名フィル《コバケン・スペシャル》 ヴェルディ:レクイエム

 暑いさなかにはあまりオーケストラのコンサートもありません。名フィルの定期演奏会も8月はなし。埋め合わせというわけではありませんが、8月11日に名フィルの
『コバケン・スペシャル2016』で
ヴェルディ作曲『レクイエム(Messa da Requiem)』
を聴いてきました。
指揮:小林研一郎(名フィル桂冠指揮者)
ソプラノ:安藤赴美子
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:西村悟
バス:妻屋秀和
合唱:岡崎混声合唱団、岡崎高校コーラス部

 「レクイエム」は「死者のためのミサ曲」とされることが多いのですが、元来はキリスト教カトリックにおける典礼音楽で、死者の安息を願って行われるミサ(カトリックにおける最も重要な典礼儀式)の音楽です。歌詞はラテン語の典礼文として決められています。ただ、19世紀半ば以降、宗教的な意味を離れて死、または死者を悼むために「レクイエム」の名を冠して、様々な詩を利用して作曲されることが多くなっています。

 カトリックの典礼音楽としての「レクイエム」は冒頭で
Requiem aeternam dona eis, Domine: et lux perpetua luneta eis.
主よ、彼らに永遠の安息を与え、彼らを絶えざる光もて照らし給え」(井上太郎著「レクイエムの歴史」より)
と歌われるため、最初の語をとって『Requiem』と題されます。

 多くの作曲家が作曲していますが、「3大レクイエム」として特によく知られているのがモーツァルト、ヴェルディ、フォーレの3人の作品。中でも、モーツァルトとヴェルディの演奏頻度が高く、それぞれ「モツレク」、「ヴェルレク」と略して呼ばれ、国内でもいろんな機会に演奏されています。

 今回は独唱者の質が高く、また合唱もかなり練習を積んでいるようで、よくまとまっていました。オケは長年にわたって親密な関係を築いてきている指揮者との共演ということもあり非常に充実した演奏でした。全体で約1時間半に及ぶ大曲ですが、長いと感ずる前に終わってしまいました。

 ヴェルレクの中で最も有名なメロディーは、第2曲「怒りの日:Dies irae」の冒頭でしょう。CMなどのBGMでも使われていて、必ずどこかで耳にしているはずです。打楽器を含めたオケ、合唱がともにフォルティッシモで奏し、ホール全体がなっているかのような大音量で迫力満点。

 ソリストのうち、ソプラノの安藤は3年前に歌劇「蝶々夫人」で聴きました。ホール全体によく通る
美しい声質。当日はやや体調不良とのことで、後半で少し声が裏返ったり、レティタティーボの歯切れが悪くなったりしていました。他の3人のうち、清水と西村はどこかで聴いたような気がするのですが、自分の記録にないため分かりません。いずれもすばらしい演奏で、特に西村はテノールらしく透き通ったよく通る声質。まだ若さを感じますが、これからが楽しみです。妻屋は現在国内最高のバス歌手、太く下から響いてくる声に圧倒されました。

 指揮者の小林についてはこれまでにも何度か紹介しているので今回は省きます。もう70を越えているはずですが、30年前と変わらない指揮ぶりです。ここの楽器を際立たせる手腕もさすがです。数年前にコバケン・名フィルの『モツレク』を聴いていますが、オケの充実ぶりもあり、今回のほうがすばらしかったと思います。