ヘルベルト・ブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団

 11月、いよいよ本格的な芸術シーズンです。まずはオーケストラのコンサートから。

 11月1日、栄の愛知県芸術劇場コンサートホールで
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
バンベルク交響楽団
の来日公演を聴きに行きました。プログラムは
ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調『田園』
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調
アンコールも同じく
ベートーヴェン:序曲『エグモント』
でした。

 この日の主役はオケではなく、指揮者。御年89歳で世界的に活躍する指揮者としては知る限り最高齢。30分立っているだけで、飛行機に乗って日本に来るだけでもとんでもないことだと思いますが、指揮者として大勢の一流音楽家を率いて、ときに1時間を越える大曲を指揮する姿には、崇高さすら感じます。ブロムシュテットは20年くらい前にシュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)との来日公演を聴いたことがあります。颯爽とした指揮姿を何となく覚えておりますが、その後はNHK交響楽団に毎年客演指揮しており、テレビで拝見しております。時折笑顔を見せながらいかにも楽しそうに指揮する姿が印象的で、年齢を感じさせないこぎみよいテンポとリズムをはっきりさせたわかりやすい演奏で多くのファンがいます。不肖、私も大ファンでして、今回久しぶりに生でお姿を拝見できました。

 今回の来日公演では、私の大好きなブルックナーの交響曲第7番を取り上げた演奏会もあるようですが、名古屋ではクラシック音楽のゴールデンプログラムとも言うべき2曲。おまけに、アンコールまでベートーヴェンの序曲。オール・ベートーヴェンプログラムでした。こんなプログラムを聴く機会はなかなかありませんが、ドイツのオーケストラによるドイツ音楽を堪能しました。

 曲の詳しい解説は省きますが、ともにベートーヴェンが35歳の時に作曲し、同時に初演されました。第5番は『運命』という表題で知られていますが、これは後年に付けられたもの。日本では『運命』交響曲のほうが通りがいいですが、ヨーロッパではむしろ表題を付けずに表記されることがほとんどです。冒頭があまりにも有名ですが、全曲(約35分)を通して非の打ち所のない名曲中の名曲です。これに対して、『田園』はベートーヴェン本人の命名です。5楽章構成で、交響曲としてはやや異質ですが、交響曲に表題を付け、具体的なイメージを表現した画期的な作品です。

 両曲ともCDでも、そして生でも何度も聴いたことのある名曲。ですが、いつ聴いても新鮮で、常に初めて感じることが何かあります。名曲の所以でしょう。今回は、同じメロディーを弦楽器と管楽器が一緒に奏するような場合の調和のしかた、それぞれが単独でハーモニーをつくる場合の響きの違いなど、オーケストラの個性・特徴とも相まって、随所に新しい発見がありました。今後も何度も聴く機会があると思いますが、心に残る名演の1つです。

 この数年、同世代、あるいはもっと若い年齢の大指揮者が続けて亡くなっており、非常に寂しい思いをしています。ブロムシュテット氏には是非一日でも長く活躍していただき、数年後に再会したいと思います。