名フィル定期(第432回):チェコの音楽

今月の名フィル定期は先週末(2月20,21日)。先月の定期が名演だったので、今月はやや見劣りして聞こえてしまうのではないかと心配して出かけました。プログラムされている曲のタイプが全く異なるため比較はできませんが、今回も十分に聞き応えのある演奏会でした。

プログラムは「物語の再編」と題して
ヤナーチェク作曲(マッケラス編):歌劇《利口な女狐の物語》組曲
マルティヌー作曲:オーボエ協奏曲
ドヴォルザーク作曲:交響曲第8番ト長調
オーボエ独奏:ラモン・オルテガ・ケロ
指揮:ロリ—・マクドナルド

タイトルとマッチするのは第1曲目。タイトルにとらわれるより、今回はすべてチェコ出身の作曲家による作品として楽しみました。また、指揮者のマクドナルドは定期では今回が3回目、名フィルともだいぶなじみが出てきて、毎回異なったタイプの曲を取り上げて非常にしっかりとまとめ上げた演奏を聴かせてくれます。過去2回は2014年4月(第390回)と2014年3月(第411回)です。

ヤナーチェクは19世紀から20世紀初めに活躍した作曲家で、今回取り上げられたオペラ《利口な女狐の物語》の他、村上春樹の小説で有名になった「シンフォニエッタ」などが知られています。このオペラは題名の通り動物が主役、もちろんヒトが扮するのですが、狐の他、イヌや鶏なども登場し、ヒトとの駆け引きを繰り広げるストーリー。演出によっては子ども向けのようにも見えますが、かなり社会性の高い作品です。オペラとしての上演頻度はそれほど高くありませんが、今回演奏された管弦楽だけによる組曲版はわりととりあげられるようです。

オペラ全体のエッセンスをうまくまとめていて、ストーリーを知らなくても何となく情景が浮かんでくるような曲です。

第2曲目の作曲者マルティヌーは20世紀の作曲家、時代に翻弄され、チェコからフランス、スイスと渡り歩き、第2次大戦中はナチスににらまれていたそうで、最後はアメリカへわたり生涯を終えています。非常にたくさんの曲を作っていて、今回演奏されたような協奏曲も30曲ほど作っているそうです。

今回演奏したケロは1988年スペイン生まれ、現在はミュンヘンのオーケストラで活躍する若手のホープです。すでにCDも何枚か出しており、将来が楽しみです。オーボエという楽器は管楽器の中で最も古くからオーケストラに加えられた楽器で、ダブルリード故にか、演奏者による音色の違いがかなりはっきりする楽器でもあります。ケロのオーボエは、かわいらしいというか、愛らしいというか、親しみやすい音色です。時として弱々しく感じることもありましたが、決して音が小さいとか響きが弱いということではなく、遠くまでよく通り、目の前で演奏してくれているかのよう。オケは非常に小さな編成で、オーボエを周りから支えるようにもり立てていました。この曲ではピアノも使われていて、オケの中央でよく活躍します。オケの曲としては非常に珍しい編成です。

恒例のソリスト・アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲の中の1曲をオーボエソロで。ケロはバッハの曲を入れたCDも出しており、かなりお好きのようですね。

さて、休憩後のメインは『ドヴォ8』。年末にフィレンツェのクリスマス・コンサートで聴いた曲です。チェコの大地と自然を感じさせる名曲ですが、次から次へとメロディーが流れるように続き、楽器の組み合わせも変わり、ドヴォルザークらしさを感じます。

指揮者とオケの雰囲気が変わり、指揮者のタクトに対するオケの反応が非常に敏感で、前半の2曲と比べると濃密に練習を重ねたことをうかがわせます。

この曲は第1楽章の雰囲気が気に入っていますが、広大な大地を表すような弦楽器の響き、森の静けさや鳥の鳴き声をうかがわせる木管楽器群、そしてトロンボーンのコラール。チェコの田舎の風景を想像させる見事な表現でした。第4楽章では金管楽器群が大活躍しますが、決して大きな音でうなるわけではなく、ホール全体を響かせるような広がりを感じました。

来月(3月11,12日)は今シーズンの締めくくり、常任指揮者ブラビンス得意のラフマニノフ。ソリストもブラビンスお気に入りの上原彩子(岐阜県出身で、1990年のチャイコフスキー・コンクールの覇者です)。常任指揮者としてのブラビンスの任期も今季限り、ラスト・コンサートです。興味のある方は是非聴きに行かれては? 名演間違いなしです。