歌劇《ノルマ》のあらすじ

 主な登場人物と配役は
ガリア地方のケルト人部族の巫女の長、ノルマ(ソプラノ):ソンドラ・ラドヴァノフスキー
ノルマの父で部族長、オロヴェーゾ(バス):マシュー・ローズ
若い巫女、アダルジーザ(メゾ・ソプラノ):ジョイス・ディドナート
ローマ人の総督、ポリオーネ(テノール):ジョセフ・カレーヤ
  この他に、
ケルトの兵士や住民をMETの合唱団が務めています。
指揮はカルロ・リッツィ、演出はデイヴィッド・マクヴィカー。

 舞台は紀元前の共和制ローマ支配下のガリア地方。支配されているケルト人はドルイド教徒とされています。ただし、ドルイド教という宗教はなかったようで、部族内の身分制度、または最も身分の高い階層をドルイドと言うのではなかったかと思います。ただ、今回の演出でも強調されていましたが、森や樹木、特に宿り木を神木として崇拝の対象にしているようです。神木とその周辺に人々が集まり、その地下に神木の根を柱にするようにノルマの住居をしつらえるというこった舞台装置でした。

第1幕
 ローマ人の支配が厳しく、この地方のケルトの部族は反乱のために蜂起することを願っていて、巫女であるノルマを通じて神託が降りるのを待ちわびています。ここへノルマが登場し、ひたすら平和を説き、《Casta Diva; 清らかな女神》と始まる有名なアリアを歌います。このオペラの最大の聴き所であり、歌手にとっては最も難しいアリア。何度聴いても心にしみます。ノルマが平和を説く理由は、ノルマはローマの総督ポリオーネと密かに結ばれていて、2人の子どもを隠して育てているからです。しかし一方で、ノルマはポリオーネの気持ちが自分から離れていることを感じて悩んでいます。この複雑な心境を歌ったすばらしい独唱です。
 ポリオーネは若い巫女であるアダルジーザに心を移していて、一緒にローマへ以降を誘っています。アダルジーザもポリオーネをにくからず思っているため、相手の名前を隠してノルマに相談に来ます。巫女が男性と通じることは禁じられていますが、ノルマは自分のことがあるため、アダルジーザを励まします。そこへポリオーネが現れて、互いの関係が全て明らかになります。事情を悟って悩むアダルジーザ、怒り心頭のノルマ、そしてポリオーネはノルマに冷たくアダルジーザをかばう。ここで3人がそれぞれの感情を歌い上げる三重唱で幕。何ともいえない幕切れです。オペラの見所、聴き所はいろいろあり、独唱はその1つですが、個人的には重唱を外すわけにはいきません。作曲家によって得意、不得意があり、どんなオペラにも言い重唱があるわけではありませんが、《ノルマ》にはこの三重唱と2幕の二重唱がすばらしい。

第2幕
 ポリオーネに裏切られたノルマは2人の子どもを殺して自らも命を絶とうとしますが、どうしてもできません。今回の演出ではこの第2幕冒頭の演技が非常にリアルで、歌詞とマッチしていました。そこへアダルジーザが現れて、自分が身を引き、ポリオーネにノルマとよりを戻すように説得すると語ります。現実の話として、そんなことができるわけもないでしょうが、ノルマは望みを託します。他の映像や実演では気がつきませんでしたが、ここでのノルマとアダルジーザの二重唱が実にすばらしい。今回の上演で最も心を打たれた場面です。しかし、ポリオーネはアダルジーザの提案を拒否したために、ノルマは激怒。突然聖なる銅鑼を叩き(これが巫女の長であるノルマの役割の1つのようです)、部族を集めて、ローマに対する戦いを宣言します。同時に、部族内に裏切り者がいることもつげます。
そこへ、アダルジーザを連れ出そうと神殿に侵入したところをとらえられたポリオーネが引き出されてきます。ノルマは集まった兵士達をさらせた後、ポリオーネに「アダルジーザを忘れれば命は助ける」と伝えますが、ポリオーネは拒否。ノルマは「裏切り者が分かった」と兵士達を集め、「それは自分である」と告げます。子ども達を父親に預けて、自ら火刑台へ。ノルマの姿に心打たれたポリオーネも一緒に火刑台へ進むところで幕が降ります。最期のノルマの鬼気迫るところも迫力があって見応えがあります。また、兵士達の様な群衆を表現する合唱団の迫力はすさまじいものがあります。METの合唱団は特に定評があるようですが、一度生で聴いてみたいものです。

 ポリオーネはとんでもない裏切り者から、最期に改心?するという、やや納得のいかない終わりまたです。演じる方はこの感情の振幅の大きさを以下に表現するかが問われるのでしょうが、そもそもストーリーに無理があるような気もします。オペラであるということで許されるのでしょう。