、物語(文学性)、衣装や舞台美術、舞踊(このオペラでは途中でバレエのシーンがあります)と、全てが素晴らしく、まさに総合芸術を堪能できる部隊です。

《椿姫》はストーリーがわかりやすく、オペラの醍醐味を堪能できる作品です。上演頻度も高く、これまでにも何度か取り上げてきました。あらすじも含めて、参考にして下さい。昨年のMETライブビューイングはここ、5年前のMETライブビューイングはここここ、また、ここここもみてください。

 《プリティーウーマン》という映画をご存じの方も多いでしょう。《椿姫》のパロディです。ここに少し感想を書きました。 

《ヴァチカン美術館~天国への入り口》

はじめて3Dの映画を見に行きました。現在、名駅・ささしまのTOHO109で上映されています。別に、栄・パルコ8階のセンチュリーシネマでは2D版が上映されているようです。(映画の公式HPはここです

これはヴァチカン美術館公認の映画を謳っていて、初めてヴァチカン宮殿に4K3Dのカメラを入れて撮影されたとのこと。美術館部分だけではなく、もちろんシスティーナ礼拝堂の内陣にも入って、ミケランジェロの描いた天井画(これです)や《最後の審判》(これです)も撮影されています。

4Kというだけあって、確かに精緻です。そして、アップでとらえているので、非常に見応えがありました。昨年末に徳島県鳴門市にある大塚国際美術館へ行って、これら壁画の実物大の陶板画を見てきました。迫力には圧倒されましたが、時間をかけてしっかり見るには大きすぎ、あるいは、絵のある位置が高すぎて疲れます。その点、今回の映画は、端から端までじっくり映してくれているわけではありませんでしたが、細部をうかがうことができました。

3Dの見所は多くの彫像群です。有名なミケランジェロの《ピエタ》(これです)は見応え十分でした。

ヴァチカン、つまりカトリックの総本山ですから、すべてがキリスト教に関わる美術品を並べていると何となく思っていたのですが、大違いでした。古代ローマ時代につくられ、土中に眠っていた彫像などがちょうどルネサンス期に大量に見つけられたようで、これらが大切に保管されているそうです。「目から鱗が落ちる」とはこのこと。ルネサンスの精神が最も保守的なところにまで入っていたとは。

アルゲリッチ 私こそ、音楽!

名古屋・伏見ミリオン座で10月始めから上映されています(もうすぐ終わりかな?)。

監督:ステファニー・アルゲリッチ
マルタ・アルゲリッチ、アルゼンチン生まれのピアニストで、現代の巨匠といってもいいでしょう。1941年生まれ、「ピアノ界の女王」という人もいます。かくしゃくどころか、現役で世界中を飛び回っているようです。

この映画は映画監督でもある彼女の娘が撮ったドキュメンタリー。ただ、音楽家としての芸術活動を追うのではなく、あくまでもプライベートな姿、撮影者にとっての母親である一人の女性を記録するようなタッチでつくられています。アルゲリッチは極端なマスコミ嫌いで知られ、ほとんど取材を受けないそうですから、雑誌などでのインタビューというかたちでもなかなか生の言葉を聞くことはできません。映画中では音楽論というよりも、どのように音楽と向き合っているのかを垣間見ることができる会話も盛り込まれており、ふだんはCDやテレビを通して聴いているだけの音楽家に少し親しみがわきました。

マルタ・アルゲリッチには3人の娘さんがいます。監督を務めた三女のステファニーのほか、3人ともファミリーネームが異なります。いずれも映画中に登場していますが長女・リダ・チェン、次女・アニー・デュトワ。そして、この三女・ステファニーの父親スティーブン・コヴァセヴィッチも。なかなかわかりにくい家族、親子関係で、かなり特殊な人たちかなとも思いますが、プライベートな姿はただの人。決して別世界の人ではありません。

興味のある方は是非。

映画」『椿姫』ができるまで

今年が作曲がヴェルディの生誕200年ににあたることは何度か書きましたが、この映画もメモリアルにあわせて作られたようです。オペラ上演の舞台裏をとらえた非常にユニークなドキュメンタリー映画です。

一昨年の夏にフランス南部のエクサン・プロヴァンスで開催された音楽祭で上演されたヴェルディの歌劇『椿姫』の上演に至までの、主役であるヴィオレッタ役のナタリー・デセイの練習風景を中心にしたドキュメンタリー。主役のデセイが大好きだということもありますが、映画としてつくられていることにも興味をそそられて観に行きました。

『椿姫』のストーリーに従って練習部屋や舞台での歌手と演出家や指揮者とのやりとりが中心。歌声は練習での声をそのまま拾っているので、時に口ずさむ程度になることもあり、練習のやり方がよくわかりました。また、この手のドキュメンタリーでありがちな、最後を本番の一場面で締めくくるというような作り方ではなく、ずっとリハーサルが続いていくかのようなエンディングです。

歌手へのインタビューなどはほとんどないため「生の声」は期待するほど聞けないのですが、演出家の要求に対して歌手がどのように応じていくのか、できあがった舞台からは想像がつかないところを十分に観ることができます。

この上演の演出は非常にシンプルなつくりで、歌手は歌と演技にかなり集中できるようです。それだけに演技にかなり力を入れていて、観ているこちらもちょっとあつくなってしまいました。

名古屋・伏見ミリオン座で先月末から上映しています。たぶんあと1か月くらいはやるのではないでしょうか? 

25年目の弦楽四重奏

『25年目の弦楽四重奏』、原題:A Late Quartetという映画です.
7月の中旬から始まり、お盆で打ち止めになりましたが、名古屋・伏見ミリオン座で上映されていました。

 
「Fuga(フーガ)」という架空の弦楽四重奏団の音楽と人間関係を描いた映画。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番を全体の基調に据えてつくられています。以前に紹介した『カルテット』といい、気にしてみると、音楽ネタの映画は結構多いようです.

弦楽四重奏、string quartetというのは、ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロという組み合わせで演奏される曲種で、18世紀後半、ハイドンによって確立されたジャンル。オーケストラの基本形ともなっていて、クラシック音楽における器楽合奏の最も基本的なスタイルです。

4人集まればできるわけですが、弦楽四重奏を専門にした合奏団が世界中にたくさんあります。多くは長年連れ添って独自の音色、響きを作り上げています。この映画では、結成25周年を迎え、記念コンサートを目前に控えた弦楽四重奏団の最年長であるチェリストがパーキンソン病を発症してしまい引退を決意、ここからメンバー間に亀裂が入ってしまうというストーリーです。

これまで、弦楽四重奏は余り聴いたことがなかったのですが、これを機にベートーヴェンの弦楽四重奏全集(全部で16曲つくっています)を買って聴いています.ベートーヴェンにとっては交響曲と並んでかなり重視したジャンルのようで、非常に中身が濃く聴き応えがあります.皆さんも機会があればぜひ一度聴いてみてください.

音楽ネタの映画ついでに、9月末から『椿姫ができるまで』と題した映画が同じ伏見ミリオン座で上映されます.私の大好きなナタリー・デセイが主演したヴェルディ作曲の歌劇『椿姫』のメイキング・ドキュメンタリーです.

認知症を描いた映画を観てきました

スペインで作られた『しわ(原題:Arrugas)』というアニメーション映画を観ました.今、名古屋・伏見ミリオン座でやっています。公式HPはここ

元銀行支店長の男性が、軽い認知症の症状が出始め、息子夫婦に厄介払いされるように老人ホームに入れられてしまうところから始まります。はじめのうちは大抵のことは一人でできていましたが、徐々に認知症が進行していきます。老人ホームで同室の男性と何度か諍いを起こしたりしながらも、徐々に打ち解けていきます.が、最後に一緒に「脱走」を試み、交通事故.これがきっかけで認知症が進行してしまうというストーリーでした.

アニメということもあってか変に感傷的になることもなく、そうかといって茶化したり、斜にみたりすることもなく、現実を正面から見据えて描いているような気がしました.

映画の最後に、101歳のおばあさんが歌うスペインの民謡(?)が流されていました.このおばさんは認知症がかなり進行していて、普段はほとんど意識があるのかないのかわからないような状態だそうですが、その歌だけはしっかりと歌えるのだそうです.

原作は同じくスペインの劇画で、映画は国内で非常に高く評価されたそうです.日本ではジブリが配給しているようです.

映画『カルテット』のリゴレット

以前紹介した『カルテット』という映画のエンディングで使われていた
ヴェルディ:リゴレットのCDを入手。早速聴いてみました(^-^)/

映画を観た時に感じたように、ソプラノは高音でありながらも柔らかく丸みがあり、テノールは明るく澄んだ声質。何度聴いても決して飽きることがないような素晴らしい演奏でした

DECCA
レーベル(輸入盤)で、Verdi: Rigoletto -- Highlightsと題されています。つまり全曲入っているわけではありません。
演奏は
マントヴァ公爵(テノール):ルチアーノ・パヴァロッティ
ジルダ(リゴレットの娘)(ソプラノ):ジェーン・サザランド
リゴレット(公爵づきの道化)(バリトン):シェリル・ミルンズ
マッダレーナ(殺し屋の妹)(メゾソプラノ):Huguette Tourangeau(フランス人らしいのですが、読めません(~_~
ロンドン交響楽団、指揮:リチャード・ボニング
CDのトラック14 "Bella figlia dell'amore(美しい恋の乙女よ)"です.
Webサイトはここです.

1971年、パヴァロッティが36歳、サザランドが45歳の時の録音です。お二人とも既に亡くなっていますが、年齢的にはともに絶頂期と言っていい時期ですね。指揮者のボニングとサザランドはご夫婦。当時あまり顧みられなかった19世紀初め頃のイタリア・ベルカント・オペラに光を当てた功績者です。パヴァロッティはそうした中で見出された逸材、20世紀後半を代表するテノール歌手です。

プリティー・ウーマン

先週、『プリティー・ウーマン』という映画を観に行きました。約20年前の映画です。挿入曲が有名で、映画は知らなくても、この曲を知らない人はいないでしょう。

この数年、映画を観に行く機会が多くなったのですが、「午前10時の映画祭」と題して、過去の名画(洋画ばかりです)を1週間に1本ずつ、毎朝10時に1回だけ上演する企画によく通っております.この辺りでは小牧のシネコンだけでしかやっていなかったのですが、今年から上演期間を2週間にして、名古屋市内の映画館でも上演されるようになったはずです。先週と今週が『プリティー・ウーマン』でした。来週からは『ウェストサイド・ストーリー』です。

さて、なぜわざわざ『プリティー・ウーマン』を取り上げたかといいますと、この映画の下敷きになっているのがヴェルディ作曲の『椿姫(原題:La Traviata)』というオペラで、この映画の中でカップルで観に行くオペラも『椿姫』です。オードリー・ヘップバーン主演の「マイ・フェア・レディ」が下敷きとしている記事もありますが、ちょっと違う気がします.

『椿姫』というオペラはこれまでにも何度か紹介しています(ここ)が、19世紀半ばのパリが舞台で、高級娼婦・ヴィオレッタと田舎から出てきたお坊ちゃんとの儚い恋の物語です。最後はヴィオレッタが結核で死んでしまいます。一方、映画は現代のロサンジェルスを舞台に、ジュリア・ロバーツ演じる場末の娼婦・ヴィヴィアンと、リチャード・ギア演じるニューヨークから来たエリートビジネスマン・エドワードの恋。オペラ同様に、邪魔が入り、ちょっとこじれます。ただ、映画のいいところは、ハッピーエンドであるところでしょうか。

ロスからシスコへ自家用ジェット機で行くのはいかにもという演出です.しかし、ロスにはいい歌劇場はなく、シスコの歌劇場、サンフランシスコ歌劇場はアメリカ3大オペラハウスの一つに数えられる名劇場.従って、わざわざ行く価値があるわけです.

観劇のシーンでは、『椿姫』の第1幕の前奏曲と「乾杯の歌」、ヴィオレッタのアリア「花から花へ」(一部)、第2幕のヴィオレッタのアリア「私を愛して」、そして第3幕終曲のヴィオレッタが息を引き取るところの音楽が使われていました.最後の曲は舞台は写さずに、ヴィヴィアンが涙する様子を写しているだけだったのですが、この曲はいつ聴いても目頭が熱くなります.

映画のラスト、白馬の王子をまねてか白色のリムジンに乗りエドワードがヴィヴィアンを迎えに行き、花束を持ってオープンルーフから身を乗り出し、階段を上っていくところ.ここでもオペラ第2幕のアリアを使っています.

興味のある方はぜひ見較べてください.

カルテット

今、『カルテット 〜人生はオペラハウス』という映画がロードショー中です.

名優・ダスティン・ホフマンの初監督作品で、もともとは戯曲として書かれていたものを、「戦場のピアノスト」と同じ人が脚本化した作品.映画の舞台は引退した音楽家のための養老院。運営資金を稼ぐためのコンサートにむけた準備中に、かつてのスター歌手が入所してくるところから始まります.主演の4人はイギリスの有名は俳優ばかりだそうですが、何よりびっくりしたのは、養老院の入所者として登場していた「かつての音楽家たち」が本当に「かつての音楽家たち」であること。従って、演奏は実際に彼ら、彼女らがその場でやっているものだったこと。演奏にも、演技にもリアリティがあります。

映画の中では、彼らの演奏だけでなく、随所に名曲がちりばめられていて、これだけでも十分に楽しめました.

映画の題名「カルテット」とは、四重奏、または四重唱を指して使われる語ですが、ここではヴェルディ作曲のオペラ《リゴレット》の中で歌われる『美しい乙女よ(原題:Bella figlia dell'amore)』というソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンによる四重唱を、特にさしています。この曲は、映画のクライマックスと同時にエンディングとして用いられています.オペラ史上最も美しい四重唱といわれる曲ですが、ここでの演奏は、映画の出演者によるのではなく、ソプラノ:ジョーン・サザーランド、テノール:ルチアーノ・パヴァロッティ他による名演・名盤です.


引退した音楽家のための養老院、映画ではロンドン郊外にある『ビーチャム・ハウス』という名称でした。ビーチャムは実在のイギリスの作曲家。イギリスにこのような施設があるかどうかは知らないのですが、イタリア・ミラノには実在します。日本語では『音楽家の憩いの家』と呼ばれていて、ヴェルディが亡くなる直前、つまり今から100年以上前に私財を投じて作った施設です。現在も運営されていて、ヴェルディ曰く、「私の最高傑作」とのこと。

今年はイタリア・オペラの巨匠、ジョゼッペ・ヴェルディの生誕200年。ベルナールと同い年ということになりますが、イヴェントや関連本の出版が相次いでいます。この映画は昨年製作されたイギリスの映画ですが、メモリアルを意識して作られています。映画はコンサートの場面で終わるのですが、その始まりに観客たちがヴェルディの有名な肖像画をバックに記念撮影をしています.

名古屋・伏見の『ミリオン座』でやっています.

イングリッド・バーグマン主演《秋のソナタ》

昨日『秋のソナタ』という映画をみてきました。
主演はイングリッド・バーグマン、監督・脚本がイングマール・ベルイマン、スウェーデンの映画です。

題名とイングリッド・バーグマンの没後30年記念のデジタルリマスター版というところに惹かれて観に行きました。監督のベイルマンという人は、他の作品を知らないのですが、チラシの文句を借りるなら、黒澤明、フェデリコ・フェリーニと並ぶ世界的巨匠。今作は1978年の作品で、イングリッド・バーグマンの遺作にして最高傑作とのこと。

主人公は有名なピアニストである母親、美人で恋愛歴も派手だが、その一方で家庭を顧みず仕事(音楽)に打ち込む。娘は、いろんなコンプレックスを抱え、母親の愛情に飢えています。そんな二人が久々に再開して・・・・。詳しいストーリーはHP (http://www.bergman.jp)を見ていただくとして、わずか1日の出来事の中で葛藤、あるいは憎悪を見事にというか、克明に描いています。子どもの頃の、いわばトラウマが大人になっても消えず反発する娘。母親のほうは? 素直に自分をさらけ出せないもどかしさから激昂するのでしょうか? 父と息子、あるいは一般に親と子と置き換えて、いろいろ考えさせられるところがありました。

今週いっぱい、名古屋・新栄の名演小劇場でやっています。

この映画ではイングリッド・バーグマン演じるピアニストが演奏するシーンが一ヶ所あります。ショパンの前奏曲(プレリュード)第2番。もちろん演奏はアテレコですが、なぜこの曲なのか考えています。24曲でひとまとまりとなっている前奏曲集の中で、多分最も暗い感じのする曲です。

ちなみに、イングリッド・バーグマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した『ガス燈』という映画では有名なソプラノ歌手の娘役を演じています。母親を強盗に殺されてしまうところから始まるサスペンスで、『秋のソナタ』とは全く趣が異なります。主人公は、その後声楽の勉強をするも才能乏しく諦めるのですが、その主人公がレッスンを受けているシーンで歌ったのは、ドニゼッティ作曲《ランメルモールのルチア》の中のアリアです。私の好きなオペラの一つで、詳しくはここここをみてください。

カストラート2

昨日のつづきです。

映画の中ではカストラート歌手であるFarinelliが実際に歌うシーンが何度もあります。俳優が歌えるわけもなく、コンピューターで推測されるカストラートの歌声を再現して、役者は「口パク」で合わせて撮影したようです。

スター歌手ゆえ(..;)、女性にはもてたのでしょう。映画でも多くの女性と「濡れ場」を演じていました。去勢した男性ですので、なんと一緒に演奏旅行していた兄と役割分担しているように描かれていました.(^_^;

途中で当時ロンドンで活躍していたヘンデルが登場し、自分のオペラに出てくれるように依頼する場面が出てきました。これが実話かどうか確認していませんが、あってもおかしくないでしょう。昨日も触れましたが、ヘンデルのオペラではカストラート用に書かれた役柄あり、かなりの難局が用意されています。18~19世紀には、オペラの作曲に当たって出演する歌手があらかじめ決まっていて、その力量に合わせて作られていました。したがって、「難曲」として現在に残されているということは、作曲当時、それだけの能力を持った歌手がいたということを意味しています。

ちょっと先になりますが、5月18日~24日に、いつも紹介しているMETライブビューイングでヘンデル作曲「ジュリアス・シーザー」が上演されます。シーザーとクレオパトラとの出会いを描いた筋で、シーザー役がもともとカストラート、今回はカウンターテナーが演じます。クレオパトラ役はソプラノで、私の愛しいナタリー・デセイが務めます。時間のある方はぜひ。

カストラート

先日、テレビで「カストラート」という映画をやっていました(2月10日、WOWOWシネマ)。1994年のフランスとイタリアの合作で、原題名は"Farinelli"、主人公の名前です。

「カストラート」とは18世紀を中心にヨーロッパで活躍した少年時代に去勢した男性歌手のこと。英語で"castration"は去勢という意味です。当時は、ボーイソプラノとして有能な少年が何らかの理由で去勢し(去勢され)、高音で歌える能力を持ったまま大人になった歌手たちが相当数いたようで、彼らの中で現在まで語り継がれている有名なカストラートがFarinelli、実在の人物です。

ボーイソプラノの美しい声を持ちながらも、体力があり大きな声で長いフレーズが歌えるため重宝され、当時もてはやされたオペラ・セリアというジャンル(正歌劇といい、歴史上の偉人などを主人公にした教訓話などが多い)では、男性主役として活躍していました。

映画では、少年時代にケガをしたことがもとで去勢せざるをえなかったことになっていました。当時は、ボーイソプラノとして有能だが、家庭が貧しいような子どもたちが、お金を稼ぐために、あえて去勢されていたようです。もちろん、消毒もなく、手術法もいい加減な時代ですから、いのちがけです。

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世紀、音楽史的にはバロックから古典派にかけての時代、バッバが1685年生まれで1750年に亡くなり、モーツァルトが1756年生まれで1791年に亡くなっています。オペラ・セリアのヒーロー役の他、舞台に立つ女性がまだ少なかったため、女性役や少年役を演じていたようです。バッハと同年生まれの作曲家ヘンデルにはカストラートを想定したオペラが幾つかあり、現在でも上演されています。もちろんカストラートはいませんので、カウンター・テナー(裏声で高音を歌う男性歌手)が演じます。モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」にはソプラノ(もちろん女性の)が演じる少年役がありますが、これも半ばカストラートを想定しているのでしょう。

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世紀に入り、人道的におかしいということでどんどん少なくなり、19世紀半ばにはほとんどいなかったようです。現在は内分泌系の異常などによって思春期に声帯が肥大せず、声変わりしなかった人がまれに「ソプラニスタ」として活躍しています。また、少年役(あるいは若い男性役)をソプラノやメゾソプラノに演じさせるように作曲されたオペラもあり、このような役柄を日本語で「ズボン役」といいます。

調律師2:バッハ《フーガの技法》

先日紹介した映画「ピアノマニア」で録音されていたピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)が弾いていいるバッハの《フーガの技法》(Die Kunst der Fuge、英語表記はThe Art of Fugue)のCDを入手.早速聴いてみました(今も流れていますが・・・(^^))

たしかにただのピアノの音ではありません.普通に想像するピアノの音に比べるとかなり固く、響きの広がりも極端に抑えています.演奏も感情を押し殺して、淡々と音が流れていくような感じです.気が立っているとき、むしゃくしゃするときに落ち着かせるにはもってこいです(^_^)

ピアノを習っていた方はご存じでしょうが、バッハの時代、バッハは1685年生まれで1750年になくなっていますが、現在のようなピアノはまだありません.今のピアノの原型のようなものが初めてつくられたのが1700年頃といわれています.バッハ自身はおそらくピアノ(当時はpianoforteとかfortepianoと呼ばれていた)で演奏することを想定した曲は作っておらず、チェンバロやクラヴィコードというピアノとはややしくみの異なった鍵盤楽器で演奏したと考えられています.

これらの楽器は音域もさほど広くはなく、それほど大きな音も出せません.音量の幅も小さく、それほど広く響き渡るような音もでないため、現在のピアノで演奏するに当たってはベートーヴェンやショパンと同じような演奏方法では曲の良さをうまく表現できないと考えるピアニストも多く、鍵盤のタッチなどいろいろ研究、工夫するようです.

もちろん、当時を再現する意味でチェンバロなどを使って演奏される場合も多く、これはこれでピアノとは違った味わいがあります.

以前、エフゲニ・コロリオフ(Evgeni Koroliov)というロシアのピアニストを聴いたことがあります.2008年3月の名フィル定期ですが、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を弾いたあと、アンコールでバッハの(たぶん)フランス組曲の中の何かを弾いたと記憶しています.モーツァルトをを聴いたときには「これこそモーツァルトの音だ!」と思って感動した直後に、「これこそバッハの音だ!」と思える音を聴きました.同じピアノ(スタインウェイ、もちろん途中で調律のし直しなどはなく)で、「こうも異なった音が出せるのか!」と三重に感動した(O_O)のを昨日のように覚えています.

今聴いているエマールのバッハは、このときのコロリオフのバッハと比べると、ややタッチが強くて音の粒が大きいような気がします(生とスピーカーの違いかもしれませんが・・・)

来月の名フィル定期ではベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》が取り上げられます.エマールもベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(アーノンクール指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団)を出しているので、一緒に買ってみました.バッハとは対照的に力強く、非常ダイナミックです.ただ、カデンツァなどはバッハよりも繊細かと思えるくらいに粒のたったと透明感のある音でうっとりとさせられます.

調律師

先日「ピアノマニア」という映画を観てきました.最近ちょっと映画ずいているのですが、この映画は、新たにレコーディングする曲に合うピアノの音を、調律師と一緒になってどのように作り上げていくのかを描いたドキュメンタリー.

ピアノを持っている方であれば、年1回くらいは調律をされていると思いますが、ここで出てくる調律師は、単に「音あわせ」しているだけではなく、ピアニストの好みの、あるいは望む音を一緒になってつくっていく「collaborator」のような存在.

フランスのピアニストで、どちらかというと現代音楽を得意としているピエール=ロラン・エマールというピアニストが、バッハの「フーガの技法」という有名な曲をレコーディングすることになり、ピアノメーカーであるスタインウェイ社の技術者と一緒に1年がかりで音をつくっていきます.

実際にできあがったCDはこれ(UCCG1386、
フーガの技法 エマール(p)【CD】-バッハ(1685-1750) )で、是非聴いてみたいと思っています.ちなみに、このCDの紹介でも
「現代音楽の分野でその名を轟かせ、近年はアーノンクールとの共演によるベートーヴェンや弾き振りによるモーツァルトなど、クラシック作品でも確固たる地位を築いているピエール=ロラン・エマールのDG移籍第1弾は、なんとバッハ作品。しかも、1740年代に作曲され、バッハの死後に出版された未完の大作『フーガの技法』です。特殊な調律をほどこしたスタインウェイによる演奏。」
とピアノにも言及されており、ピアノ曲の一般的な録音とは一線を画す工夫があることがわかります.
実際に、映画の中では「これでもか」というくらい既成のピアノに手を加えています.

また、録音時の様子も収録されていて、なかなか興味深い映像です.途中で、巨匠ブレンデルや新進気鋭のランランが出てきて、コンサートに向けてのベストのピアノ選び、あるいはピアノの調整を求めている様子が映っています.普段我々は演奏家がステージに出てきてからしか見ないわけですが、事前に(少なくとも直前に)どんな準備をしているのかがわかって非常におもしろい映像でした.

ちなみに、映画は名演小劇場(
名演小劇場)で今月いっぱいくらい上映されているようです.