名フィル定期《第463回』》 メーテルランク『ペレアスとメリザンド』

 12月の定期演奏会から、会場が栄の愛知県芸術劇場コンサートホールに戻りました。「復帰」第1回目は7日、8日の2日間ベルギー生まれのノーベル文学賞作家・メーテルランクの戯曲《ペレアスとメリザンド》をテーマに
  シューマン:ピアノ協奏曲イ短調
  シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》
   ピアノ独奏:ゲルハルト・オピッツ
   指揮:小泉和裕
で行われました。

 「復帰」第1回ということで有名なソリストを招き、大曲をという意気込みだったようですが、お客さんの入りは今ひとつ。ちょっと残念でしたが、国内有数の音響の良さを誇るホールです。繊細なピアノの響き、オーケストラの大音量ともに、心地よい残響をつくってくれます。

 オピッツは、風貌もいかにも好々爺という感じですが、奏でる音は明るくマイルドで、優しい響きがします。この曲は作曲者シューマンが妻のクララのために作曲したものですから、いかにも似つかわしい気がします。オピッツはブラームスを得意とするだけに、その先生にあたるシューマンにも共鳴するところがたくさんあるのでしょうか。短調の曲でちょっともの悲しい響きがするのですが、愛おしさに満ちていた演奏でした。

 前回(名フィル定期 第440回 ドイツ正統派のブラームス、ここです)はソリスト・アンコールこそありませんでしたが、終演後にはサイン会をやってくれました。残念ながら今回はいずれもなし。どこかお悪いのでしょうか。

 この日のメインはシェーンベルクという20世紀・オーストリアの作曲家の交響詩です。元々オペラを作曲するつもりで準備したとのことで、叙情性に満ちた音楽です。メーテルランクは19世紀半ばに生まれたベルギーの作家で、『青い鳥』というチルチルと満ちるという兄妹が幸せの鳥を見つけ家に行く話が有名です。アニメにもなったということですが、子ども向けの物語としても読んだ方もいらっしゃるでしょうか? 残念ながら私は読んだことはありません。『青い鳥』などの作品が評価されて1911年にノーベル文学賞を受賞しています。

 メーテルランクの「ペレアスとメリザンド」は戯曲です。どこかの国の王子ゴローが迷い込んだ森で見つけた美女メリザンドをな自分の后として城へ連れ帰るも、弟のペレアスとメリザンドがいい仲になってしまい、最後はゴローがペレアスを殺してしまいます。メリザンドも傷を負って、その後亡くなるという何とも後味の悪い話です。翻訳を読みましたが、全く惹かれるものを感じませんでした。しかし、ヨーロッパでは多くの作曲家をインスパイアしたようで、いずれもほぼ同時代に活躍をしたフランスの作曲家・ドビュッシーがオペラ化したのを始め、フォーレやシベリウスが劇音楽を作曲しています。今回取り上げられたシェーンベルクも同様に、一楽章の交響詩として作曲しました。

 一楽章とはいえ、40分を超える作品を集中して聴くのはかなり大変です。編成も大きく、管楽器も活躍します。ハープ2台、打楽器もティンパニ2セットを始めとして5人の奏者を要する大曲です。作曲されたのは、20世紀の初め、ちょうど前々回の定期で演奏されたマーラーの交響曲第8番と同じ頃です。決して口ずさめるようなメロディーはありません。全体に何となくべたっとした曲調で、親しみやすいとは言いがたい。だからなのか、有名なソリストを迎えているにもかかわらずお客さんの入りはやや寂しかった。

 とは言え、オケは指揮者の要求によく応えて、全体によいハーモニーをつくっていました。さすがは芸文の響きというか、残響がよい具合に耳に残りました。弦楽器の響きも充実し、その中から管楽器の音が聞こえてくるよいバランスだったと思います。

 来月(新年)はアンデルセン『人魚姫』をテーマに、
  ラヴェル:バレエ音楽《マ・メール・ロワ》(英語風にいうと『マザー・グース』です)
  ツェムリンスキー:交響詩《人魚姫》
です。